[ Pain and Cry ]side X
あれからルハンと話せずに、時間だけが過ぎていった。
「ヒョン、落ち込まないで。」
セフンは日に日に元気をなくす俺を慰めてくれた。
俺のほうがヒョンなんだから、ちゃんとしなくちゃいけないのに。
『俺には抵抗するんだね。』
ルハンのあの一言が呪文のように胸を締め付ける。
俺にはってどういうこと?
噛みつかれた俺の唇の傷はすでに癒えたけど、心は傷が増える一方だ。
視線は合うのに、ルハンに反らされるのが恐くて先に自分から反らしてしまう。
それからすぐに後悔するんだ。
また、やってしまったと。
今日も話せないのかな。
狭い練習室の端で一人でいるルハンを、遠くから見つめる。
部屋に入ってきた先生となにか話して項垂れて、なにか厭な予感が過る。
こっちに振り返ったルハンと視線がぶつかって反射的にまた反らしてしまった。
うぅ、、また、やってしまった。
俯いてどうしようか悩んでいると、そっと腕を取られた。
「ミーちゃん、」
優しく呼ぶ声に驚いて顔をあげると、切なそうな瞳で俺を見つめるルハンが近くにいた。
「ごめんね。」
青く痣になった手首に口づけると、目もあわせずに背を向けて部屋を出てしまった。
隣にいるセフンもどういうことなのかわからないと言った顔で、ルハンの出ていった扉を見ていた。
「ミンソク、セフン。」
ダンスの先生に呼ばれて、先程ルハンと話していたことを告げられる。
どうして?
ごめんだけじゃ、わかんないよ。
俺は先生を押し退けて部屋を飛び出した。
廊下に出ても、ルハンの姿は、もうなかった。
「意味わかんないよ……。」
ルハン、お前がわからない。
キスしたり
冷たくしたりしたかと思えば
切なそうに掠れた声で「ごめん」て
俺の前から居なくなるなんて。
「ふぇ、、っ、」
流れる涙のほんとの意味は、
今の俺はまだ知らなくて、
手首の痣よりも、心が痛かった。