[ Everytime ] side L
どんなときも、君を忘れたことは1度もない。
あの日、初めて触れた君のやわらかな唇も、折れちゃいそうな細い腕も。
瞬きしたらすぐ零れちゃうくらい目にいっぱい涙を溜めて俺を怖れる君の顔も。
最後にごめんと謝って、痛々しい痣に口付けたときの切なそうな君の顔も。
知らない男と楽しそうに笑う君の顔も、ぜんぶ、脳裏に焼きついて離れない。
あの時の君を見た瞬間、俺の心は折れそうだった。
どうして君は俺無しで平気なのだろう。
片想いがこんなにツラいなんて、恋がこんなに苦いものだなんて思わなかった。
もう、会えないかもしれない。
そう、諦めていたときだった。
いつもの中国のメンバーで話していると、先生に会議室に呼び出された。
ギョンスというボーカルレッスンで歌が上手かった青年が先に来ていて少し話していると、長身の男と、あの日ミンソクと話していたあの男が入ってきた。
男はギョンスを見るなり抱きついて、俺たちが見ている前で盛大にキスし始めた。
俺は驚くあまりアホみたいに口を開いて見ていた。
どういうことだ?
後からふたり加わりそこでの騒ぎがうるさくなるなか、俺たちはただぼーっと見てることしかできなかった。
セフンが入ってきて1度おさまった騒ぎが再開される。
タオがセフンに近づいてまだふにゃふにゃな韓国語で話していると、静かにミンソクが部屋に入ってきた。
奥にいる俺に気づかずに騒ぐメンバーをぼーっと見ているミンソク。
違う。
俺を見て。
俺に気づいてよ!
伝わりもしないのにじっとミンソクを見つめてテレパシーを送り続けた。
俺の視線に気づいた彼は俺を見るなり、嬉しそうな、でもすぐに哀しそうな顔をした。
どうしてそんな顔をするの。
前みたいに笑ってよ。
君の笑った顔が見たくて微笑んでみるけど、君は下唇を噛んで俺を見るだけだった。
まるで、泣くのを堪えているかのように。
騒ぎがヒートアップしていくなか、先生が止めてこれからの話を始めた。
大規模な計画に皆先程の騒ぎなど無かったように静かになり、緊張感が部屋を包んだ。
そのなかで日が浅いジョンデと彼が中国側で名前を代えて活動していくと言われて、互いに不安そうな表情で顔を見合わせた。
クリスがフォローするけど、不安で揺れるミンソクの眼を見て、俺は何も言えなくなって頷くことしかできなかった。
ほんとは俺から声をかけてあげたかった。
大丈夫だよって言ってあげたかったのに。
無意識に握られた彼の手を、触れることすらできなかった。
自己紹介のときだって、明るくみんなに「最年長です。」と言って驚かれているなかで、不意に交わった視線。
すぐに逸らせれて俯くその横顔は、最後に俺に見せたときと同じ切なそうな顔をしていた。
俺はあの時してしまった自分の過ちを思い出して、胸が締め付けられる。
焼肉屋に居る間、ミンソクはわざと俺を避けるくせに何度も横でこっちを見ていた。
気になるなら話しかければいい。
こっちに来てほしいのに、俺は彼を誘うことはできなくて彼の視線を流してしまった。
そうしてすれ違いで再び始まった俺たち。
君が居ない間、
いつも、君のことばかり考えていた。
"逢いたい"
ずっと願っていた。
なのに、いざ逢うと、想いとは反対のことばかりしてしまう。
だけど、君に再び会って気づいたよ。
やっぱり俺には君が必要なんだってこと。
「ごめん、ミーちゃん。」
君を諦めることなんてできないや。