※この記事はネタバレを含みます※

 

●あらすじ

 

1986年、少女アデレードは、両親と訪れたサンタクルーズにある遊園地のミラーハウスに迷い込み、
そこで自分にそっくりな少女に遭遇。それが強烈なトラウマとなり失語症となってしまう。
そして現代、成長したアデレードは、家族とともに夏休みを過ごすため、因縁深いサンタクルーズの家を訪れる。
そこで不気味な偶然に見舞われ、過去のトラウマがフラッシュバックし、アデレードは家族の身に恐ろしい事が起こるという妄想を強めていく。
その夜、家の前に自分達一家とそっくりな“わたしたち"がやってくる・・・。

 

 

 

 

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●『 Us(アス) 』を観た感想(※ネタバレ注意)

 

今まで見たホラー映画とはまた毛色が異なるので新鮮で面白かった。また、グロ要素やビックリ要素はあるがストーリーや敵対相手がわかりやすい。そして、邦画ホラー特有のやたら強い主人公たちのおかげで、ホラーに不慣れな人でも楽しめる作品だと感じた。
しかし、主人公の家族だけが、同じ人間と対立するのかと思っていたが、主人公の友達家族や町の人間たち全員にクローンが存在するので、思っていた展開と違った点は驚いた。


クローンが生まれた理由も、実験体として生成され残酷な扱いを受けていたが用済みになり地下に放置された。という至ってわかりやすい理由なので、謎やツッコミどころは多少残るものの納得のいく形に消化されている。また、影が生まれる場所では本体たちと同じ動きをする。というクローンの弱点もわかりやすいものとなっている。
映画は2時間近くで風呂敷を広げて畳まなければならないので、変に小難しい内容よりも、視聴者が理解しやすい展開に持っていったのは、本作に関しては英断だったように思う。主人公の過去からストーリーが始まるという点も、時系列が無駄にごちゃごちゃしないので、全体の流れがスッキリとまとまっている。
また、主人公の友達家族が自分たちのクローンに惨殺される場面がある。この場面により、主人公家族とはまた違った一家の結末を見ることができるため、とても良い場面転換であったように思う。主人公家族はクローンから逃走することに成功したので、成功しないパターンも見てみたいと思うのが人間の常である。その感情を友達家族で消化できるので、一口で二度美味しい。友達家族の母親が、死にかけの状態でスマートスピーカー に「警察に電話して」と懇願るものの、スマートスピーカー はうまく聞き取れずに「fuckin police」という曲を流し始める。この一連の流れは凄惨な状況にも関わらず、クスリと笑える演出も展開される。これも本作の魅力の一つだろう。

ただ、本作に関して一つだけ言いたいことがある。”自分と同じ人間が現れた“という他にはない特徴を持っているのに、それを利用したトリックが少ないことである。
物語の大元であり最重要トリックの、”実は主人公の母親は小さい頃からクローンと入れ替わっていた“という展開は確かに衝撃の結末であった。しかし、入れ替わりを利用しているのはこの結末だけである。
主人公家族の逃走先が友達家族の家で、そこで本人たちだと主人公が勘違いするといった一悶着も、入れ替わりトリックと考えても良いかもしれない。しかし、そのくらいである。せっかく世界観にクローンという存在があるので、それにちなんだ展開があってもいいように思った。
ただ、無理やりにでも入れて欲しかったかと言われるとそうではない。おそらく制作側も考え抜いてこのような作品に仕上げたのだろう。入れ替わりトリックによってスッキリまとまっている本作に綻びが生まれるといった懸念があるということは視聴していればわかる。

江戸川乱歩の黒蜥蜴やパノラマ島奇譚のように、根本に入れ替わりトリックというものがあり、そこから派生して物語が進むような内容ではない。あくまで本作は自分との対立が主軸で、ホラー描写を交えながら、いかにしてドッペルゲンガーに挑むのかがメインなので、上記の私の気になった点は、本作に関しては甚だ見当違いな指摘になるのかもしれない。

 

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●今回レビューした映画の詳細

題名:Us(アス)

監督:ジョーダン・ピール

2019年公開

 

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