第11話 ネッシーの涙 その2
飽き性のママがダイエット続くわけない。
誰もがそう思っていた。
当分その話題もなかったし、確かに耳にちっちゃなバンソウコウのようなものが
貼られているのを見かけたことはあった。
毎日見てるとあまり気が付かなかったんだ。
だけど、ある日を境に久々に来たお客さんたちからある言葉が口をついて出るようになった。
「ママ、どうしたん?やせたんじゃない?」
そういわれてみれば、確かにすっきりしたような。。。
聞けば、殆ど食欲が湧かないという。
耳たぶに食欲抑制のつぼがあり、そこに金のちっちゃなハリを打っている。
食べてないなら、あまり健康によくなさそうだし、無理やりにでも食べさせてほうがいいんじゃないかと皆が口々にいった。
賭け云々ではなくそう思った。のも事実。
食べて賭けがなくなればいいのにとちょっとだけ思ったのもこれまた事実。
結局1ヶ月で8KGダイエットに成功し、ママはまんまと賭けに勝ってしまった。
・・・
困ったのは実現できないようなことを賞金とした私たち。
飛び降りるといった人は名前も知らないが、その後見かけなくなった。
ほんとに飛び降りた???の?
いや、それはないだろう。
10万円出すといった石田さんは泣く泣く5万円ぐらいの貢ぎもので勘弁してもらった。
そして、、、
”ネッシーの涙”を採ってくるといった私は、
未だにその約束を果たしていない。
「まあ、ずーっとまっとるよ。」
そういわれて以来、何もしていない。
今では数年に一度程度だが、顔を合わせるたびに
「佐藤君、”ネッシーの涙”待ってるんだけど。。。」とママがいう。
んー。あげたいんだけどね、採りに行く機会がなかなかないんよ。
行った時には必ず採って来るけーね。
ママ、それまで元気で待っててね。
私はいつもそうやって誤魔化している。
現在、夜の仕事をやめ、脳の手術後のリハビリを懸命に続けるママ。
「絶対じゃけーね。”ネッシーの涙”持ってきてもらうまで、わたしゃ死ねんよ。」
約束を果たせてない自分の不がいなさは重々わかっているが、
それを活力にして立ち上がろうとしてるママがいる限り、簡単に別の物で代用するわけにはいかないのだ。
そうして今日も”ネッシーの涙”を探して夜の街をうろついている私がいる。