東京新聞 2007年6月10日

「憲法問題がようやく議論のスタート台に上がった」:高坂さん


 憲法を考える時の原点は、商社勤務時代の体験にあります。イラン・イラク戦争の際、イランへ派遣していた部下を国外へ脱出させるのに、航空機を出して協力してくれたのはトルコでした。日本の航空会社や自衛隊ではなかったのです。

 湾岸戦争時には米国にいました。「ペルシャ湾は日本へ原油を運ぶ多くのタンカーが航行しているのに、日本は何もできないのか」と言われ、戦後の米国への依存体質を痛感しました。

 日本は日々、海外と膨大な物資の取引をしながら生きているのに、相応の安全保障体制を整えてこなかった。「平和、平和」と口で言っているだけで、平和が実現できるとは思えません。

 平和主義の基本は維持しながら、憲法には自衛軍とその国際貢献活動を明記した方がいい。集団的自衛権の行使は、その前提として認められるべきです。現行憲法下でも、どういう条件なら行使できるのかを議論するのは当然だと思います。

 九条の改正に、アジア諸国の反発が絶対にないとは言えませんが、平和主義が変わらない点を誠実に説明すれば、理解してもらえる。自衛隊の規定すらないまま解釈改憲が進んでいく方が、他国にとっては不安ではないでしょうか。

 できるだけ軽武装を保ちながら、米国との良好な関係を維持していく。軍事以外のことでも「日本を敵に回したら損だ」と他国が思うような、総合的な安全保障の仕組みが必要です。

 例えば、中国とは貿易や技術提携、環境対策など協力できる分野が多い。東南アジアとの関係も重要で、政府開発援助の削減には反対です。各国と多角的な関係を深めることが大切でしょう。

 日本にとってこの六十年は、日米安保条約もあり、基本的には冷戦という“安定”した構造の中で平和を享受できた幸運な時期でした。今、世界は多極化し、急激なグローバリゼーションの光と影もはっきりしてきた。憲法にも、日本が国際社会との関係をどうするかをうたうべきです。現行憲法のままでよかった時代もあったとは思いますが、日本を取り巻く状況は大きく変わりました。国民は将来を見据えて議論すべきではないでしょうか。

 



 こうさか・せつぞう 1936年京都生まれ。京大経済学部卒。元経済同友会幹事・憲法問題調査会委員長。伊藤忠商事常務、栗田工業会長などを歴任。外資系コンサルタント日本代表。著書に「昭和の宿命を見つめた眼」など。70歳。



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ルナより:

皆さんなら、どのように反論されますか…?