テレビ朝日が『報道ステーション』を長年支えてきたベテランの社外スタッフに対し、一斉に派遣契約終了を通告する問題が起きました。放送・新聞・出版などのメディア関連労組でつくる「日本マスコミ文化情報労組会議(通称MIC)」では、真摯に番組制作に取り組んできた労働者の権利と尊厳を踏みにじる行為であるとともに、「雇用不安がジャーナリズムの萎縮を招く深刻な事態」ととらえ、2月下旬から報道関係者を対象にした「報道の危機」に関するオンラインアンケートを実施し、現場の声を集めてきました。
特に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、安倍晋三首相が「緊急事態宣言」を発令した4月7日以降、回答数が増えたので、結果の概要をご報告します。
今回のアンケートでは、報道機関幹部の姿勢に対する現場の危機感が強く浮き彫りになりました。
「感染防止」を理由に対面取材が難しくなったり、取材制限が始まったりしていますが、「大本営発表」一色に染まった戦前の報道の過ちを繰り返してはなりません。「こんな状況だから政府を批判すべきでない」という考え方こそ、間違いをスピーディーに正す機会を逸するおそれがあり危険です。批判すべきと考えたことは臆せず批判することが大切です。また、なにより、報道現場で働く仲間の命と健康や権利をしっかり守る態勢を早急に整える必要があります。
MICでは今後もアンケートを継続し、現場の危機感を可視化しながら、あるべき報道の姿を目指していきたいと思います。
【調査方法】
・2020年2月26日からグーグルフォームを活用したオンラインアンケート
・対象は報道関係者。「放送局や新聞社・通信社、関連会社・制作会社・ネットメディアなど報道関係で勤めていた経験はない」という回答は有効回答から除外。
【有効回答者の属性】
回答数 比率
①放送局社員 89 41.6%
②放送局の関連会社・取引のある制作会社社員 26 12.1%
③過去に放送局や関連会社・制作会社に勤めていた 9 4.2%
④新聞社・通信社社員 47 22.0%
⑤新聞社・通信社の関連会社員 7 3.3%
⑥過去に新聞社・通信社に勤めていた 21 9.8%
⑦インターネットメディアの社員 6 2.8%
⑧雑誌、フリーランスなどで報道に携わっている 2 0.9%
その他 7 3.3%
有効回答 214
◆あなたは現在の報道現場で「報道の自由」が守られていると思いますか。
守られている 全体 34(15.9%)
放送局系現職(①②) 17(14.8%)
新聞・通信社系現職(④⑤) 12(22.2%)
守られていない
全体 124(57.9%)
放送局系現職(①②) 68(59.1%)
新聞・通信社系現職(④⑤) 25(46.3%)
どちらとも言えない
全体 56(26.2%)
放送局系現職(①②) 30(26.1%)
新聞・通信社系現職(④⑤) 17(31.5%)
有効回答 全体 214
放送局系現職(①②) 115
新聞・通信社系現職(④⑤) 54
◆現在の報道現場で「報道の自由」を阻害している要因として感じているものを教えて下さい。
※複数選択可
①政権の姿勢
全体 147(68.7%)
放送局系現職(①②)73(63.5%)
新聞・通信社系現職(④⑤)38(70.4%)
②報道機関幹部の姿勢
全体 177(82.7%)
放送局系現職(①②)104(90.4%)
新聞・通信社系現職(④⑤)35(64.8%)
③報道機関中間管理職の姿勢
全体 129(60.3%)
放送局系現職(①②) 67(58.3%)
新聞・通信社系現職(④⑤)35(64.8%)
④不安定な雇用形態
全体 45(21.0%)
放送局系現職(①②)25(21.7%)
新聞・通信社系現職(④⑤)7(13.0%)
有効回答
全体 214
放送局系現職(①②)115
新聞・通信社系現職(④⑤)54
●あなたが現在の報道現場で感じている「危機」について教えて下さい。
《主な回答》
■新型コロナウイルス関連
●布マスクはウィルスを防げないのに、「手作りマスク500枚を寄付」みたいな記事を紙面に載せる。(全国紙の新聞社社員)
●記者勉強会で政府側から「医療崩壊と書かないでほしい」という要請が行われている。医療現場から様々な悲鳴が聞こえてきているので、報道が止まるところまではいっていないが、「感染防止」を理由に対面取材も難しくなっており、当局の発信に報道が流されていく恐れがある。(新聞社・通信社社員)
●コロナウイルスの報じ方について危うさを感じている。医療崩壊という言葉についても、政府や自治体の長が、ギリギリ持ちこたえていると表現すると、それをそのまま検証もせずに垂れ流してしまっている。実際の現場の声よりも、政治家の声を優先して伝えてしまっていることに危機感を持っている。お上のお墨付きがないと、今がどういう状態なのか、判断できない。(全国紙の新聞社社員)
●コロナとの関連で会見がかなり制限され、入ることさえできなくなったものもある。不都合な質問を受けて、できるだけ答えを出したくないという意図も感じる。(ブロック紙の新聞社社員)
●コロナについては、感染が確認された事業者自身が貼り紙やサイトで公表しているのに、行政が発表していないと掲載しない。結局、噂が先行して、自分も関係しているかも、と疑心暗鬼になるばかり。報道現場は公の発表だけを出すのでなく、独自判断をすべきだ。(新聞社・通信社社員)
●テレワーク推進後、現場に入る記者が減り発表原稿が増えた。またコロナとバッシングの怖さから現場を見ていなくてもやむを得ない雰囲気がある。(ブロック紙の新聞社社員)
●医療や科学系でエビデンスを軽視した報道が見られること。(新聞社・通信社社員)
●外出自粛が求められているなか、会社が明確な取材ルールを示していない。現場の判断に丸投げ。自分が無症状上だった場合、無自覚に感染を拡大させるリスク、意識の低い取材相手から感染するリスクについて何も考えていない。(全国紙の新聞社社員)
●感染防止対策で一定協力するのは必要だが権力側が他の重要事案をケムに巻いていないか。そちらを追及しようとすれば世論からも「今なのか」と批判にも晒される。その批判が権力の暴走を許しかねないのに、目先を追うことに精一杯になっている。(新聞社社員)
●災害取材などで毎度そうであるが、今回のコロナでも死者が出たならば、その映像取材でなどで報道側の自主規制が始まるだろう。現段階で、他国では報道されているコロナ治療の最前線の医療現場さえ、日本では報道されていないことに危機感を覚える。(通信社社員)
●自社幹部からは感染防止の知識が乏しいことに起因する、取材手法を自主規制するような指示もある。今後の動向を注視する必要がある。(地方紙の新聞社社員)
●海外のように現政権寄りにメディア操作・情報操作が頻発していると現場でも感じている。「TVしか情報リソースを持たない層」は完全にマスコミに操られて、買い占め騒動を引き起こしたと確信している。さらに医療崩壊については、現場関係者への取材でも明らかな通り、「完全なる人災=安倍内閣の史上最大の失態」と感じる。全てにおいて対応が遅すぎる。(インターネットメディアの社員)
●コロナでマスク着用が義務付けられる取材・会見現場があります。しかし、社が社員に渡せるマスクをほとんど用意できていません。記者の安全は社が考えるのではなく、社員が個々人で何とかやっている状態です。情けない。(通信社社員)
●感染拡大を防ぐため、ローテーションなどを組んで勤務にあたっているが、仕事が一部の記者に集中してしまい、疲弊している。(放送局社員)
●「3密」が揃っている場所での取材。(放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●コロナ対策にしても働く側の安全や健康を守るための対策が十分に取られていない。(大阪の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●現場取材や編集などを対面で行えないこと。(放送局社員)
●次から次へ発熱するスタッフが離脱。残された者たちは疲弊する一方。「明日コロナになるかも」とフルストレスで気が狂いそう。情報番組は必要ないと思う。(東京の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●プロダクション会社の総務が昨年マスクを廃棄していた。現場にマスクが行き渡らず、それを隠蔽するためマスク着用義務の命令が遅れた。アルコール消毒も「奨励」であって、しない人が多かった(緊急事態宣言翌日まで)。(東京の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●感染者と濃厚接触した人たちが平然と働いていた。大学生のインターンも強行。それをしばらく経ってから聞いた。(東京の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●スペイン旅行した局員が日本で感染した可能性もあるのに「濃厚接触がない」という判断。視聴者に対して「対策しているフリ」が目立つようになった。(東京の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●志村けんさんが発症から逆算すると、3月5日収録の番組で感染の可能性もあるが、街で感染したかのような報道。実際には分からないのでミスリードだ。(東京の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●在宅勤務を奨励するもパソコンの持ち帰りやデータの持ち帰りを禁止したため、ほとんどが在宅勤務できず。緊急事態宣言が出るまで2階のロビーを閉鎖して外にはアピール。(東京の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●プロダクション会社の総務部長が「医者に余計な事を言うな」と社員にメール。局員だけ守るが制作会社など末端はないがしろ。本来なら局は「こうして対策をしている」と説明すべきだが、何月何日収録というテロップを出すだけ。しかもコロナ騒動で対策していて然るべき収録日。医療機関から局名をいうと診察を断られることがある。(東京の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●咳で休んでいる人(事務系)に一度出勤しないと在宅勤務はさせないという姿勢。(東京の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●社内で具体的な説明がない事象が起きている。「番組で濃厚接触」も「海外旅行で感染」も他社の報道で知った。その番組スタッフと接触して高熱を出したスタッフがいたが、その後どうなったのか説明なし。不信感がより増した。(東京の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
■政治報道について
●ニュースソースが官邸や政権であること。その結果、番組内容が官邸や政権寄りにしかならない。彼らを批判し正していく姿勢が全くない。というか、たとえあったとしても幹部が握られているので放送されない。(放送局社員)
●現政権に対する忖度の蔓延。政権からクレームが来ることを恐れて批判精神がなくなり、過度にバランスを取ろうという姿勢が余りに強くなっている。政権の広報記事しか書かない記者は優遇され、森友問題に斬り込んだ記者は左遷された。事実をそのまま報道出来ないのが今の NHK ニュースであり、報道局内の空気だ。(放送局社員)
●現政権に都合のよいニュースや、ただ表面的な事実だけを伝える報道。政治家が答弁原稿を読むだけ。予定調和の記者会見。本来すべき権力への批判も監視もなく、そのことに視聴者が気づき、メディアへの不信が固定化している。多くの市民が、既存メディア(特に大手)の存在意義はないと感じているのではないか。(放送局社員)
●国会論戦を放送しなかったり、あるいはやっても短い。官邸記者が政権に都合の悪いニュースを潰したり、番組にクレームをつける。これは日常茶飯事。官邸記者が政権のインナーになっている。(東京の民間放送局社員=番組勤務)
●最近だと国会答弁の首相の答弁など都合の悪い情報を恣意的にカットしてニュース放送している様子が散見される。そもそも組織体制も報道現場の幹部職員はほぼ政治部出身で記者クラブや官邸との距離が近いことは簡単に想像できる。そのほか経営委員会の任命権を首相が持つなどの人事権を握られている中で不偏不党や公共を掲げることに無理があるシステムなのかもしれないと感じる。(放送局社員)
●政権からの批判なのか局内からの批判なのか知らないが、批判を恐れて言うべき事を自主規制した原稿を書いてくる人が多い(特に政治部の解説員)。そしてそれを周りの人が、仕方のないものとして容認している。(放送局社員)
●政権に都合の悪いニュース項目の順番がどこかからの電話でどんどん後ろに落ちていったという話を耳にした。(放送局社員)
●権力の監視が出来ていないこと。(放送局社員)
●権力者をチェックしていない。(九州の放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●政権に忖度していないとまったく言えない番組に結果的になっている。(放送局社員)
●政権の意見を流すだけのニュースになんの意義を感じているのかがわからない。(放送局社員)
●政権の広報をしているだけで報道をしようとしない政治部の姿勢に疑問を覚えています。(放送局社員)
●政権への忖度。政権に気をつかい過ぎていて本当にそれでいいのかと思う場面がよくある。(放送局社
員)
●政権をはじめ、政治家、ひいては局内で権力を持つ者に対する忖度の連鎖で、報道機関としての役割や信頼を自ら損なう振る舞いが常態化している。幹部達は現場が取材した映像や証言をお蔵入りにしてでも、政権を刺激しないことを優先。政権に不利な内容や対立する意見は必ず「バランスを取る」と称して政権側の反論を加えて放送する。政権の言い分は吟味せず垂れ流すので偽りの不偏不党であり、視聴者には見抜かれているのに改めようとしない。「◯◯大臣がこう言った」「◯◯局長はこう言ったらしい」「だからこのままではまずい」と内容を薄めたり、表現を弱めたり、両論併記に逃げる。霞ヶ関で起きていることと瓜二つ。抵抗してもろくな説明も無しに覆される。今回の『報道ステーション』スタッフの雇い止めもおそらくそうだと思うが、幹部達は「政権への配慮から」とは表立ってはなかなか言わない(赤裸々に言っているのが伝わるケースもあるので、本音は明らかだが)。人事と権力を嵩に暗黙のうちに忖度させる政権式の恐怖支配が各所に連鎖・増殖している。余計なものばかりトリクルダウンしてくる。幹部達に飴と鞭で圧力をかけてくる政権側の思惑通り、現場には政治に関わる報道や政権の課題・問題点の指摘・検証を尻込みする空気が生まれている。報道機関にとっては自殺行為。幹部達は視野狭窄で組織を守っているつもりで組織を損ない、結局自らの保身にしかなっていない。(放送局社員)
●政権監視能力が全くなくなってしまった。(放送局社員)
●政権的に対して批判的な報道をするのが非常に難しい。政治に関する報道は国民の疑問に応えられていないが、それに対して疑問を呈する声を上げにくい空気がある。(放送局社員)
●政権内の1強状態が、報道の場でも異論や批判を伝えにくい雰囲気を生んでいる現状もある。与党内で多彩な意見が出てこないため、番記者も政権の言い分以外の発言を得ることができにくくなっている。
(放送局社員)
●テレビ局のニュース番組 政権批判ができない。街頭インタで政権支持、不支持両方のコメントを使おうとするけど、批判コメントはかなり柔らかい口調のものにしなくてはいけない。ジャーナリズムが現場にない。(放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●政権批判が基本できない。上から下まで、忖度と自主規制。事なかれ主義。サララーマンばかりで、ジャーナリストはいない。(放送局社員)
●政権批判の報道は上層部が常にチェックしている 政権や自治体批判をしていたスタッフが部署異動になる 政権批判の内容に対しては細かい裏取りが必要だと言われ結局見送りになる 事前予定項目に政権批判のニュースが入っていたのにいつのまにか変更になっている こういう事例が森友以降目立っている。(関西の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●関西ではすっかり維新行政(の)批判ができない土壌になっている。(放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●政権批判を強制されることが多い。(東京の民間放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●政治ニュースで政権からクレームが来ないかだけを考え、少しもでも何か来そうだと誰か幹部が指摘すると、本来問題点を指摘することをやらなくてはいけないのに、放送をやめる。或いは表現をオブラートに包んで、何が問題かが分からなくする。それが繰り返されることで、段々面倒なものはやらないとなり、或いは幹部に言っても放送しないだろうと考え、やらないのが当たり前になり、思考停止状態。おかしなことがおかしいと言えないどころか、気づかなくなり、あげくのはてには、問題にすることがおかしいと、ただの政権の方針を垂れ流す広報機関になり下がる、そんな事態が目の前で起きている。(東京の民間放送局社員=報道局)
●選挙報道にも問題がある。「わが意を得たり」な記述のある川端和治「放送と自由」を抜粋する。
《すべての放送局に共通した、しかも民主主義にとって最も重要な、選挙をめぐる報道についての事案である。2019 年 7 月の参議院選挙で、極めて特異な現象が生じた。2019 年 4 月に結成されたばかりの新政党が、比例区で 228 万票、4.6%の得票を得て、2 議席を確保したのである。しかもこの新政党は、その結成から投票日まで、政見放送以外は、どのテレビ放送局にもほぼ無視されていた。これは、各放送局の編集方針が、公職選挙法の定める政党要件を満たさない政党は扱わないというものだったからである。2019 年の参議院選挙は、投票率が 24 年ぶりに 5 割を切り、低調な選挙だったと評されている。しかし、その一因は、政党要件の有無という形式的な要件にとらわれて、現に起こりつつある重要な現象を伝えなかった放送にもあるのではないか。政党要件は、放送の可否を決めるための基準ではないのに、どの放送局も実質的な判断を放棄したように見えたこの選挙についての放送は、放送が国民の知る権利を十分に満足させているのかどうかに疑問を抱かせるものであった。放送の自由が保障されているのは国民の知る権利を満足させるためのものであることを考えれば、当たり前すぎる結論であるが、問題は、現在の放送が、そのようなものになっているかどうかに疑問を持たざるを得ない事例があることだろう》(放
送局社員)
●選挙結果を1分でも正確に早く報道する」という意義も、一般視聴者には無意味。ほとんどの国民にとっては、選挙後一晩寝て翌朝に結果がわかるのでも、何の不都合もない。選挙報道に従事した記者の過重労働、過労死問題も指摘されている今、選挙報道のありようは、真っ先に見直しを図らなければならない案件だろう。しかし仮に、もし見直せないのだとすれば、そこには何らかの利権がからんでいるんだろうと思わせられる。(放送局社員)
●大本営発表しかしていない。情けない。(放送局社員)
●誰もが質問しない予定調和のぶら下がり。特に若手。(放送局社員)
●反権力の力がなくなっている。(九州の民間放送局社員)
●報道番組のディレクターですが、理事や報道局長からの介入が酷い。報道局長とその部下の女性記者に官邸からホットラインがあり、政府、安倍総理の広報原稿を読むだけになっている。日曜討論に与党しか出ない、総理会見の質問を打ち切り、女性記者が総理の代弁をする。全てホットラインのせいであり、部長や編集長級は転勤をちらつかされて言いなりです。(放送局社員)
●民主主義の崩壊。(放送局社員)
●例えば数々の首相の発言や、国会で知らないうちに進められている法案などについて、番組内で取り上げるのにとてつもないハードルを感じる。いくつもの条件をクリアしないといけないし、クリアしたとしても一部分のみしか放送できない。(地方の放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●E 特「従軍慰安婦」問題で徹底抗戦しなかったツケです。クロ現潰しで報道局の翼賛化は加速し、政権の広報を垂れ流す独裁国家の国営メディアと何ら変わりません。問題の根本は、予算が国会審議されることなどを理由に政治部記者を厚遇し、与党政治家や閣僚に取り入ることを是としてきた組織風土です。
(放送局社員=ディレクター)
●野党を支援するような報道が目立つ。(放送局社員)
●野党批判ができない。政府政策の説明ができない。(放送局社員)
●安倍首相が星野源の動画をアップした際、「賛否続々」と表現していた。他のメディアは批判、戸惑いなど否定的なトーンで伝えていた。ストレートに政府を批判する記事が書けなくなっている。政権に近い人からの批判を受けないよう、縮こまっている。また、両論併記に慣れすぎて、萎縮していることにも気づいているのかすら不明。(全国紙の新聞社社員)
●安倍政権への過剰な忖度。(新聞社・通信社の関連会社員)
●安倍首相や官房長官会見で質問が限定されており、会見が有名無実化している。政権批判ができにくくなっている。政府の発表をそのまま垂れ流すだけの政府広報に成り下がっている。(新聞社・通信社社員)
●自民党に支えられているテレビ局の傘下になっている新聞社 自民党が不利になる事柄については極力別の言葉に置き換えるように言われています。(新聞社・通信社の関連会社員)
●首相や官房長官の会見を巡る官邸側の制約と、それを簡単に受け入れる記者クラブの姿勢。両者の共犯関係が可視化されたことによる市民のメディア不信。(沖縄の新聞社社員)
●政権、官僚への自由な質問が封じられ、国民目線とかけはなれた報道がなされており、権力を持つものの怠慢への真摯な報道、批判がなされない。(新聞社・通信社の関連会社員)●政権への忖度。(新聞社・通信社社員)
●政治報道に関して言えば、横ならび意識が凄まじい。ここに「危機」を感じる。デスクは今や「ceek.NEWS」をチェックし、見出しを他紙と合わせ、抜かれ指示を現場に出すだけの存在になりつつある。このため現場は、政権発のリーク記事をトタ追いするためには電話で裏取りさせてもらえる関係を首相周辺との間で築かざるを得ないと考え、必死にゴマをする。もっとも、こうした状況は既に長く続いているだけに、当然のこととして受け止める記者が増えている印象を受ける。このような横並び意識の背景には、そうしないと人事で弾かれるという不安心理があるように思う。リスクを背負って書き続けた記者の多くは、ラインから外れている。下の世代はそれを見て育ってきている。こうした集団意識は同調圧力となり、今後も受け継がれるだろう。なお官邸から直接的な圧力を受けているとは感じない。確かに、気に入らない記事を書かれたとして記者を少人数懇談(メシ会)などから外す官邸幹部がいるのは、周知の事実だ。ただ、それをもって「圧力だ」と騒げば、国民に「何様のつもりだ」とどやされるのがオチだろう。それにもかかわらず、現場は、権力者によるその程度の「サービスカット」にも恐れ、おののいている。取材相手の官邸関係者に嫌われ、それが社の上層部に知られたら、自分は政治部のメインストリームに残れなくなると懸念するからだ。こんな空気の下、政治なんて変わるはずがない、安倍も野党もどっちもどっちだというニヒリズムと、それをも超越した政治への無関心がはびこりつつある。確かに、横並びの記事をそつなく出せるかどうかが人事考課上の見えざる重要ポイントになっているだけに、そうなるのもむべなるかなである。あれこれ考えても無駄だということだ。 政治記者が劣化したとは思わない。昔からこのレベルだった。ただ幸いかつての政権は、懇談外しや上司への苦情電話を今の政権ほどしなかった。だから、今より書けたのだと思う。
簡単に言えば、甘やかしてもらっていた。これに対し、安倍政権は甘やかしてくれない。こちらの足元をみてサービスを削減してくる。それにわれわれは焦り、転んだ。インナーサークルから外されたら、最も大事な横並び報道ができなくなるためだ。これが「危機」と言われるものの本質ではないだろうか。そしてそれは「凡庸な悪」と表現されるものでもあると思う。(新聞社・通信社社員)
●社からは時事問題でのSNS利用は社の情報管理規定に抵触するとされています。つまり処分の対象になると指摘され(脅され)ています。地方記者ですが、政権に批判的な記事は扱いが小さくされ、見出しにも取られない。かつては裁量が広く認められていた地域版も紙面の質を高めることを理由に内容にまで細かくチェックされるようになった。本版にはもちろん政権批判的なことは出稿しても採用されない。(全国紙の新聞社社員)
●特に地方紙においては地元の政治・行政・関係者との距離が近く(地縁・血縁含め)、その意味で独自の政権批判がしにくい側面もある。若手記者は、現在の消極的な取材姿勢(記者クラブ主催の会見など)を基準として記者人生をスタートさせているため、今後の取材の水準が長期的に低下する懸念もある。
(東北の新聞社社員)
●暗に政権を批判することが悪だという風潮があるように感じます。コミュニティ放送は放送権を剥奪されることをすごく恐れています。(近畿のFM局勤務)
■政権・公権力の姿勢について
●こちらの取材で明らかになった事象について報道した際、政府側から一方的に「誤報だ」と決めつけられ、執拗に謝罪と訂正を求める電話がかかってきた。各社も同様のニュアンスで報じているにも関わらずだ。(放送局社員)
●政府側が質問者に質問内容を指示するなどの事態が起きている。(放送局社員)
●放送法4条は本来倫理規定。強制できるものではない。しかし、今の政権は、番組の編集準則違反を、電波法 76 条が定める停波処分などの処分の対象になるとしている。こうした重い権限を総務大臣一人が握っているのもおかしい。(放送局社員)
●クロ現での郵政問題。(放送局社員)
●公的機関の情報公開。(放送局社員)
●取材者側の放送を通じた公共の福祉への低い意識。(放送局社員)
●政権による報道機関への介入。(放送局社員)
●政権の報道への介入。放送側の忖度。(放送局社員)
●政府の介入。(放送局社員)
●総務大臣と総務省の介入。(放送局社員)
●野党幹部議員からの事実と違う内容を報道させようとする圧力。(放送局の関連会社・取引のある制作会社社員)
●首長の会見などで、「これは書かないでほしいんですが……」という前置きが、よくある。(全国紙の新聞社社員)
●記者が書いた IR カジノ批判や横浜市の不祥事の記事を巡り、権力側が記者や社に直接圧力をかけてくるようになった。副市長や自民党市議らの新聞社への圧力は社が記者を守ってくれているが、市幹部の記者個人へのクレームはすざましい。例えば不祥事を書いた日は記者の携帯電話にいきなり市幹部から電話があり、記事の内容が不服で「記事の中立性について」を延々と訴え、続報を書かないようにと圧力を加えてきた。恐怖を感じたが続報はしっかりと書いた。市側から、記事に対して何らかの報復があるのかと記者が気にしてしまう今の状況が「危機」だと思う。(関東の新聞社社員)
●各記者会見での質問の限定及び偏った指名、個人情報保護法の誤った解釈による自治体などの取材回答拒否。(新聞社・通信社社員)
●記者会見などの場で「コメントを差し控える」といった質問に答えなくてもまかり通るようになっている。
(全国紙の新聞社社員)
●私が受け持つ現場では「報道の自由」を阻害していると積極的に答えるほどの事案はない。ただ、情報公開の経緯について行政側から納得のいく説明がある機会は少なくなっているように思える。(地方紙の新聞社社員)
●実際には明かしたところで問題のない情報についてもプライバシーを理由に開示されない。また、住民側の会見内容を行政側が知りたがり、出席した記者に資料の提供を求める。(ブロック紙の新聞社社員)
●某省にとって不都合な事実、現場の声を報道したら、某省幹部と懇意にしている弊社役員(上司)にクレームがいった。さらに某省幹部は、弊社の広告主(某省幹部の天下り先)に対して、弊社にクレームを言って広告を取り下げることを示唆するようにも伝え、広告主から強い批判があった。某県知事の批判を報道したら、抗議書が届けられ、さらに弊社が請け負う公的な関連業(別事業)に対して今年度は予算を大きく減らすと脅してきた。弊社のクライアントも巻き込んで批判してきた。(新聞社・通信社社員)
●某省の事務次官が、弊社のクライアントも多数集まるシンポジウムで講演し、某省に対して批判的な弊社報道(すべて事実)を画面で映し出して「これは間違った報道だ」「偏向報道」などと紹介した。こうした事態のたびに、弊社の報道局トップは「某省役員からクレームがあった」などと暗に報道の自粛を求め、役員全員にわざわざ文書で記者名まで記して報告するなど過剰な対応をしている。(新聞社・通信社社員)
●某省幹部だけでなく、課長補佐クラスからも「マイナスな報道はしないで」などと強く言われ、課長によっては激怒するなども日常的にある。某省はメディア規制を通常運転で行う。(新聞社・通信社社員)
●独裁政権。(雑誌、フリーランス、インターネットメディア)
(下)へつづく