奇跡のリンゴ
トレドの年末は家で過ごす事になりそうです。
雨降って風も強いし、寒いしで外に出かける気が起きません。
だから最近家で本を読んでいます。
前回は「地道力」と言う本で、今回読んだのは「奇跡のリンゴ」という本です。
これもかなり良かったので、皆さんにお勧めしたいです
この本を読んだ後で奇跡という言葉を使うのは、この本の主人公である「木村秋則氏」に相応しくないと思うけれど、正に信念で「奇跡」を起こした方であります。
木村さんと言う方は青森県のリンゴ農園の出身の方ですが、本人は効率人間の機械いじりが好きで、東京に就職もしているので、根っからの農業好きというわけではありません。
何にしても転機はあるもので、ある事を切っ掛けに木村さんは青森の実家に呼び戻されることになります。
そこで東京に戻れる機会があったのですが、宿命というのでしょうか農業の婿養子になってしまったので農業(リンゴ農園)の道を歩むことになる。
最初に農業を勉強した方なら知っているかもしれないですが、リンゴには農薬がかかせませんでした。
昆虫・カビ・細菌・ウィルスなど何十種類もいて、それを駆除する為にこれまた「防除暦」という、いつの時期に、どの農薬をどれくらいの量で散布すれば農薬残留0で作れるかなどのガイドラインに基づいて散布します。
これを年に10数回やらなければ、リンゴの木はまたたく間に枯れ果ててしまうのです。
しかし、農家に生まれ育った木村さんは当然ながら農薬を使ってリンゴを育てる事は常識以外のなに事でもなかったのですね。
でもこれまた出会いというか、本屋で欲しくない本を誤って落下させ責任を取って買う事になりました。
福岡正信さんが執筆した「自然農園」という本との出会いで、リンゴを無農薬で育ててみようと試みたのです。
勿論ただ農薬を止めればいいとかではなく、リンゴと農薬に関する知識を徹底的に勉強しました。
そこで農薬を別の物に置き換え回数を減らしながらやり、最終的には一度も農薬を使わずしかも全てのリンゴ園を無農薬にするという後戻りできない事をやり始めたのです。
1年目から早速カビの病気にかかり正体を掴むが、撃退には農薬しか方法が無かった。
それだけで家にある醤油からニンニクワサビなど、何万回という試行が施されたが無駄だった。
それ以外にも害虫が何百匹と付くので、隣の農園に被害が出ないようにそれも毎日毎日手で摘まんで駆除していたのです。
リンゴは1年に1回のみの収穫で、リンゴ農園で生計を立てる木村さんは結果的に収入が0でした。
初めの1~3年程度は蓄えもあり、何とか頑張れるけれど、子供もいる家族をそれ以上は負担掛けたくないと思い普通であれば辞めてしまうでしょうね。
しかし木村さんはリンゴは病気のせいで実らなくても、信念と他の農園に被害を与えないようにと片道2時間、毎日のように害虫を取りに通っていたのです。
勿論畑から農機具全てを売り払って、電気ガスも止められたり、税金も払えなかったという日が7年も続いた。
できる限りの全ての方法をやり尽くしたが、リンゴの実はおろか、リンゴの木自体が倒れかけていた。
っで、最終的に木村さんはリンゴの木一つ一つに声をかけることしかできなかった。
その上、家族も酷い暮らしを強いられているので、これ以上迷惑をかけたくないという思いが強かったが、一方でここで引き下がれないという信念というか引き留める心があったのでした。
しかし、終止符を打とうとついに自害という決断に踏み切ろうとするのだけれど、この極限状態で意図も簡単に突破口を見つけ出す事になる。
一つの事にとらわれ過ぎているから目に見えている部分しか見てこなかった。
結局この突破口とは・・・
続きを知りたい方はお近くの本屋さんで読んでくださいね
要は、全てを「自然に返す」というやり方です。
人間はじめ動物、植物も自然界の産物。
人間が人工的に手を加えれば人工的な物しかできない。
所謂、永遠と人工的な手を加え続けなければ、それを辞めた時点で弱っていってしまう。
サッカーなども結局は人間同士が行うスポーツであり、いくら最新の人工的なプログラムで練習してシステムを組んでも本能で動く者には敵わないという事。
つまり、練習から全て監督の指示でやっていたのでは人工的な選手しかできない。
見た目は統率がとれて素晴らしいと思うけれど、勝負に関しては限界があると思う。
科学が自然に到底敵わないと同じ事で、データの中で指示されて動けない選手はそれ以上の選手には成れないという事。
例えば昔ヤンキーがいた頃、サッカー部のヤンキー(ヤンはな奴)程サッカーが上手だった。
しかし、彼らはクラブ、学校の厄介者として消されてしまう。
なぜならば、彼らは基本的に支持されるのを嫌い、ある種本能でサッカーをしているから予測できない動きをするし教科書通りプレーする選手にない「特徴」を兼ね備えているからだ。
欧州や南米の選手に良い選手が多いのは、子供の時からやりたいようにやっているから、誰に教わったわけでもなしに「自然」と回避の仕方など身についていくのである
「臨機応変」という言葉があるように、同じ場面の試合は二度とないから、色々な状況に対応・乗り越えることのできる選手が一流選手となる。
日本と海外が決定的に違う練習方法があります。
それが子供の練習で監督は楽しませてやるという事。
ワンタッチ、ツータッチでプレーしろではなく、FWは取られるまでドリブルして、ディフェンスは一発で抜かれてもいいから取りにいけということ。
何回もボールを取られるFWはそのうち自分で何が悪いのか考えるようになる。
何回も抜かれるDFはどうしたら抜かれずにボールを奪えるか考えるようになる。
すると選手は色々な状況でそれが自然と考えられるようになる。
そういう選手はレベルが上がるにつれてどんどん成長する。
一方で色々な戦術やら知識を詰めさせる指導のベクトルが子供たちへ一方通行の場合、小さい頃は圧倒的に強いかもしれないが、大人になるほど複雑に絡んだ未知の状況に対応できずそれ以上伸びない選手となってしまう。
じゃあ、指導はほったらかしの方がいいのかと言えば、そういう事でもない。
技術を教え、子供たちが自然に考えるようになる練習メニュー・環境を作ってあげなければいけない。
システムや戦術の指導はこれが出来てからの話だと思う。
日本で良く耳にする監督の言葉は、やる気が無いのなら帰れ!や、考えてやっているのか?といったマイナスの言葉です。
子供のころは間違うだけ自分の中のデータが増えるので逆に失敗した事、新しい事に挑戦した勇気を褒めなければいけません。
同じ間違いをずっとし続けている子供はバカです。
それを直す子供は秀才ですが、天才には成れません。
しかし木村さんは「死ぬ前には一度バカになってみたらいい」とこの本でいってたけれど、バカになればかならず一流もしくは奇跡の域にたどり着くということです。
純粋でバカになれるのは子供の頃が一番です。
大人が指導する以上に子供は柔軟で素晴らしい考えを持っていますので、逆に子供から指導されるという気持ちで臨んだ方が新しい知識が得られると思います。
でもスペインの子供は生意気なのでビシビシ指導したいですね
皆さん良いお年を迎えてください。