※この記事はネタバレを含みます※

 

●あらすじ

 

クリスタルら12人の男女が、どこかも分からない広大な森の中で目を覚ます。すると突然、銃声が鳴り響き、何者かに命を狙われていることを知った彼らは逃げ惑う。
彼らは、セレブが娯楽目的で一般市民を狩る“マナーゲート”と呼ばれる人間狩りゲームのターゲットにされたのだ。

 

 

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●『 ザ・ハント 』の感想(※ネタバレ注意)

 

結論から言うと、”想像していたものと大きく違っていた”。

 

 

男女複数人が、金持ちたちの狩りの標的として、一つの場所に集められる。

金持ちの道楽に巻き込まれた人たち。果たして助かることができるのか……。

 

 

といった内容のよくある映画かと思いきや、そのストーリーは前半20分ほどで終了してしまう。

 

 

実は、狩りの標的として連れて来られた人の中に、最強の女性がいた!

その女性は狩りのステージから一人脱出し、金持ちたちの復讐を開始する……。

 

 

といった内容のよくある映画にシフトチェンジしたかと思いきや、そのストーリーも40分ほどで終了してしまう。

では、実際のところ、『ザ・ハント』はどういう内容のストーリーなのか?というと、以下の通りである。

 

 

金持ちたちはひどく偏った思想を持っており、自らと同じ思想以外の者を差別的に見ていた。

ある日、同じ思想同士のグループでの過激なチャットの内容が流出し、炎上。

その内容とは、”異なる思想の人たちを集めて人間狩りしたら楽しそう”といった内容であった。

その影響で、グループ内でリーダー的なポジションにあったアシーナという女性が、会社をクビになってしまう。

アシーナはそれを根に持ち、怒る。冗談で言ったことなのに、どうしてこんなことになるのか。

アシーナはグループの人たちを巻き込み、計画を立てる。

その計画とは、”異なる思想の人たちを集めて人間狩り”であった……。

 

 

つまり、『ザ・ハント』は

よくある、殺人ゲームサスペンススリラーではなく。

よくある、チート主人公アクションスリラーでもなく。

それらを逆手に取った、アンチテーゼの作品なのである。

 

しかしながら、私は本作品を見て、”よくある映画”のアンチテーゼ作品とは思わなかった。

”よくある映画”のアンチテーゼ作品は様々存在するが、『ザ・ハント』はそれらとはまた一風変わっていた。


まず、『ザ・ハント』にはアメリカ圏の社会風刺、及びブラックユーモアなネタが多い。

そのため、アメリカ事情に詳しくない者にとっては、頻出する用語がわからず、物語についていけなくなってしまう。

だいたいのニュアンスを感じることはできても、それを本作品の物語で繰り広げる意図がよくわからなかった。

 

また、SNSの炎上といった今時の社会問題を取り入れている点についても、上記と同じような印象を感じた。

そもそも、殺人ゲーム系の作品は、現実世界ではあり得ないものを見ることができるという、非日常感を得るために

見ている人が多いように思う。

にも関わらず、政治や社会問題といった、現実世界の事柄を持ってきているので、気持ちがまったく追いつかない。

 

では、最初から、”『ザ・ハント』はブラックユーモアあふれる映画である”とわかっていればよかったのかというと、そうでもない。

 

殺人ゲーム作品のアンチテーゼ、チート主人公作品のアンチテーゼ、

社会風刺、政治、SNS、人種差別、思想、主義

アクションバトル

これらの要素がうまく嚙み合っておらず、ちぐはぐで、全ての要素が薄く、ぼんやりしている。

 

伝えたいこと。描きたいこと。やりたいこと。魅せたいこと。
これら全てがぐちゃぐちゃに混ざり合っている印象を受けた。

好きな食べ物を全部ミックスした結果、美味しくも不味くもないものが出来上がったような感覚だ。

 

 

残念ながら私の口には合わなかった映画ではあったが、もちろん良かった点もある。

 

まず、序盤の殺人ゲーム作品のアンチテーゼ展開はとてもよかった。

見るからに伏線っぽい要素が、実は全く何の伏線でもなかったり、

明らかに主人公っぽい人が、一番最初に殺されてしまったり、

次に主人公っぽかった人が、あっけなく殺されてしまったりと、よくある展開を綺麗に吹き飛ばす様子に魅力を感じた。

 

また、チート主人公の無双シーンも、見ていて迫力があり、面白かった。

主人公の女性がクールビューティーでとても格好よく、スタイリッシュに人間を殺していく姿には目を奪われた。

 

本作品を社会風刺やブラックユーモアとして見るのであれば、理解が追い付かない部分が出てくるが、

クールビューティー美女が金持ちをバンバン殺していくアクション映画として、脳みそからっぽで見るのであれば、

普通に面白い作品であると評価されるかもしれない。

90分という手軽に見れる長さなので、チート主人公のスタイリッシュアクションが見たい人にはうってつけの作品であるといえる。

 

 

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●今回レビューした映画の詳細

題名:ザ・ハント

監督:クレイグ・ゾベル

2019年公開

 

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