※この記事はネタバレを含みます※

 

●あらすじ

全員失業中。日の光も、電波も弱い“半地下住宅”で暮らす貧しいキム一家。大学受験に失敗し続けている長男ギウは、ある理由からエリート大学生の友達に家庭教師の仕事を紹介される。身分を偽り訪れた先は、IT企業を経営するパク社長一家が暮らす“高台の大豪邸”。思いもよらぬ高給の“就職先”を見つけたギウは、続けて美術家庭教師として妹ギジョンを紹介する。徐々に“パラサイト”していくキム一家。しかし、彼らが辿り着く先には、誰にも想像し得ない衝撃の光景が待ち構えていた―。ツイストを効かせながら猛烈に加速していく100%予測不能な展開。喜怒哀楽、全ての感情が揺さぶられる、唯一無二の最高傑作が誕生した!

 

 

 

 

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●『 パラサイト 半地下の家族 』の内容(※ネタバレ注意)

 


上の階からのWi-Fiを使っていたり、ピザの箱折りの仕事をしていたりと、貧乏な半地下の生活を送っていたキム一家。

ある日、息子ギウの友達が大きな石を持って来た。この石は金運が訪れる石で、貴重だという。そして、仕事がないという愚痴を言うギウに対して、ギウの友達は金持ち一家であるパク家の娘の家庭教師を頼んだ。
いわく、元々の家庭教師が辞めたのでその空きが必要だという。また、ギウの友達はその金持ち一家の娘であるパク・ダヘを狙っているが留学があるため、その期間、他の虫が寄り付かないようにとギウに任せる魂胆であった。
ギウは4回ほど大学を受けており学力はあるためその頼みを承諾し、ギウの妹であるギジョンに在学証明書の偽造をお願いした。

ギジョンは美大生を目指していた過去があり、偽造のためのスキルはお手の物だった。


いざ金持ち一家のパク家を訪れると、美人で若い母親のヨンギョが、以前の家庭教師以下なら辞めさせると言う。

ヨンギョは自らギウの指導の様子を見に娘ダヘの部屋で参観している。

緊張するギウだが、ダヘが問題を解いている様子から問題のミスに気付くなど、観察眼が良かったことが功を制し、見事ヨンギョに気に入られた。
するとギウは、ヨンギョが自身の息子であるダソンの絵を上達させたいということを聞く。

ギウはこれはチャンスと言わんばかりに、妹のギジョンを知り合いの美術の先生として偽名で紹介した。


翌日、娘のダヘは、弟のダソンは天才のフリをしていて、母親と父親に構われたいだけなのだと、ギウに愚痴を言う。そして、ギウが連れて来た美術の先生(妹のギジョン)は恋人なのかと聞く。

どのような意図でそれを尋ねたのだろう。そう考えているギウに対し、顔を近づけるダヘ。二人はしばらく見つめあった後、キスをした。
ダソンの授業後、ギジョンはヨンギョに「絵に心理的な特徴がある」と言う。そして、「一年前に何かがあったのでは?」と。

ヨンギョはその通りだと言わんばかりに、とても大きなリアクションで反応した。

するとギジョンはダソンの精神カウンセラーを兼ねるので給与を高額にしてほしいと交渉。ヨンギョはすぐさま承諾した。

その日の夜、パク家専属の運転手は、ギジョンを車で駅まで送迎していた。その最中、ギジョンはおもむろにパンツを脱ぎだし、そのパンツを社内に隠した。
翌日、パク家の父親であるドンイクが、社内に乗り込む際に女性もののパンツを発見する。そして、運転手が車の中で女性とセックスをしたと勘違いする。しかし、パンツを残すのは明らかに変であり、ドラッグでもやっていたのではないかと、夫婦は推測する。
そして、その日の帰り道、ヨンギョは運転手には辞めてもらうという旨をギジョンに伝えた。

キム一家が食事中、ギジョンが父親のギテクに、ベンツを運転したことがあるかどうか等を尋ねていた。ギジョンは父親を偽造し、運転手として雇わせる魂胆であった。
そして、パク一家専属の家政婦ムングァンは、元々住んでいた人のときから雇われており、なおかつその家政婦は桃アレルギーだという情報を得ていた。
ダヘが「家では桃はNGとなっている」と、ギウに言ったことがわかった原因だった。

 

家政婦のムングァンに、桃の皮に付いた毛を振り掛けるギウとギジョン。

別の日、病院に行った家政婦をギテクが尾行し、こっそり写真を撮った。
既に運転手として雇われていたギテクは運転中、ヨンギョに「病院で家政婦のムングァンさんを見かけた。大きな声で電話しており、結核という単語が聞こえてしまった」と言う。

ヨンギョは今まで結核患者が我が家に居たという事実に堪えられない様子で、とても取り乱していた。

また別の日、ムングァンの咳が酷い姿を見かけるヨンギョ。ギテクは捨てられたティッシュにケチャップを仕込み、それをヨンギョに見せた。ヨンギョはムングァンが結核だと完全に信じてしまい、その場で気絶し倒れてしまった。
 

父親のドンイクが、運転しているギテクに、惜しい家政婦を無くしたと訴える。

ギテクは、ザ・ケアという業者を紹介する。会員制の家政婦やキーパーの派遣会社のようなもので、選ばれた人しか所属していないと言う。

ザ・ケアはキム一家が捏造した架空の業者で、電話応対はギジョンがした。そして、自分の妻であるチュンスクを偽造し、新しい家政婦として雇わせた。
別の日に息子のダソンに、家政婦や先生、運転手から全員同じ匂いがすると言われる。
洗剤や石鹸を個別に変えることを考えるが、このまま別の大きい家に住めれば問題ないと話は流される。

 

ダソンの誕生日にキャンプに出かけて行ったパク一家。彼らが居ぬ間に、キム一家は金持ちの家で思う存分満喫している。お酒もお風呂もやりたい放題で、人には見せられないような状態だった。
ギウは娘のダヘと脈があることを確信している様子。また、ヨンギョがこのような演技で騙されるような人でよかったなど、パク一家を馬鹿にしたり、取らぬ狸の皮算用をしたりするキム一家。
そんな中、突然チャイムが鳴る。

インターフォンを確認すると、元家政婦であるムングァンが家に来ていた。しかし、以前の様子とはだいぶ異なる。常時アヘアヘと笑っており、気味が悪かった。
この家の地下に忘れ物をしたと言うムングァン。入れさせないわけにもいかず、仕方なく中に誘導するチュンスク。しかし、何を忘れてきたのか尋ねても、ずっと笑っていて気味が悪いままであった。

気になってついていくチュンスクだったが、ムングァンは地下の食器棚を無理やり押していた。チュンスクも手伝うことになり食器棚を移動させると、隠し扉が現れた。

そして扉の先には大きな通路があり、そこにはなんとムングァンの夫であるグンセという人物が暮らしていた。

そう、ムングァン夫婦はパク家に寄生していたのだ。


キャンプに出ている時期を見計らって、監視カメラも切って来たというムングァン。以前この家を使っていた人が地下を作り、家政婦は今の家族にそれを言わずここに暮らしているという。
チュンスクと一緒にいると怪しまれるため隠れていたギテクたち。しかし、地下の階段から足を滑らせ落ちてしまい、ムングァンに気づかれてしまう。

そして落下の痛みにより思わず息子のギウがギテクを「お父さん」と呼んでしまうところまでを動画に撮られ、キム一家はムングァン夫婦に脅されてしまう。一家を詐欺家族だと怒り、一気に形勢が逆転してしまった。
リビングに出てムングァンが「そこから動けばこの動画をパク家族に送信する」と言いながら、途中だった酒盛りを横取りし夫婦で満喫していた。しかしそこで黙っているキム一家ではなく、彼らとムングァン夫婦による取っ組み合いの喧嘩になってしまう。

すると突然、家の電話が鳴る。

電話の主は母親のヨンギョで、雨が降ってきたのですぐ帰ると言う。そしてもう家の近くまで来ており、後8分ほどで着くと。

やりたい放題の部屋を急いで片付けるギジョン。

ヨンギョがダソンのために作って欲しいと言ったジャージャー麺を作るチュンスク。

こっそり盗んできたダヘの日記を元々あった場所に仕舞うダヘ。

ムングァン夫婦を先ほどの地下に片付けるギテク。

一家の協力により家のなかの外見は何事もなかったかのようになった。


ダソンがいらないと言ったので、代わりにジャージャー麺を食べていたヨンギョが、一年前に息子が幽霊を見ているとチュンスクに伝えていた。

一方、ムングァン夫婦と共に地下に隠れているギテクは、階段から無理やり落としたため頭を打ち気絶しているムングァンを放置し、ムングァンの夫を紐でグルグル巻きにする。しかし夫のグンゼは身体を縛られたまま、電気のスイッチを頭で押し始める。

以前、パク一家の息子のダソンとバッタリ遭遇してしまったが幽霊だと認識された。

そして、電気でモールス信号を送り出し、ダソンと簡単なやり取りをしているとグンセは言い始めた。

ギテクは彼を危険だと思い、動けないように彼を柱に縛り付けた。


ギジョンはリビングの机の下

ギウはダヘのベッドの下

ギテクは地下に隠れている状態。
パク一家の部屋の状況を見て、スパイのようにそろりそろりと逃げ出し始める(チュンスクを除く)キム一家。しかし、急に夫婦と息子がリビングに降りて来たため、テーブルとソファの下で隠れることになる。

ダソンが土砂降りのなか広い庭で一人キャンプをしたいと言い出したため、ダソンの様子を見るためソファで寝ることになったパク夫婦。
すると夫婦は淫乱な雰囲気になり、ソファの上でお互いの性器や胸などを触り始めた。
しばらくすると、夫婦はそのまま寝てしまい、その間にパク一家は脱出に成功した。


地下の二人を置き去りにしたことを心配し怒るギジョン。しかし、ギテクには計画があると言う。

我が家に帰ると、土砂降りによる洪水で家が半分水に浸かっている状態だった。

キム一家は洪水による避難のため体育館のような場所で一泊することになる。
皆が布団で寝始めると、ギウが「全部自分のせいだ」と家族に言い、自責の念にかられている。

そして避難の際に持ってきた、友達からもらった石を見つめ、何かを決意する表情をしていた。


翌日、キム家族の事情など知らないパク家族が、息子ダソンの誕生日パーティを改めて行うから来て欲しいと呼び出す。それぞれが別のタイミングで向かうと、大勢の金持ち風の人たちが会場を訪れていた。
ギウは、ダソンの誕生日パーティーに興味がなさそうなダヘと、ダヘの部屋である程度いちゃいちゃした後、おもむろに石を取り出す。

そして元家政婦のムングァン夫婦を殺す目的で、恐る恐る地下へ向かう。

しかし、覚悟が足りないことが身体に現れてしまったのか、夫のグンセに返り討ちにあう。

ムングァンは昨日階段から落とされて頭を打ったせいで、既に亡くなっているようだった。

グンセはキム一家への復讐を覚悟したようで、身体も既にそのように出来あがっていた。

地下から地上へ逃げる途中で、自分が持ってきた石で頭を打たれ倒れるギウ。

そしてグンセはキッチンで包丁を取り出し、庭でのパーティーへ足を向ける。
周りの人たちが円を作って盛り上がり、その円の真ん中でダソンにケーキを渡そうとするギジョン。するとその瞬間、パーティーの後ろで様子を伺っていたグンセがおもむろに円の中心に走り出し、ギジョンの胸を刺す。ダソンはそれを見て気絶し、その場に倒れてしまった。
刺されたギジョンを人質に、彼女の母親であるチュンスクを呼び出すグンセ。
しかし、チュンスクはグンセに取っ組みかかり、お互いに刃物を持ちながら揉み合いになるという危険な状態になる。そんな中、父親のドンイクがギテクに車の鍵を渡すように叫ぶ。

グンセは取っ組み合いの果てに包丁を投げ出してしまい、そこでチュンスクが具材が刺さったままのBBQの串でグンセの横腹を刺し、彼はその場に倒れこんだ。

実の娘が刺され、妻が危険な状態になってることから、大きく動揺してしまったギテク。

そしてギテクは、グンセから取り上げた包丁で、車の鍵を渡すように訴えていたドンイクの胸を刺した。全ての罪を、自分に着せることにしたのだ。
ドンイクが倒れたところを見た妻のヨンギョは気絶。
ギテクはパーティー会場の庭から外へ逃げ出し、車庫入れから再び家の中に侵入し、パク家の地下に逃げ込んだ。

逃げ込む最中、阿鼻叫喚の会場でパク家の娘であるダヘが、ボロボロのギウを背負って避難している様子を見ることができた。


ギウが目を覚ますと、そこは病院だった。何故か笑いが止まらなくなっている。

脳手術の後遺症らしいと、胡散臭い弁護士と胡散臭い医者が言っていた。

ギウとチュンスクは二人きりで、元々住んでいた半地下で再び暮らしており、妹のギジョンはギウが目を覚ます前に亡くなってしまっていた。
元パク家の地下に父親がいることを知る由もないギウは退院後、山から元パク家を観察するのが日課になっていた。毎日家の様子を観察していると、家の中の電気が一つ、チカチカと点灯していることを見つける。そして、これはモールス信号だということがわかった。
内容は父親のギテクからで、現在ここで暮らしていること。今のこの家の住居主はドイツ人で、出張が多いため食事はとれているといういうことを伝えていた。
ギウは返事のモールス信号を作成する。

「しっかり働いて元パク家を買い取り、地下にいるお父さんを絶対に迎えに行く」

しかし、チラシ配り程度ではお金が貯まる気配もない。そして、そのモースル信号を送る手段もない状態だった。

そしてその手紙は、ずっとギテクに渡されることもないまま、物語は終局を迎える。

 

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●『 パラサイト 半地下の家族 』を観た感想(※ネタバレ注意)

 

韓国映画というものを初めて体験したが、本作に関しては舞台や役者が韓国であるからこそ生まれた意味や雰囲気が多くを占めていたように思う。そもそも“半地下”は韓国特有の立場であり、他の国で表現するには難しい世界観だったのではないだろうか。


本作は、ジャンルでいえばホラー/スリラーという立ち位置ではあるものの、終始どこかコメディのように感じる。

もちろん、パク家に見つかるか見つからないかといった、緊縛するシーンが多く、少し前に頻発していた『見つかったら死ぬ』系のホラー映画に似た傾向ではある。また、終盤でグンセがキム家を惨殺しにかかるシーンは、いわずもがなショッキングでスリラーではある。

しかし、ギジョンが胸を刺されて出血するグロテスクなシーンで、近くにいたダソンが白目を剥いて倒れたりなど、コメディな要素を意図的に少し加えているのがわかる。序盤のパク一家が何も気づいていない様子や、キム家のガバガバな計画なども相まって、笑いとして昇華する視聴者がいてもなんらおかしくはないのである。


無理やりなコメディの付与は余計であったりすることも多いが、本作の場合はそのような印象はない。むしろ、緊張する場面や残酷な場面で視聴者が多少感じるストレスが緩和されることで、スナック菓子のような手軽さを生んでいる。

映画『CAVIN』の終盤シーンのように、「残虐だけど何度でも見たい」と思えるのである。展開が早めで物語がサクサク進むことも含めて、暗いテーマで残酷なシーンもあるのに重くなく何度でも見れるという、他にはあまりないような特徴が、本作の魅力なのではないだろうか。

もちろん、ホラー映画は重くてナンボという人もいるだろう。そのような感覚を持つ人には、本作は合わないかもしれない。

本作がB級映画だという意図は一切ないが、おそらく、B級ホラー映画を楽しめる人には響く作品ではないだろうか。


また、描写の構図が見事である点も特筆したい。

パク一家が急に帰ってきて、家の中で身を潜めざるを得ない場面で、パク夫婦がソファの上、キム一家がソファの下にいる様子を横から映すことで、上下の立場であるという対比を表現していたり、キム一家の帰路で長い階段を下る様子も、横から映すことで上の暮らしから下の暮らしへ下っていくことの表現となっている。

終盤でグンセがパーティの場で佇んでいる場面も、パーティの人々は綺麗な姿で白い召し物を着飾っているのに対して、グンセは汚れた姿で、全身真っ黒な服を着ている。それを俯瞰して映すことで、視聴者に”明らかに異常な光景である”ということを訴えているようにも思える。

パラサイトはアカデミー賞を獲得しているので、これから見るという人はハードルを高く設定している人もいるかもしれない。かく言う私も、本当に面白いのかな?という不安はあった。前述した感想や内容で少しでも面白そう!と思ったり、見るかどうか迷っていたら、一見の価値はある作品なので、是非見て欲しい。グロテスクなシーンはあるが、スリラーが苦手な人でも楽しめるスリラー映画だと思う。

 

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●今回レビューした映画の詳細

 

題名:パラサイト 半地下の家族

監督:ポン・ジュノ

2019年公開

 

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