side B
いつの間にか帰っていたチャニョルは、なにがそんなに楽しいのかにこにこと笑っていた。
「ね、ベク、ん。」
腕を拡げておいでと招くチャニョル。
「………なんでだよ?」
「ぎゅってしたい。」
「いつも自分からしてくるじゃん。」
「うん。」
まるで全部わかっているみたいに拡げたままおれを待つ。
だけど、俺はチャニョルみたいに容易に抱きつくことなど恥ずかしくてできない。
「おいで、ベク。」
躊躇う俺にはやく来いとでも言うように、俺がその声に弱いことを知っているかのように誘うチャニョルに、体が自然と反応してしまう。
ゆっくりとチャニョルに抱きつくと、体全体で俺を抱き締め返してくれた。
「ベク、ただいま!」
あ、ヤバい。
また泣きそう。
そう思ったとき、ふわりと体が浮いて、チャニョルの膝の上に跨がるように乗せられた。
向かい合わせにされて、俺のすぐ目の前には俺のすきな顔で微笑むチャニョルの顔がある。
「聞いてよ!俺ね、また、いっぱい怒られちゃった~!ベクがいないと基準がわかるなくなってみんなに合わせづらくてさ~!」
俺の腰に腕を回して、今日の練習でのこと、ジョンインが携帯を忘れて落ち込んでいたことなど話してくれた。
それだけで、俺の心は軽くなって、また前へと進める気がするんだ。
チャニョルははじめて会ったときと変わらず、俺を抱き上げたり、抱き締めたりと、自分の腕のなかに俺をおさめるのがすきだ。
「明日はラップ歌うんだ!ベク、見ててくれる?俺、舌まわるかわかんないィ~!!!!!あ!でも、ボーカル組は明日はダンスレッスンか!あーあ、ベクと一緒にいる時間が減ってく~!!!!!」
あぁ、そうだった。俺は明日、ダンス組と録音してからダンスレッスンに行くんだっけ。
「………俺、明日、お前らと一緒に録音するんだけど。」
「えっ?!マジで?!じゃあ一緒にいれるってこと?!やったぁあああ!!!!」
チャニョルは目をキランキラン輝かせて俺の抱きしめる力を強めて俺のお腹に顔を埋めてきた。
「お、おいっ!離せ!ちょ、そこ触んなっ!」
「あ、ここ弱いの?」
「あ!」
逃げようしても身動きとれなくて、チャニョルは悪戯っぽくニヤリと微笑むと脇をくすぐってきた。
「やめっ!ぎゃはははははははっ!!」
俺の弱いところを攻めてきて、笑い疲れたときにはベッドにぐったりしていた。
「こンの~!次は絶対、仕返ししてやる!」
べちんとチャニョルの膝を叩くと、チャニョルはへへっと笑って手を差し出す。
「さ、ギョンスがそろそろ呼びにくるよ。俺たちも食べに行こ?俺もうお腹ペコペコ~!」
「俺も。お前にくすぐられて笑い疲れた。」
俺たちは小突きながらリビングに向かった。
「あ、やっと来た。ジョンイナとセフナに食べられちゃうよ。」
ギョンスがはやくと急かして俺たちも席について、口いっぱいにほうばるふたりに負けずに食べはじめた。
「ははっ!ダンス組は子どもがいっぱいいて大変てすね。」
ソファに座って雑誌を読んでいたジョンデがその様子を見てギョンスに問いかける。
「それにベクが入ると競争心に火がついてもっと大変なことになるけどね。」
と、ギョンスは笑って答えた。
おいっ!なんで俺が子どものなかに入るんだ!
心のなかで突っ込んで食べ続けた。
チャニョルも口いっぱいに含んで、幸せそうに目を細めてもぐもぐと口を動かす。
なんだか、こいつに全部知られてるような気がするのは気のせいか?