看護師:配置、国立大病院に集中 地方、中小なお不足--7対1報酬新設を受け
 




 厚生労働省は11日、「看護師1人で患者7人」の手厚い看護師配置(7対1)を導入した医療機関(一般病棟)が、今年5月時点で前年同時期の2・8倍、787に増え、病床数は3・6倍の16万2730に急増したとの調査結果を公表した。06年度の診療報酬改定で、7対1を確保した医療機関の入院費を一律増としたことが背景にある。大病院が看護師の大量採用に踏み切り、地方や中小病院での看護師不足を招いているが、今春の看護師採用状況が「国立大学病院の独り勝ち」だったことを裏付けるデータも明らかになった。

 7対1報酬の新設は手厚い看護体制による入院日数短縮を意図したが、増収を狙う大病院による看護師大量採用を誘発。一般病棟の全病床に対する7対1病床の割合は、前年の6・2%から23・1%に増えた。

 一方、医療機関867施設を対象とした看護師採用調査では、842施設が昨春より33%増の3万3458人を募集し、うち791施設が23%増の2万7887人を採用した。充足率は83%。多くは7対1確保を目指した動きとみられる。

 ただ、昨年の2倍、4875人を募集した国立大病院(45施設)は採用数も2倍以上、4723人(充足率97%)だったのに対し、他施設の充足率は▽社会保険病院(52施設)69%▽私立病院(78施設)79%▽都道府県立病院(230施設)82%--と軒並み低い。国立大病院が厚遇を掲げ、看護師をかき集めた実態がうかがえる。

 国立大病院は今春の大量採用で、総看護師数に占める新人の割合が20%に達した。厚労省は11日の中央社会保険医療協議会で「安全な医療ができるのか、十分配慮をしてほしい」と異例の注意を促した。【吉田啓志】

毎日新聞 2007年7月12日 東京朝刊