15時頃に会場着、既にTシャツは売り切れ…バックに「VISUAL」と爪跡マークが入っているデザインが一周回って欲しかったので残念。いったん図書館に行って、時間をつぶして会場へ。席を空けているんだろうなと思ったら隣もびっちりでフルキャパで入れているようだった。

冒頭、“いかにもヴィジュアル系っぽい感じの西洋の映像”(ただし中世ヨーロッパではなく古代ローマの闘技場のような感じ)から、きょうのすけ、ユエ、reikiと一人ずつ入ってきてそれぞれが音を出していき、最後に来夢が「VISUAL」と今回のライブタイトルのロゴがプリントされたでっかい黒い旗を持って出てくる、という入場からの「おしまい」、完璧すぎてしびれながらも「ステロイド」「傷痕」と最初から殺す気まんまんの爆アゲ曲連発!毎度のようだけど、キズのライブの脳に直接電流が流れるようなアゲ感はほんとすごい。こんなにテンションが上がることは人生で他に味わうことはできない…食欲と性欲が強烈に満たされる状況、例えば玉城ティナと新垣結衣に挟まれて両方から松阪牛と伊勢海老を食べさせていただくという状況になったとしてもこの興奮と快感は味わえないと思う(例えがひどすぎて邪魔をする例)。10月からのライダースシリーズも終わり、裸に革ジャンで動きが制限されていたreikiも存分にギターをぶん回していてこれまたアガる…キズのヴィジュアルは毎回良いだけど、今回の来夢は特にかっこいい。

爆アゲ曲3連発の後、さらに「ヒューマンエラー」「蛙」「豚」と盛り上がる曲を畳みかける。「ヒューマンエラー」はPVでも使われていた観覧車やPVではちゃんと映っていなかったように思う廃校の風景などがスクリーンに映されていてかっこよかった。「蛙」でおたまじゃくしが出てきたのはちょっと面白かった(確か「蛙」だけはPVの監督が違うと聞いたような気がするけどどうなんだっけ、今手元で確認できず…)。「豚」ではreikiがストレートに「あけおめ」と言ってた。改めて並びを見ると「ヒューマンエラー」「蛙」「豚」ってすごいな、人間のミスからの動物大集合。

 

来夢がアコギのボディを叩いてリズムを取り出してからの「罪」。ミドルテンポだけど静と動のメリハリがあるのでやっぱりライブでは迫力がある。音源で聴いているとふとこれはギャグなのでは…と思ってしまう「そうかこれが地雷系男子」もライブで観ているとつい引き込まれた。続いての「銃声」を観ていて、映像に歌詞がついていたこともあって、キズは「自分/セカイ」という閉じたセカイ系的な現実逃避礼賛みたいにならずに社会(セカイ系と区別するために藤津亮太『アニメの輪郭』で使われていた)と対峙しているところが信頼できるんだよな、と改めて思った。「銃声」の映像の最後が美しい夜景で終わるのが印象的なんですが、その一つ一つの明かりは人が灯している明かりであり、抽象的なものではなくそこには社会があり、その社会はどうにも生きづらいものであるけれどもたまに美しく見えるということを思った…

などとしんみりしていたら、そこから「平成」に入る構えになってまたも爆アゲに。「平成」の爆発力は毎度のことながらすごい。

reikiのアルペジオからの「0」、バックの映像の亀裂の入った道路で廃車がずらっと並んでいるひんやりした絵面がかっこいい(カメラのレンズが映るのもいい)。PVとは関係がないのかと思いきや最後の「救いはない」のところでロシアンルーレットで死ぬ直前の人の映像がバシっと使われているのも最高。「0」からの「十五」は唐突過ぎて最初何だこれ?と思ったけどやっぱりアガる。そして「地獄」、サビでPVでも引きの画で使われていた地獄の風景が映るんだけど、曲が進むごとにしゃれこうべやら死体やらが増えていくところがしびれる。ラスサビ前の「一つ二つ三つ息を数えあと何回繰り返せば楽になるのか」は正にこういうことを考えてしまうような状況に追い込まれたことがあるのでしみる…

 

そして念願の「ストロベリー・ブルー」!大麻を意味するWEEDやら謎の数字、ネオンの円と「罰」というネオンサインなど、レトロ感・シティポップ感すら漂うちゃんと2022年な感じの映像をバックに初めてライブで聴く「ストロベリー・ブルー」、めちゃくちゃかっこよかった。激しい曲で暴れるのが楽しい、というのもあるしキズはその激しさの度合いが突き抜けてるんだけど、そうした必殺の曲がたくさんある中で「ストロベリー・ブルー」が今は一番かっこいいと思う。ライブではサビをウィスパーではなく歌い上げていた。

PVではラスト「さあ行こうあの場所へ」でパッとカットが切り替わって屋上の縁にいた妊婦さんが消えているというぞっとする展開が印象的だった最後のところでいったん演奏を止め、舞い落ちる紙吹雪の中で「さあ行こうあの場所へ 約束のない約束の木へ」を繰り返し、最後は冒頭の入場時に奏でていたマーチングバンドのようなリズムになって本編終了。あまりに物騒かっこいいPVなのでこの曲でこんな感動の演出なのか…と思ったけど、来夢はツイキャスで“「さあ行こうあの場所へ~」は来世でも約束がなくてもまた会って音を楽しもうぜみたいなことを言いたかった”みたいなことを言っていた記憶があるので、この演出は来夢的には当然のものなんだろうな。とにかくめちゃかっこよかったので早くまたライブで聴きたい。

 

アンコールはまず「アナグラ」、ベティブープが幽霊から逃げるアニメが映像に使われていていい感じだった。音源だとちょっと面白い“ワンツーワンツー”もちゃんとやってた。「Mr. BIG MONSTER」は去年のツアーで個人的に毎回楽しみにしていた殺人チューンなので爆アゲだった。4分割で各メンバーが映る映像をここで投入するのもニクい。

「黒い雨」の映像、「消滅」のときに使われていた骨のやつが悲しくも滑稽に見えてしまう感じでよくできてるな~と思っていたので、「仇」で歌詞をででんと押し出す映像に変わったのは個人的にはちょっと…と思っていたんだけど、今回はまた変わってPVの車椅子の女性に戦地の映像が加算理、戦地に向かう勇ましい兵士~爆撃を受ける兵士のプラモデル~戦没者墓地、そしてまた違う戦争の映像…という中に車椅子の女性がちょいちょい挟みこまれ、最後は過去の彼女の輝くような笑顔(PVの最初に出てくる)で終わる、というものになっていて、これまた胸を打った。

 

来夢が袖からギターケースを持ってきて、なんでケースに入れてるんだろと思っていたら、「このVISUALというタイトルについて、みんなも色々と思うことがあってここに来たと思うんだけど、俺がVISUALという言葉について思うことを少し長くなるけど話させてほしい」と、高校を卒業したけど就職もせずバンドも組まずに腐っていた時期に「お前の歌ならいける」とヴィジュアル系に誘ってくれたギタリストがいたこと、それでも自分の歌ではいけるということはなく苦労したけど、そのギタリストは上京してもお前ならできると言ってくれたこと、彼がいなければ自分はこの場にはいないと思うこと、彼はもうこの世にはいないけど形見のギターを持ってきたことを話した。しんみりしそうな流れだけど、それで出てきたギターがいかにもヴィジュアル系というかメタルなギターだったのがちょっと面白かったし、そのギタリストの名前はみくるって言ったんだけど、ミルクって呼んでたんだという話からやる曲がバラードでなく「ミルク」というのもなんかキズらしくてよかった。とはいえ最後の方で歌がとぎれとぎれになったのは…とか、じんわりくるところもあった。

最後に来夢がアコギに持ち替えて「十九」で終わり。「十九」大好きなんだけど聴けるとは思ってなかったので嬉しかったな。

「VISUAL」というタイトルだし、旗持って出てきたりでてっきり「俺らがこれからのヴィジュアル系シーンを牽引していくぜ」みたいなことをぶちあげて終わるんだろうと思ったら、最後にはごく個人的なVISUALについての思いを話すあたりがキズらしい感じですごくよかった。単にぶちあがって終わりでも大興奮で満足したとは思うけど、改めて自分はなんで30過ぎてもなおヴィジュアル系が一番好きなんだろうと考えてしまった。社会のありかたに違和感があるけど、ライブのときだけは現実を忘れられるような美しいものを…という現実逃避だけではなく、むしろ根性出して勉強して社会と対峙する姿勢のようなものを学びとってきたような気がする。最初に好きになったのがRaphaelだったからかもしれないし、自分の思想をベースに都合よく解釈しているのかもしれないけど、やっぱり自分にとってヴィジュアル系は単なる現実逃避ではなく、むしろ背筋を伸ばして美しくありながらも日常や社会と戦う力をくれるものであるように思った。「救われたいやつだけついてこい!」という来夢の決め台詞があるけど、「天は自ら助くる者を助く」じゃないけど、単についていって受動的に救ってもらうというだけでは物足りないと思ってしまうので、自分の人生において他の機会では味わえないような強烈な感動や興奮を味わいながら、なんでこんなに胸にしみるのかを考えることで、より深く救われるような気がする。底が浅かったり自分とは相容れない価値観の人のいうことは深く考える気にはならないけど、キズの音楽にはしっかりと対峙したくなるだけのものがある。

まあ長々と書いたけどとにかくめちゃくちゃ楽しかったし、これ以上ないくらい興奮したし感動した!キズは最新のライブが一番最高なので、次が本当に楽しみ!同時代にキズがいてくれて&キズと出会えて本当によかったな~としみじみ思った。