[ Not likely ] side L
最低だ。
部屋に駆け込み、涙が溢れる。
ミーちゃんの泣き顔が頭から離れない。
痛々しく赤くなっていた手首。きっと、痣みたいになっちゃう。
守ってあげたいと思っていた矢先、傷つけてしまった。
だけど、ミーちゃんを心配する半面、拒絶された傷がズキズキ痛む。
俺のキスは拒むのに、セフンはいいんだね。
ぷにっとしてやわらかかった唇の肉を引き裂いて、子どもみたいに痕を残した。
「ミーちゃん………。」
ああ、今になってわかるなんて。
「好きだ。」
俺ってバカだなぁ。
なんで、こんなことになって気づくんだよ?
「やべ……も、どうしよ。」
涙は止まることなく、頬を伝って下へ下へと落ちていった。
それから俺たち3人の間に気まずい空気が漂って、気づけば数日が立っていた。
セフンとミーちゃんは一緒に居ることが目立つようになった。
それを見るだけで、俺は嫉妬してしまう。
どうして、セフンはキスしたんだよ?
『僕はたった一人の人には見とれますよ。』
ハッと前にセフンが言っていたことを思い出した。
その人ってミーちゃんのこと?
セフンはミーちゃんが好きだからキスした?
「嘘だろ?」
このままミーちゃんはセフンのものになるのか?
そんなの絶対厭だ!
「ミーちゃ、「ルーハン!」
タイミング悪く先生に呼ばれた。
「悪いが、今日からしばらく中国組と練習してもらえないか?」
「え?」
なんで?
「3か月くらい前から中国からきた子がいるんだが、その子に韓国語を教えてやってほしいんだ。」
「そっちにはウーファンがいるじゃないですか!」
厭だ!ミーちゃんと離れるなんて厭だ!
「ウーファンひとりじゃ大変だろうから、お前を推薦したんだ。」
そんな、なんでだよ!
ミーちゃんを見ると、こっちを見ていたのかすぐに視線がぶつかった。けど、すぐに逸らされてしまった。
俯く横顔に、胸が痛む。
「………わかりました。」
俺は荷物を持った。
ミーちゃんとはダンスのときしか会えない。
俺は意を決してミーちゃんのもとに歩み寄った。
横でセフンが警戒していたけど、黙って見てるだけだった。
俺はミーちゃんの腕を優しく掴み、俺を見るように促す。
「ミーちゃん、」
驚いた表情の君は、やっぱり可愛い。
「ごめんね。」
青く痣になった手首に唇を寄せて、離した。
俺はそれ以上はふたりを見れず、俯いたまま練習室を出た。