side C
サッカー観戦の準備をしていると、キッチンにギョンスが入ってきた。
「ギョンス!」
「うん?わぁ?!」
尽かさずジョンインがギョンスに抱きついて、主人に甘える大型犬のように見えない尻尾を振って喜んでいた。
「ふふ、なんだよ?」
「ギョンスも一緒に見ようよ!」
「また今度ね。何か食べる?」
ギョンスはジョンインを背中にくっつけたまま棚からいろんなお菓子を取り出す。
そのなかに俺が買ったお菓子が出てきた。
「こんな甘いのよりポップコーンとかしょっぱいものがいい。」
うん、まぁ、ぜんぶ飴とかチョコとかだしね。
「じゃあ、こっち開けてあげるね。」
「ジョンイーン!ルハニヒョンから借りたDVDどこ置いたー?」
「え?そこにない?」
「わかんないよ、来て!」
ギョンスはセフンに呼ばれて渋々ギョンスから離れてセフンの居るテレビの前に行くジョンインを笑って見送っていた。
そのあとジョンインの要望どおりポップコーンやポテトチップスなどを取り出してボールに積め始めたギョンスに、俺は自分が用意したお菓子をべつのボールに積めた。
「チャニョルはそれ食べるの?」
それを見たギョンスは横で積めてる俺に首を傾げて問う。
「ベクと話すんでしょ?」
ボールに積め終えてお湯をあたためるギョンスを横で見てから最後のお菓子を積める。
「うん。」
「これ、ベクと食べてよ。」
「いいの?」
「いいよ。もともとベクに買ったものだから。」
ギョンスは頷くと、お湯が沸くまで待つ間じっと俺の顔を覗いた。
「うん?なんか顔についてる?」
「ううん。チャニョルはほんとにベッキョンが好きなんだな~って思って。」
当然でしょ。
俺から好きになったんだから。
でも、ただ好きなわけじゃないよ。
「好きなんじゃないよ。」
「え?」
「俺はベクを愛してるんだ。自分でもどうしようもないくらい。」
ギョンスは一瞬困惑したけど、すぐに笑顔になって俺の腕を小突いた。
「もう、驚かすなよ。」
「ははっ!」
「ヒョーン!はやく見ようよー!」
リビングのソファからセフンとジョンインがぶーぶーと急かした。
「ほら、これ持ってって弟たちと観てきな!」
大きなトレーにボールと1Lのコーラのペットボトルをのせて俺に手渡し、くるりと俺を回転させると背中を押してキッチンから追い出された。
「やった!ポップコーンだ!」
「さすが俺のギョンス♪」
ふたりは持ってきたお菓子を俺が机に置く前に食べはじめた。
「はいはい、お待たせしました!観よっか!」
ふたりの間に腰掛けて、リモコンをとって再生ボタンを押した。
さっき、ギョンスに言ったのは本当。
ベクの行動ひとつで、すきが膨らんでいく。
だから、少し怖くもある。
ベクが好きすぎて嫌われたらどうしようって。
だって、こんなの重すぎるよな。
俺の一方的な想いだけで、こんなにもベクを愛してるだなんて。
君に一喜一憂してる俺は、
君という沼にはまるどころか、
見えない奥底まで落ちてしまっている。
もう、覚悟していうべきかな。
俺が堪えられない。