日本の官僚が「ことなかれ主義」に陥る理由として、大きく二つあると指摘されてきた。
① 勤務評価が減点法であること、
② 幹部職員であるキャリア官僚が2~3年で部署を移動していくこと…
…である。
現在までの官僚組織は、本質的には明治初期の「太政官」以来、ほとんど改革されていない。
勤務評価は、減点法が中心で、成果を上げてもさほど評価されないが、失敗するとてきめんマイナス評価がつく。
そのため、何か問題が発生していても、自分が存在している間に「何とかしよう」というモチベーションは働きにくい。下手に手を出して失敗すれば、自分が減点されることになるからだ。
また、問題解決に乗りだすということは、前任者の失敗を認めることになる。そうすると、それは先輩の失敗となり、先輩にマイナス評価がつくことになる。そのため、問題解決に取り組もうとする官僚は、組織に波風を立てる者として問題視され、左遷などの憂き目にあわされることが多い。
つまり、霞が関では自分の出世を考えれば、見て見ぬふりをしておくのが無難、という、無能者ほど出世しやすい人事システムになっているのである。
しかも、現在の官僚組織では、キャリア官僚は通常2~3年ごとに異動する。
そのため、たとえば自分が課長ポストにあるとき、何かの問題に気づいても、2~3年のあいだ、見て見ぬふりをしていれば次の部署に異動になる。官僚組織では、前任者のミスは問われないため、 “嵐” は過ぎるのを待つ、に限るのである。
官僚の身分は、民間企業の社員以上に保障され、これまでは法律や規則に定められた事由以外では降任や免職もされなかった。だから、最終的に政治家が動かない限り、官僚が現在の制度に生じた問題解決に動くことはないのである。
ところが、旧自民党政権は、公共事業のばらまきを集票構造の基礎としていたので、ダムや地方空港建設などの公共事業がムダとは気づいていても、やめる方向にはまず動かなかったのである。そうしてムダな公共事業が延々と繰り返されたのである。
「官僚の正体がズバリ! わかる本」/ 社会情報リサーチ班・編