第3話 再会
大学の卒業を翌年に控えたある日。
実家の電話が鳴った。
さ「もしもし」
「はい。佐藤です。」
私は佐藤明。
広島生まれの広島育ち。
おとめ座のA型。
神経質のナルシスト。そしてちょっぴりロマンチスト。
広島の公立高校を卒業し、東京の大学に2年もアタックしたけど
断られ、しがなく広島の山奥の大学に実家から通っていた。
さ 「さきです。覚えていますか?」
さきと言う名前の女性はほかに知らない。
「舟高の?さき?」
さ「そうよ。覚えててくれたんじゃ。元気?」
「おーなにしよるんやー。わしゃー元気よ。そっちは?」
広島県人ならたぶんみんなこう言うと思う。
ちなみにアメリカ人ならこういうだろう。
What ARE YOU DOING NOW?
I'M FINE THANK YOU AND YOU?
さ「元気よ。」
「おー、さきといえば、まきはどうしたん?おまえらいっつもつるんどったよの。」
※つるんどった:いつも一緒にいた
さきも変わった娘だが、まきも変わっていた。
頭半分刈り上げのパンク少女達。
色も青かったり緑だったりしてた。
さきは巨乳で、まきはぺったんこ。
さきは豪快で、まきは泣き虫。
さきはおおらかでまきは繊細。
さ「まきはね。親の反対押し切って東京の美大にいったんよ。」
まきの親は弁護士で、共産党から衆議院選挙によく立候補していた。
広島は共産党の地盤じゃないし、当選はきつい。
何度も立候補写真見たけど、当選確実のランプを見たことはない。
ひとしきり、数年間のギャップを埋めた後、さきがこういった。
さ「それがね。今おかあちゃんとちっちゃなお店をやっとるんよ。」
「何の店」
さ「飲み屋なんじゃけど、そんなに高うないけーよかったら今度遊びにきてね。」
今考えると、ただの営業電話だったのだろう。
この一本の電話で細かった糸がロープになった。