side B
行きつけのクラブに着くと、ダンスフロアに直行して曲に合わせて体を動かす。
すると、ポケットのなかの携帯が震えた。
最初は気づかなかったけど、一度体を休めるためにソファに座ったときにも震えて、着信に気づいた。
取り出した携帯の画面には愛しい人の名前が表示されていた。
だけど、俺がここに来た要因の人物でもある。
電話には出ずに脇に置いて、フルーツサワーを飲みながら震える携帯を眺めた。
喧嘩はいつものことで、今回もとても些細なこと。
だけど、俺はそれが許せずに勢いに任せてクラブに来たのだ。
俺が暇なのを知っていたくせに、俺を誘わずにカイと遊びに行ったチャニョラが悪い。
止まっては震える携帯を手に取り、ダンスフロアに戻る。
何度めかの着信で、うるさい部屋のなか、わざとその場で電話に出る。
「ベクっ!!こんな時間になにしてんだよ?!今、どこにいるんだ?!!」
心配で怒ってるチャニョラの声。
怒ってるのは俺のほうだっつーの。
「さぁ?」
「今すぐ帰ってこい!ベクっ!!」
「え?なに?聞こえなーい」
壁に寄り掛かり周りを見渡すと、ふと、こっちを見つめる男と視線があう。
あ、あいつ、前に俺に近づいてきた奴だ。
あの時はチャニョラに追い払われてたけど。
俺がひとりでいると、ちょくちょく遠くで俺を見ている変態野郎。
一回くらい、かまかけてやろっかな。
俺は男に笑ってみせると此方に来るよう手招きをする。
男は一度躊躇うも、すぐに寄ってきた。
俺の前に来た男の手をとって、顔を引き寄せた。
「俺が今、どこにいるかわかんないの?」
唇が触れるか触れないかの距離でチャニョラに話しかけて、目で男を誘う。
男は目を逸らすけど、俺の吐息に我慢できずに唇を押しつけてきた。
痛っ
くそっ、こいつ、下手くそだな。
それでも俺はわざと感じているように声を漏らす。
「んっ……ふぁっ…」
男は俺の声に興奮しているようで、体を寄せつけた。
「ん…っ」
『おい、ベク、おまえ……今、なにしてんだ。』
「んぅ……チャニョ……んん。」
チャニョラの声がだんだん低くなる。
嫉妬してるチャニョラに嬉しいと思う反面、そろそろ、この変態に嫌になってきた。
あー…もう、気持ち悪いな。
離れようと胸を押すけど、力が敵わず、腰を捕まれて逃げられない。
「はなせっ!っ!?」
腰にあった手がゆっくりと下に降りてきて、悪寒が背筋をはしる。
イヤだ……。やだ、やだ、やだ!!
「チャニョラぁっ!!!」
ドスッ
鈍い音とともに体がだれかに包まれる。
見ると、チャニョラが俺を抱き締めて男を殴り倒した。
「ベク!!」
「なっ……んぅっ?!」
チャニョラの唇に塞がれて言葉が続かなかった。
あぁ……チャニョラだ。
深く重なって、舌が絡まる。
唇が離れるとチャニョラは僕を抱き抱えて、鼻血を出して倒れている男を思いっきり蹴飛ばすと出口に向かった。
「チャニョラ…」
道中、俺を抱き抱えたまま無言のチャニョラに話しかける。
「今回は俺も許さないからな、ベク」
うん、わかってる。
「優しくなんかしてやんないから。」
うん、それでもいいよ。
「俺を離さないで」
ぎゅっとチャニョラの首に腕を回して抱きついた。
「__ばかベク。」
__________________________end
Oh … No … … なかなかいいのができへんわ。
やっぱり、カイドのほうがやり易いなww ww