◇母子家庭で育ったわたしたちの本音「哀れみの目が子を傷つける」
母子家庭で育った子どもにインタビューして思いをまとめた冊子「子どもたちから大人への伝言~ひとり親で育ったわたしたちの本音」(A5判、32ページ)が、共感を集めている。母子家庭で育った女性2人が、中高生の男女6人にインタビューした。『かわいそう』ではなく、親が選んだ道を受け入れている姿が浮き彫りにされており、一人親の子どもを正しく理解してほしいという願いが込められている。【蒔田備憲】
企画したのは、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ関西」(大阪市浪速区)のグループ「ひとり親家庭で育った子どもグループ・SKYパレット」のメンバー。植田あゆみさん(21)=大阪府枚方市=と土屋春葉さん(27)=京都府向日市=がインタビューと執筆を担当した。2人は、2年前に同ふぉーらむ関西の活動を通じて知り合った。母子家庭で育ったことを打ち明けても「大変やね」などという反応が多く、「そんなこと思っていないのに」と違和感を持ってきたという。そんな共通の思いから、「同じ環境で育った同世代から、もっと多くの声を聞きたい」と考えたのがきっかけだった。
昨年4月~今年2月にかけ、中学1年~高校3年の男女6人にインタビュー。このうち5人は離婚、1人は非婚の母子家庭で育った。
質問は▽離婚について▽同居している親との関係--など。冊子では、「大人たちの反応でやめてほしいことは?」との問いに、「同情されること」「片親しかいないことに触れた時に『しまった』という顔をされたこと」など、子どもたちの胸の内が紹介されている。また、母子家庭で育った園児らが家族をテーマに描いた絵もカラーで掲載。父親の姿はないが、どの絵も笑顔にあふれ、明るい色遣いだ。
植田さんらはインタビューの結果、「ひとり親家庭で育ったことを悲観している子どもはほとんどいないのに、世間は哀れみの目を向けて、そのまなざしが子を傷つけている」と分析している。「しんぐるまざあず・ふぉーらむ関西」の中野冬美さんは「子どもの声が取り上げられることは今まで無かった。子どもも当事者なんだと光を当てることができた」と評価している。
◇「偏見なくしたい」
厚生労働省が5年に一度行っている「全国母子世帯等調査結果報告」の最新調査(03年)では、ひとり親家庭の世帯数は約139万世帯で、前回より28万世帯増加。03年には、児童扶養手当が受給から5年後に最大で半額減額される制度改正もあり、経済的負担は重くなっている。中野さんは「貧困で子どもが進学できない家庭も増えている。こうした冊子を通し、一人親で育てることへの偏見を無くし、社会も受け入れてくれることが必要」と訴えている。
2000部発行。1部500円。
問い合わせは同フォーラム(06・6634・7336)。
毎日新聞 2007年7月27日
母子家庭で育った子どもにインタビューして思いをまとめた冊子「子どもたちから大人への伝言~ひとり親で育ったわたしたちの本音」(A5判、32ページ)が、共感を集めている。母子家庭で育った女性2人が、中高生の男女6人にインタビューした。『かわいそう』ではなく、親が選んだ道を受け入れている姿が浮き彫りにされており、一人親の子どもを正しく理解してほしいという願いが込められている。【蒔田備憲】
企画したのは、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ関西」(大阪市浪速区)のグループ「ひとり親家庭で育った子どもグループ・SKYパレット」のメンバー。植田あゆみさん(21)=大阪府枚方市=と土屋春葉さん(27)=京都府向日市=がインタビューと執筆を担当した。2人は、2年前に同ふぉーらむ関西の活動を通じて知り合った。母子家庭で育ったことを打ち明けても「大変やね」などという反応が多く、「そんなこと思っていないのに」と違和感を持ってきたという。そんな共通の思いから、「同じ環境で育った同世代から、もっと多くの声を聞きたい」と考えたのがきっかけだった。
昨年4月~今年2月にかけ、中学1年~高校3年の男女6人にインタビュー。このうち5人は離婚、1人は非婚の母子家庭で育った。
質問は▽離婚について▽同居している親との関係--など。冊子では、「大人たちの反応でやめてほしいことは?」との問いに、「同情されること」「片親しかいないことに触れた時に『しまった』という顔をされたこと」など、子どもたちの胸の内が紹介されている。また、母子家庭で育った園児らが家族をテーマに描いた絵もカラーで掲載。父親の姿はないが、どの絵も笑顔にあふれ、明るい色遣いだ。
植田さんらはインタビューの結果、「ひとり親家庭で育ったことを悲観している子どもはほとんどいないのに、世間は哀れみの目を向けて、そのまなざしが子を傷つけている」と分析している。「しんぐるまざあず・ふぉーらむ関西」の中野冬美さんは「子どもの声が取り上げられることは今まで無かった。子どもも当事者なんだと光を当てることができた」と評価している。
◇「偏見なくしたい」
厚生労働省が5年に一度行っている「全国母子世帯等調査結果報告」の最新調査(03年)では、ひとり親家庭の世帯数は約139万世帯で、前回より28万世帯増加。03年には、児童扶養手当が受給から5年後に最大で半額減額される制度改正もあり、経済的負担は重くなっている。中野さんは「貧困で子どもが進学できない家庭も増えている。こうした冊子を通し、一人親で育てることへの偏見を無くし、社会も受け入れてくれることが必要」と訴えている。
2000部発行。1部500円。
問い合わせは同フォーラム(06・6634・7336)。
毎日新聞 2007年7月27日