Ques.◆「核のごみ」の最終処分場がないって本当?

Ans. ◇世界のどこにも存在せず 日本では立地自治体を公募

 



原発って核のごみが出るらしいね。どういうものなの?


原発はウランという放射性物質を核分裂させた時に出るエネルギーで動かしており、その燃えかすは「使用済み核燃料」と呼ばれています。日本では燃えかすの中からウランやプルトニウムを取り出して再び原発を動かす燃料にする「核燃料サイクル」を進めていますが、再利用できない高レベル放射性物質が「核のごみ」として残ってしまいます。

 


どれくらいあるの?


国内ではガラスと溶かし合わせ高さ約130センチ、重さ約500キロのガラス棒に加工しており青森県六ケ所村と茨城県東海村にある使用済み核燃料の再処理工場に約1700本貯蔵されています。国の試算では2021年ごろには約4万本に達するそうです。

 


4万本ものガラス棒は最終的にどうするの?


「高レベル放射性廃棄物最終処分場」を作り、ステンレス製の容器に密封して300メートル以上の地下に埋めることになっています。棒は強い放射線を発していて、元の天然ウランと同じ放射能レベルに下がるまでには数万年かかると言われています。

 


すごく長いね。その処分場ってどこにあるの?

A 
実はまだ世界のどこにも作られておらず、建設場所が決まっているのもフィンランドとスウェーデンだけです。日本では経済産業省の認可法人が02年12月から立地する自治体を公募し、初期調査に応募しただけでも周辺自治体に最大20億円の補助金が出ます。07年1月に高知県東洋町が初めて応募しましたが、議会や住民の反発を招き、その後の選挙で当選した町長が撤回しました。

 


国は停止中の原発の再稼働を求めているけど、このままではいつか核のごみがあふれてしまうね。


日本には世界で3番目に多い54基の原発があります。福島第1原発の事故後、欧州などで脱原発の動きが広がっていますが、仮に各国が脱原発政策に転換したとしても、既にできてしまった核のごみの最終処分問題は避けて通れません。原発による安定した電力供給を享受してきた私たち一人一人が考え、議論を深めるべきでしょう。(社会部)

 


毎日新聞 2011年6月23日 東京朝刊