※この記事はネタバレを含みます※

 

●あらすじ

 

目が覚めると謎の立方体(CUBE)に捕らえられていた数人の男女。誰が何の目的で閉じ込めたのかも分からないまま、彼らは死のトラップが張り巡らされたこの立方体からの脱出を試みる。

 

 

 

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●『 CUBE 』の感想(※ネタバレ注意)

 

男女複数人が見知らぬ場所で目を覚まし、即死トラップを回避しつつ脱出を試みる……。

 

現代となっては、上記のような設定の作品はありふれている。

しかも、こういった筋書きの映画といえば、どちらかというとB級映画に分類されてしまうだろう。

確かに『CUBE』は、B級映画にありがち設定ではあるし、B級映画にありがちなグロ演出が多い。

 

しかしながら『CUBE』には、ただただB級映画と評して片づけてしまうにはもったいないポテンシャルを持っている。

 

まず着目すべき点は、『CUBE』が公開されたのが1997年であるという点だ。

1997年ともなれば、このような密室サスペンススリラーの作品は多くないことがうかがえる。

そんな中で、今となってはポピュラーな設定、世界観の礎を作り出しているということに魅力を感じた。

 

また、登場人物のキャラクター性も”よくある”性格の人を用意しているという点がすごい。

知能枠、医者枠はもちろん、正義感強すぎパワータイプ、常識離れしているタイプなど…

人間模様が一転二転と展開していく様子は見応えがあり、こういったキャラクター性の選出も、現代の礎になっていると感じた。

 

密室サスペンススリラーの元祖的立ち位置であることを加味した魅力について述べたが、

演出や世界観の設定などについて、他にはないオリジナリティを持っているということも魅力の一つである。

 

低予算で制作されたものでありながら、CUBE内の即死トラップは多岐にわたり、グロテスクなものが多い。

特に、音を立てれば部屋の中に無数の針が出てくるトラップのシーンでは、『CUBE』の中で音というものが一切なくなる。

こちらも音を立ててはいけないような空気を感じ、視聴者の緊張感がドッと増す。そして、目が離せなくなる。

 

音を立ててはいけない系の映画は多数あるが、『CUBE』のこのシーンはダントツで緊張感が増した。

映画館という音が一切ない空間でこのシーンを観たら、きっと忘れられない経験になるだろうと思った。

映画という媒体を最大限に活かした、最高の演出だと思う。

 

そして、CUBE内に散りばめられた”数字”の謎や、CUBEの仕組み、男女複数人が集められた目的について。

 

”数字”の謎については、数学分野に詳しくないと理解が難しいかもしれないが、納得のできる結果となった。

謎の解明が作中で、尚且つ長い時間をかけて解明していく流れが、試行錯誤している様子をうかがえてよかった。

 

また、閉じ込められたメンバーの中に、CUBEの設計者がいるという設定もなかなか興味深く、面白かった。

ただ、その設計者は、何のためにどういった仕組みでCUBEが動いているのは知らない。

受注されて外観を作っただけ。という設定が、なんとも現実的で世知辛く、ユニークさを感じた。

 

集められた目的についても、上記同様に、現実的な世知辛さを感じた。

それは、”金持ちの道楽”で作ったものが、完全に手に余り、せっかく作ったものだから人間を入れようというもの。

つまりCUBEは、人間の惰性で動いていたのだ。

 

密室サスペンススリラーにありがちな”金持ちの道楽”ではあるものの、観察や観戦をしているわけではない。

ただ単に、”作ったものが手に余ったから”という理由が、人間らしさ全開でとても良かった。

上記の理由に納得ができない視聴者もいるであろう。

しかし、私は納得ができるかできないかよりも、人間臭い理由に魅力を感じたので、むしろプラスの印象を受けた。

 

理由や目的に関しては、あくまでも閉じ込められたメンバーの推測であるため、実際のところ本当の目的は不明である。

 

上映時間も90分なので、気軽に視聴することができるのも魅力の一つだ。

グロテスクな演出に抵抗のない人であれば、ぜひ一生に一度は見てほしい映画である。

 

2021年10月に日本版が公開されるくらいなので、人気は衰えておらず、今でもファンが多いのも納得ができる作品である。

ただ、日本版は酷評されているようなので、見るのであれば原作の海外版の視聴をオススメする。

 

 

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●今回レビューした映画の詳細

題名:CUBE

監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ

1997年公開

 

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