自分の弱点を認めることは誰にとってもむずかしい。しかし、視野を広げられれば、自然と自分の弱点を受け入れることができるようになる。そして弱点を受け入れることで、新しい展望が拓けてくる。視野を広げることと弱点を受け入れることとは、このように好循環をつくりだしてゆく。

 


人は、自信があれば自分の弱点を受け入れることができる。弱点を受け入れることで、さらに自信が大きく育まれてゆく。弱点を受け入れることは自信を強めることとも好循環をなしてゆく。

 


しかし、なかには弱点を認められないために、「つっぱってしまう」、つまり、態度を硬化させたり、攻撃的になったり、「上から目線」になったり、意固地になる人…etc...もいる。このように「つっぱってしまう」ことは、その人が心理的成長=人格的成長の面でつまづいていることを表している。人はつっぱればつっぱるほど実は自信を失ってゆく。自信が減少してゆくからさらにつっぱって自分の優位を確認しようとする。しかしそうやって「つっぱること」が自信を失わせてゆく行為なのだ。そして自信が失われたところに生じる「感じ」が劣等感である。人は自信があればつっぱらない、つまり、意固地にならず、強硬な態度を取らず、攻撃的にもならず、露骨に見下そうともしない。つっぱることと劣等感は悪循環をなしてゆく。そして「つっぱる人」は最後には孤立してしまう。

 


弱点は誰でも持っている。そしてその弱点を受け入れた人だけが平和で沈着な人となりに至ることができる。平和で沈着な人には人間関係が豊かに実り、その人はしあわせになれる。自分の弱点を認めるからこそ、人に対してやさしくなれる。弱点がないから人々に認められるのではない。弱点があっても人は受け入れてくれる。自分の弱点を認めることで他者の弱点も包み込むことができ、そういう土壌の上に人間関係は発育してゆく。「つっぱる」人はそこを勘違いしている。自分の弱点を隠そうとして、他者の弱点を言い立て、優位に立てば、人は畏れ入って受け入れると思い込んでいる。しかし、実際には他人を攻撃して自分の偉さを宣伝すればするほどその人は疎まれてゆき、孤立してゆくのだ。

 

 

 

「自信と劣等感の心理学」/ 加藤諦三・著 より