まず、野田首相の語録を拾ってみよう。そこには今大手メディアが宣伝するような、日本国民のための政策、といった様相とは全く異なる本音がはっきり見えているのだ。
「次の総選挙までの最重要課題として、持続可能な財政に向けた施策を求め、それをマニフェストの柱にしたい。通常国会が終わる6月までに民主党の財政再建プランを出したい。政権を取って10年でプライマリー・バランスを黒字化することが基本方針だ。最初の4年で歳出の削減、次の4年で歳入増大のための改革を行い、最後の2年を調整期間とする。国・地方の公務員の人件費も含めて検討する。消費税については、年金目的以外の使途についても今後考えたい (2005年4月7日、経団連主催懇談会「民主党と政策を語る会」にて)」。
そう、税は社会福祉以外の使途を狙っている。そんなことで社会保障改革ができるのか、と思われよう。できるのだ。なぜなら、「税と社会保障の一体改革」とは社会保障の大幅削減のことだからだ。
「消費税増税を柱とした社会保障都税の一体改革を与野党の壁を乗り越えて何としても実現させて行く (2012年4月28日、メーデー中央大会、東京・代々木公園にて)」。
この発言に先立つ2日前、4月26日に開かれた経済同友会の総会で、長谷川閑史(はせがわ・やすちか)代表幹事によって、「与野党の違いを乗り越えて政策の実現を」、「党派を超えて責任を共有して」政策を実行に移してほしい、と声明が出された。大手新聞社と野田さんの使うキーワードの一つである「与野党の壁を乗り越えて」とは、財界によって口移しに教唆された言葉である。その意味するところは、財界の要求する政策をさっさと実現させてくれ、ということだ。わたしたち庶民の困窮を何とかしなければ、というのでは決してなかったのだ。
そう、野田さんの政治活動はすべて、財界戦略をなぞったものだった。いま、TVの宣伝で、自分が感じ取った大事なことというのは「決めること」である、というようなことを述べて、ねじれ状態を生みだした国民を暗に非難したようなことを言っているが、野田さんのいうところの「決める政治」は、つまりは財界の要求をのみすんなり通そうという政治だ。だから、民主党は分裂した。鳩山の無能さのために失脚した市民派グループが反旗を翻したのだ。当然のことだろうと思う。前原、管と野田はまた、自分たちの行動を制約する強力なライバルである小沢潰しにかかった。
これが、民主党崩壊の主な原因だ。民主党には大きく三つのグループが無理に一束になっていた。そのうちの小泉=竹中路線にたいへん親和的な、松下政経塾系のグループが最後まで生き残り、他派の没落に利されて頭角を現した、ということなのだ。
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野田政権は、今年1月13日に内閣を改造したが、これに対し経団連は16日、「新内閣に望む」とする見解を発表。野田改造内閣に、「もはや課題は明らかであり、決断と実行が求められている」として、「決断と実行」を求めた。
「決断と実行」というこの言葉は、1月24日に衆院本会議の演壇に立った野田首相から発せられることになる。野田首相は施政方針演説で「重要な課題を先送りしない『決断する政治』」と宣言した。野田首相のキャッチフレーズとなったこの「決断する政治」は、実は財界によって口移しに与えられたことばだったのである。財界の声のエコーなのである。
首相はこの施政方針でさらにこう強調した。
「日本が直面する課題を真正面から議論し、議論を通じて具体的な処方箋を作り上げ、実行に移してゆこうではありませんか。すべての国民を代表する国会議員として、いまこそ『政局』ではなく、『大局』を見据えようではありませんか」。
野田首相が口にした、この「議論を通じて」の意味は、自民党と協力して消費税増税法案を成立させる、ということだ。4月12日に開かれた党首討論で、野田首相は消費税増税法案を柱とした社会保障と税の一体改革を「待ったなしの改革」と強調。「成立に重大な決意を持って臨む。会期の中で成立を期すのが政府の基本的な姿勢だ」として、谷垣禎一自民党総裁に対し、「トップ同士で胸襟を開いて議論したい。党首討論はもちろんやるが、党首会談も引き続きお願いしたい」と、協力を呼びかけた。
財界による自民党への工作も水面下で進んでいる。今年に入ってからも谷垣自民党総裁を囲む会が2回開かれた。その席で財界側は、「自民党のほうから一体改革関連法案を出し、リーダーシップをとってやってほしい」と求めていた。
(「暴走する野田政権・背景にある財界戦略」/ 金子豊弘・しんぶん赤旗・経済部記者)
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もうこんな警告記事を書かなくても、いまさら野田民主党に票を入れようとする一般庶民はいないだろう。わたしたちが希望した政策は何一つまともに成立しなかった。それどころか、わたしたち庶民が大反対している法案をどんどん強行採決させていった。よくもまあ、「すべての国民を代表する国会議員として、いまこそ『政局』ではなく、『大局』を見据えようではありませんか」などとヌケヌケ言えたものだ。野田が代表していたのは経団連であり、電力会社であり、経済同友会なのだ。
民主党の没落の反動で、自民党の株が大幅に上がっているそうだが、最後にこの記者が述べたように、経団連は自民党にも根回しを済ませてある。つまり、いまや財界は、自民党でも民主党でも、どちらでも自分たちの望むことを政策として安定して実現させてゆくことができるのだ。これが財界主導の二大政党制の目的であり、小選挙区選挙制度は二大政党に有利な方法であり、議員定数削減は小うるさい小政党を抹殺してしまう手段なのだ。
事実、自民党の片山さつきと世耕の生活保護バッシングが奏功したように、自民党も庶民の暮らしへの緊縮大圧力を加える模様だ。無理だと思うが、自分の首を絞めたくなかったら、民主党と自民党、維新の会はやめたほうがいい。維新の会の所為で大阪はまるでイラクのようです。でも、もうそんなこと見えないよね。中国憎しで、再軍備、か。困窮する国民の注意をそらせる常套手段なんですけどね、こういうのって。