高齢者医療制度 総選挙で改革案を競い合え | Luna's " Tomorrow is another day "

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 「高齢者医療制度に関する検討会」がまとめた報告書には失望した。

 舛添要一厚生労働相が設置した有識者検討会の報告書は、総論として「すべての世代の納得と共感がより得られるものとなるよう必要な見直しを着実に進めていく必要がある」と常識的な指摘をしたうえで、肝心の具体案については各委員のさまざまな意見を列挙しただけに終わった。

 焦点だった、75歳以上で線引きして独立の制度を創設した点については「いろいろな議論があり、引き続き議論を深める必要がある」と結論を先送りした。医療制度の将来に不安が高まる中、明確な方向性を示せなかった責任は重い。

 昨年春にスタートした後期高齢者医療制度は保険料の年金からの天引きや、75歳以上を線引きしたことに対し、高齢者らから反発や批判が噴出、大混乱した。このため、舛添厚労相は昨年9月、有識者による検討会を作り、市町村が運営する国民健康保険を都道府県単位に再編し、75歳以上の医療も一体運営するという私案を示して、議論をリードする姿勢を見せた。

 これに対して与党は、高齢者からの批判が収まりつつあることで、現行制度を維持した上で手直しをする方向で今春には案をまとめる。有識者の検討会が、こうした与党の動きに配慮してトーンダウンし、改革論をまとめることを先送りしたのだとしたら、国民は納得しないのではないか。

 高齢者医療制度のあり方については、国会でも長い時間をかけた議論があり、関係団体の意見対立などもあって議論は混迷している。だからこそ舛添厚労相は検討会で早急に改革案を詰めたいと考えたのではなかったのか。

 報告書にはたった一つ、「速やかに見直しが必要」とした点がある。「後期高齢者」という名称の見直しだ。「高齢者への尊厳を損なうもの」というのが理由だ。とはいえ、半年かけた検討会が示した唯一の改革案が名称変更だけというのでは情けない。

 後期高齢者医療制度をどうしていくのか。現制度の手直しですませるのか、抜本的な改革を行うのか。財源問題や制度の運営主体をどこが担うのかという問題もある。医療制度は暮らしに密接に関係するものであるだけに、このままの状態を放置してはおけない。

 報告書では改革の課題を挙げたうえで、「引き続き検討」「さらに検討が必要」などという言葉が並んでいる。医療制度改革は難しい課題である。やはり、最終的な判断は総選挙で国民が行うことになる。そのために各政党は高齢者医療制度の改革案を示し総選挙で競い合うべきだ。後期高齢者医療制度の混乱を繰り返さないためにも、各党には国民が安心できる、しっかりとした改革案を作ってもらいたい。




毎日新聞 2009年3月18日 東京朝刊