安倍晋三首相がこれまで「07年度をめど」としていた消費税を含む税制の抜本改革の時期を、臨時国会の所信表明演説では外したことについて、香西泰・政府税制調査会長は11日の会見で、「政治情勢を考え、07年度めどという表現をされなかったのだろう」と語り、今の政治情勢ではやむを得ないとの考えを示した。同会長は「政府税調としては、『08年度をめどに』と書き換えるわけにもいかない。与えられたスケジュールの中で、できるだけのことをしておけば任務は果たされる」とも述べた。

 一方、額賀福志郎財務相は11日の閣議後会見で「私は07年度をめどに議論をしていくべきだと思っている。安倍首相も潜在的な意識は変わりないと思う。ただ国会の状況が変化しているので、最高責任者としては与野党で話ができるように、若干マイルドな表現をしたのではないか」と述べた。【川口雅浩】



毎日新聞 2007年9月11日 22時28分







政府税調:1カ月ぶり議論再開 与党大敗で消費税上げ困難

 年末の08年度税制改正に向け、政府税制調査会(首相の諮問機関、香西泰会長)が11日、約1カ月ぶりに議論を再開した。参院選で与党が大敗したため、消費税率引き上げは先送りが濃厚で、法人税の引き下げも決着は困難な情勢だが、政府税調が11月にまとめる答申で、消費税や法人税についてどう位置づけるのか注目される。このほか、所得税の扶養控除の見直し、証券取引の優遇税制の扱いなどが主要テーマとして議論される。

 11日の政府税調では、消費税率について、税調委員の横山彰・中央大教授が「社会保障制度維持のために引き上げが必要だということを、よく議論する必要がある」と述べ、前向きに議論するよう求めた。これに対し特別委員の高木剛・連合会長は「(社会保障制度だけでなく)家計の負担という観点からも税を考えることが必要だ」と述べ、安易な引き上げ論議をけん制した。

 政府・与党は08年度税制改正で、年金の財源として消費税率を引き上げる青写真を描いていたが、参院選の与党大敗で状況が変わった。仮に政府・与党が消費増税の改正法案を提出しても、参議院で野党が否決するのは確実で、安倍晋三首相は10日の所信表明演説で、これまで「07年度をめど」としてきた消費税など税制の抜本改革の時期に言及しなかった。

 自民党税制調査会の津島雄二会長は08年度税制改正で結論を得るのは困難との見通しを示しており、政府税調の香西泰会長も11日、「今の段階で消費税を上げる議論には至っていない」と述べるにとどまった。

 企業税制関連では、日本経団連が、法人税の実効税率(国税と地方税の合計)を40%から30%の水準に引き下げるよう強く要望している。だが「法人税率を引き下げると、税収確保のため、他の増税が必要」との指摘もあり、消費増税が困難になった以上、法人税率の引き下げも難しいとの見方が出ている。

 扶養控除の見直しも議論される。扶養控除は子供を持つ親の課税所得を軽減するもので、所得税の場合、16歳未満は1人当たり年間38万円、16歳以上23歳未満は同63万円が課税所得から差し引かれる。政府税調では扶養控除額を引き下げて税収増を図り、低所得の若年層の子育て支援を重点的に手厚くする税制を検討する見通しだ。

 証券取引の優遇税制は、株式譲渡益と配当にかかる税率を本来の20%から10%に軽減するもので、昨年の税制改正で1年間延長された。金融庁は08年度税制改正要望で、優遇期限を再延長するよう求めている。預貯金の利息と株式の売買損益などを一体として課税する「金融所得一体課税」の導入の是非も議論されそうだ。【森山知実】



毎日新聞 2007年9月11日 22時25分