千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が昨年1月、父親の勇一郎被告(42)=傷害致死罪などで起訴=から虐待を受け死亡した事件で、市の対応を検証し再発防止策を検討する「市児童虐待事件再発防止合同委員会」の第4回会合が23日夜開かれ、検証委員の専門家3人が報告書を提出した。女児の命を救うために介入すべきだった13点を挙げた上で、関係機関の対応の問題点とそれへの提言を記載。市に「(虐待事案の)子どもを守り通す組織づくり」を求めた。会合の冒頭、委員らは心愛さんの命日の1月24日を前に1分間黙とうした。

 

  会合後、報道陣の取材に応じた検証委員の鈴木秀洋・日本大学准教授は「事件を二度と起こさないため、関係職員の具体的指針になれば」と述べた。

 

  報告書は心愛さんの命を救うために介入すべきだった13のポイントとして 「被害を訴えた心愛さんのアンケートを父が知っていることに気付いた時点」 「父の指示で書いた(虐待はないとする)手紙を児童相談所職員が見た時点」 などを挙げた。

 

  市児童家庭課の対応について、「一時保護を行った県柏児童相談所と役割分担を協議し、心愛さんと繰り返し面会しSOSを出しやすい状況を作り出すべきだった」 「一時保護以降、最低限の基本の家庭訪問を行っていないのは問題」と指摘した。

 

  市教委・学校については

 (1)アンケートを読んだ段階ですぐに市に通告すべき

 (2)アンケートを父に渡したのは心愛さんへの裏切り-と指摘。

この反省を踏まえ「全ての市教委・学校職員に子どもの権利に関する教育を行う」ことを求めた。

 

  市の体制については

 (1)一人で抱え込まず組織全体で虐待事案に対応する態勢の構築

 (2)SOSを受け止める子どもの権利擁護機関(子どもオンブズマン制度)の設置-を求めた。

 

  児相を設ける千葉県への要望も記した。「児相が権限を十分活用すれば心愛さんの命を守れたはず」と強調。一時保護解除の条件で児相の決定と担当の児童福祉司の方針に食い違いがみられることや、児童福祉司が心愛さんを信用していないかのような手紙を、市に伝えずに父に渡していたことを指摘。児童福祉司の増員と質向上を求めた。

 

  今村繁副市長は「報告書を単なる事例研究にしてはいけない。いかにケースワークに生かせるかが課題」と述べた。合同委は報告書に対する委員の意見を併記した上で5月中旬に市長へ報告する。

 

  市は報告書の指摘を踏まえ、再発防止に向けた柏児相との「児童虐待対応マニュアル」を年度内に作成する。 野田市は心愛さんの命日の24日、本庁舎で始業時に全職員による黙とうを行う。

 


 

千葉日報オンライン
最終更新:1/24(金) 11:54