蝉物語 | GREAT WASTED

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ロック野郎なネットワークエンジニアが、何故かフィリピンで恋に落ち、もの凄い勢いで結婚し、その後半年にわたるフィリピン暮らしを経て、今再び嫁を引き連れて日本の土を踏みしめながら、働いちゃったり遊んじゃったり。の巻。

日本では、夏の風物詩というか代名詞に近い蝉ですが、南国フィリピンではそんなに居なかった気がする。




そういえば、あんまり記憶にないなぁ。。




それより巨大なゴキブリが道の真中に鎮座してたり、不気味な飛翔音と共に飛来したりしてた方がインパクトでかくて気にならなかっただけかな。






嫁が言うには、夜になると日本の蝉と同じように鳴く虫・・ヒグラシの事かな・・が居たけど、夜の森はモンスターが出るから、果たしてどんな虫が鳴いているのかを確かめたことはないとの事。






うちの周りは梨畑ばっかりだから、ちょっとした昆虫園になってるんだよね。だから、蝉の数とか半端じゃないし、この間なんか道歩いてたらミヤマクワガタが路上で行く手を遮っていて、その地べたにひれ伏しながらも全く従属していない態度に心意気を感じて、家まで連れて帰ってみかんの樹に案内してあげたんだけど、朝になったらやっぱりいなかった、、つーか、何やってんのオレ?






話は戻って蝉なんだけど、嫁曰く日本で初めて見るらしい。しかも、そのノイジーなサウンドは彼女の不快指数を増幅することに激しく効果があるらしく、本人はかなりムカついているのだが、一度、網戸にへばりついた姿を裏面のグロい角度から至近距離で見てしまったようで、巨大なゴキブリを笑いながら叩き潰すいつもの豪快さはどこへやら、ちょっぴり女の子なリアクションで恐る恐る覗き込んで、




...I don't like SEMI...




とか小声で呟いている。




そっかー、でも蝉嫌いだと、日本の夏はキビシーもんがあるよって事で、亭主は必死に蝉のイメージアップ大作戦ですよ。




まず、土の中に七年いて、地上で生きられるのはたったの一週間なんだという、小学生の頃に誰もが一度は大人から聞かされたちょっと哀しい話で、蝉の吐き出すやけくそなノイズへの理解を促す。




あれだよね。近所のグレちゃった子のバイクの直管がうるさいと朝から文句いう客人に、




「いや、あの子は本当はいい奴なんだけど、お父さんが亡くなっちゃってから荒れててさ。昔は素直でかわいい子だったんだよ」




とか、説明するみたいな感じですかね。ま、土の中で何やってんのか知らないから、いい奴だったのかどうかは今ひとつ定かじゃないんだけど。




そんで散歩がてら近所の梨畑にくっついている抜け殻を手にとって、成虫になる前はこんな姿なんだよー、なんつって、おいおい、オイラはナショナルジオグラフィックのパーソナリティーのワニの口に頭突っ込んで遊んでる愉快なオッサンじゃないんだよ、とか思いながらも、蝉の生態を知ってる限り説明する。




人の嫌悪感って言うのは、理解できないものに対して向けられる。らしい。心理学的には。。だから、生態系や行動パターンが理解できると、一般的に嫌悪感っていうものは薄れていくもんらしい。よく知らんけど。




あとは、あれだ。たまにオシッコは引っ掛けるけど毒は無いんだよ、とか、こういう現実的なポイントが結構大事だったりするよね。




案の定、毒が無いという話に激しく食いつき何度も聞き返す嫁。。。そっかー、、あー、裏面から見たんだよね。あの顔の中央から長く伸びた管が何やら毒々しいイマジネーションを描き立ててしまったわけですか。納得。




その後、道端にかなり衰弱したけっこう大きな蜂を発見。なんの躊躇もなくつま先でつんつん突付いて笑う嫁。いやいや、奥さん。明らかにそっちの方が危険ですから。




しかも、嫁の表情を読み取ると、明らかにチキチキ蜂の巣探して蜂蜜ゲット大作戦が始まりつつある感じ。いやいや、無理ですから。





と、思ってたらやっぱり





「この近所で誰か蜂蜜つくってるの?」





との質問が。当然、そっけなく、かつ、すかさず全否定。 足早に立ち去ってスーパーに行く。








ちなみに僕のオフの時のバカっぷりは小中学生レベルなので、電車の中でつり革にぶら下がったり、スーパーでカートに乗ってみたり、生垣の葉っぱをちぎってみたり、全く意味もなく思いついたことは一通りやってみるんだけど、嫁は乗ってくる時と乗ってこない時があるんだよね。





基本的に人目を気にしているみたいで、スーパーのカートに乗っかってガーッとかやってると、すげークールにたしなめられたりする。今日も怒られますた。





で、高架下の公園で、仰向けになってスローモーになっている衰弱した蝉を発見。一応うつ伏せに直してあげたけど、すでに噂を聞きつけた蟻が集まって来てて、もう長くはない感じ。その様子を見下ろしながら、嫁はやっとこの奇妙な生き物が、その汚れたステンドグラスのような羽の下に背負った運命の哀しさを悟ったみたい。





多分もうすぐ死んじゃうねー、と言いながら、道すがら二人で生垣の葉っぱをむしりながら帰りましたとさ。