side B
ジョンデと会議室まで来ると中から甘い声が聞こえた。
「ジョン…イ、ナ……やめっ!」
その声を聞いてジョンデと顔を見合わせて急いでドアを開ける。
案の定、ジョンインがギョンスを襲っていた。しかも、知らない奴らの前で!
ジョンデが尽かさずジョンインの服を引っ張り、俺はギョンスに駆け寄った。
「この野獣が!TPOわきまえろ!」
俺が睨むと、ジョンインは無理矢理離されて俺を睨み返した。
こいつ……反省してないな。
「ジョンデ!この獣をどっか捨ててこい!」
イチャつくのは構わないけど、本能のままに行動するなら躾ないと。
俺よりも優しいジョンデは、俺と自分を間にジョンインを立たせると、「あ。」と視線はべつの奴に向けられる。
その視線の先には、先程俺にぶつかってきたチャニョルと呼ばれる男がこっちを見て驚いていた。
「チャニョル?!」
俺が自分の名前を知ってることにも驚いてもともと大きな目が見開かれる。
「え?ベッキョン、チャニョルと知り合いだっけ?」
ギョンスが眉を寄せて首を傾げながら俺を見る。
いや、全然違うんだけどね。
というか、ギョンスとジョンインの知り合いだったんだね。
「え?てか、ギョンス、その子と知り合い?お姫様はベッキョンっていうの?」
チャニョルもやっぱり知らなかったんだな。アホ面で俺とギョンスを交互に見る。
いや、それよりも……
「おい、だれが、お姫様だコノヤロウ!」
チャニョルは慌てて口を塞ぐけど、もう、遅いだろう。
デカくてトロくて慌てふためいてわけのわからないことを口走るところが可笑しくておもしろい奴だと思った。
「とりあえず落ち着こっか。」
ジョンデが冷静に場を収めようとするが、タイミング悪くセフンが入って無意味となった。
「あ、セフン。」
「あ、チャニョリヒョンども。」
セフンとも友だちってことは、チャニョルって意外とダンス専攻なのか?
チャニョルはジョンインとギョンスの様子を見て笑うセフンに後ろから寄りかかりながら手を差し出してきた。
「ねぇねぇ、ベッキョンっていうんだね!俺、パクチャニョルっていうんだ!よろしくぅ~!」
「俺はビョンベッキョン、よろしくない!」
嬉しそうに目を細めて笑うチャニョルに呆れて差し出された手を払いながらも、名前は名のったから俺も名前だけ名のる。
そのあとは、なにかと騒いでいたら先生がチャニョルを黙らせて場を収めて、デビューでの話にみんな耳を傾けた。
運がいいのか悪いのか、俺とチャニョルは同じ韓国側で活動することになった。
ふたり分離れたところに座るチャニョルを見ると目が合って、嬉しそうにふにゃりと笑う。
こいつはなんでこんなアホ面なんだろう?
もとは(認めたくはないけど)カッコいいのに。
「説明は以上だ。デビューはゴールでなくスタートだからな!これからは身を引き締めていくように!とくに、チャニョル!」
「わぁ?!えっ、俺?!」
いじられやすすぎだろ。
「納得いかないけど頑張る!あ、ついでにみんなに紹介するね!俺、パクチャニョル!よろしくお願いいたしまーす!」
テンションが高いチャニョルはそのまま自己紹介をして、次にジョンデがして、自然と自己紹介タイムになった。
ふと、気づくと、説明のときのみんなの緊張感がなくなってすぐに打ち解けていた。
チャニョルがまた「お腹が空いた!」と騒ぎだすと、ジュンミョニヒョンの奢りで新メンバーで食べに行くことになった。
そういや、俺もお腹すいたな。
なに食べようかな?
「なあ、ベッキョン!なに食いたい?」
チャニョルは俺の隣に来て顔を覗かせた。
「焼肉だろ!サムギョプサル食べたい!」
素直に答えると、口元を緩ませてニヤニヤ笑うチャニョルが視界に入り、俺は眉を寄せてチャニョルのお腹に一発パンチをおとした。
「ニヤニヤしてんじゃねーよ!ばか。」
ったく、さっきっからアホ面でニヤけやがって。なんなんだ?
「へへっ。これからよろしく、ベッキョン!」
どんなにやられても、笑顔を崩さないで空気を和ますこいつが凄いと思いながら俺もつられて笑顔になって、焼肉屋に向かった。
そのときの俺は、チャニョルに振り回されるとは思わなかった。