XIUMIN
毎日お昼時から来る青年。
いつの間にか彼を見るのが日課になっていた。
毎日珈琲を端に置いて机いっぱいに資料やらなにやら広げてパソコンに向き合う彼。
「あ、あの人、今日も来てるんだね。」
従業員のギョンスが片付けた食器をトレーにのせて、誰も居ないカウンターの席の上に置いた。
「うん。」
「大学生かな?いつもパソコン開いてるよね。」
女のような顔つきに細いライン、身長は俺よりは高いかもだけど。
大学生にしては大人びていて、大人にしてはどこか幼い彼。
「わかんない。」
「いつも話してるのに?」
そう、俺はいつも夜になってもずっとパソコンに向き合う彼におかわりはどうかと声をかける。
「あんなの話してるうちに入らないって。俺は仕事として声をかけてるだけなんだから。」
初めて彼に声をかけたときもそう。
よく見かけるようになった彼は、その日もお昼から閉店時まで居た。
なにがそんなに忙しいのかわからないけど、その日はなにも口にしないでいた。
『なあ、クリス。』
『社長と呼べって何度も言ってるだろ。』
『あの人、今日なんにも食べてないんだよ。だから何かあげてもいい?』
クリスは俺の視線の先の彼を見た。
『ああ、そういえばそうだな。』
『ダメ?』
『今月のお前の給料からその分抜くことになってもいいなら。』
『それでもいいよ、ありがと!』
俺はカウンターから出てキッチンに入り、いつも彼が注文するサンドイッチを作り、カウンターでカフェオレを淹れてトレーにのせて彼に持っていった。
『お取り込み中すみません』
俺に気づいた彼は顔をあげて丸い瞳をパソコンの画面から俺に向けた。
『これ、どうぞ召し上がってください。』
『え、』
机に持ってきたトレーを置くと、彼は驚いた顔でトレーを見てから俺に視線を戻して慌てた様子で断る。
『そんな、俺、何も注文してないのに悪いですよ!』
『大丈夫です。どうぞ召し上がってください。お昼から何も食べていないじゃないですか。何も食べない方が身体に悪いし、集中も途切れてしまいますよ。』
『でも、』
『頑張ってください。』
半ば強引に彼を席に座らせて、空っぽのマグカップを持ってカウンターに戻った。
ひんやりと冷めたマグカップは、彼がお昼に飲んでからどのくらい時間が立っているのか改めてわかる。
『お前も頑固な。』
『お客様の為だよ、クリス。』
『だから社長だって。まあ、そういうお前だからいいんだけどな。』
クリスは俺の橙色の髪をその大きな手で撫でてからやわらかく微笑むと、2階のアトリエの片付けに行った。
それを見送ってから彼に振り向くと、サンドイッチを片手に食べながらまたパソコンに向かっていた。
それほど時間は立っていないのに、よっぽどお腹が空いていたのだろうか、あっという間にお皿の上のサンドイッチはなくなってしまった。
少ししてからそれを片付けるためにおかわりの分のカフェオレと空っぽの食器をのせたトレーを交換した。
『気を遣ってくださり、ありがとうございます。美味しかったです。』
『ありがとうございます。』
それ以上なんと言えばいいかわからなくて赤くなったであろう顔を隠すようにキッチンに戻り、シンクに食器を置いた。
『あー……恥ずかしい。』
こういうとき、赤面症なのは恥ずかしい。
「今夜も遅くまで居るんだろうな。」
片付けたトレーを持ってきたクリスが俺たちの和に入って、窓辺に座る彼を見る。
「「かもね。」」
3人で笑って彼をもう一度見た。
「すみませーん。」
「はい、ただいま!」
今夜も用意しとかないとな。
そう考えながら注文を聞いていた。
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思いつきで書いたものです(*^¬^*)
続くとは思うけど、更新はものすごく遅いと思います