クロスノエシスの「chronicle」、ekomsフェスから発売なのでちゃんと買ってきた。

ミニアルバムとはいえ9曲38分、Weezerだったらそれアルバムとして出してるよってボリューム。

高校生の頃少ないお小遣いから買ったのにトータル30分で一瞬がっかりしたグリーンアルバムからの曲

 

内容もめちゃくちゃよかった…Soundcloudでデモが公開されてるものの、正直なところやっぱりデモはデモだな…と思ってたんですがCD版はめちゃくちゃよかった。

 

まず印象的だったのはベースが結構やりすぎ(ほめてる)ということ。サンダーキャットかよ。ライブで「薄明」聴いててなんかベースがぶるんぶるんしてるなと思ってたけど、音源で聴くとより分かりやすかった。

あと歌詞カードを読んで初めて分かることも多かった。「薄明」で「六道輪廻」とか仏教用語を言ってると初めて分かった。「僕の輪廻」だと思ってた…w

 

曲名と並び順だけでなんとなく「夜~朝」みたいな流れがあるのかと思ってたんだけど、よく調べたら「残夜」って明け方のことらしいので、明け方からの「in the Dark」で深い時間になるということになるため、歌詞から時の流れをこじつけることはできなかった…w

 

でも、いったんskitを挟んだ後半の流れに新たな発見があった。

「seed」の冒頭では「羽根を横たえ 新たな外側の土地に身を落としたら」とあるんだけど、天国から人間の世界(“外側の土地”)に落ちて行って、種として地中に埋まって芽を出して世界に「はじめまして」するイメージなのかな、と思った。出発点は横たえる羽根があるところなので…

その次の「インカ―ネイション」は“天上の存在、高次の意識みたいな人間界を外から見ているものが気まぐれで人間に受肉する”というような内容なんだけど、この曲には「羽根はないんだね 不便だ」という一節があって、羽根がない人間を生物の標準的な姿としてみておらず、今羽根を持っている(又は昔持っていた)者の主観であることが推測できる…

 

となるとこの曲も「天上界から人間に受肉する」というような話で、「seed」と同じような状況を別の視点から切り取っているようにも思えてきた。

ちなみにこの2曲の歌詞は同じページにあって、蓮じゃないけど水辺に浮かぶ天国に咲いてるような赤い花(彼岸花でもない)が背景になってる。

 

「seed」と「インカ―ネイション」の前にあるのは「薄明」なんだけど、これは「転生を続けた先で呪いごと世界を救いあげてみせる」という歌で、妙に壮大なことを言っていて、ワイが救世主や!とばかりに気が大きくなっているw

そんな輪廻転生してこの世を救うヒーローになる!みたいな歌の後に、輪廻や転生というテーマが共通しながらも、つつましく大地に根を張る…気まぐれに人間になってみる…みたいな曲が続くのはなんか面白い。死んだ直後は「転生して来世ではやったるで!」とやる気まんまんだったのに、段々現世の記憶を失って穏やかになっているということかもしれない…w

最後の「previously」は何となく明け方で寝ぼけていて、カーテンの隙間から陽が差している中ぼけっとしているようなイメージ。薄れていく記憶について、少し感傷に浸りながらもどこか遠いことのように思えてしまっている、という歌詞のように思えるんだけど、この流れで聴くと、追憶の対象は現世での記憶だけじゃなくて、前世の記憶も混ざっているような気もしてきた。最後に意識が開いたとき、前世や天国でのことは何も覚えていなかった…みたいな。SODAさんは絶対そんなことは意図してないと思うけど。

ちなみに「実際にはなかったはずの記憶」(例えば、青春コンプレックスの人が“自分の人生にもあった気がする”と、実際にはなかったはずなのにノスタルジーを感じてしまいそうになるベタな青春のシーンなど)みたいな「誰も誰も誰もいない妄想のシーン」って一節がいい。

 

“救済”ということについては、「cross」「残夜」「薄明」と3曲の歌詞で「救う(掬う)」と直接言及しているだけでなく、「ひたすらに美しいもの、現実離れした世界を見せて救われた気分にする」ことの一環として転生のようなファンタジーのようなことを言っているのか、と思ってたんだけど、それにしても輪廻や転生のようなことをやけに多く歌っているので、ファンタジーというところからさらに進んで「いったん死んで生まれ変わったような清々しい気持ちにしてやる」ということまで含意しているのか…とも思った。妄想が膨らむね。

 

1曲ごとについても考えてみたんだけど、まだ聴けば聴くほどいろいろ浮かびそうなのでとりあえず思いついたところだけ。

 

1 cross

サイレンみたいなリフから始まる曲

歌詞カードを見て、まずセリフのところまで実質的に歌詞がないことに気づいて改めて思い切った構成だな~と思った。

 

セリフ部分は檄文みたいな聴いている人に問いかけるようなもので、さらに後半部分でも聴く者に「まだあなたも追いつけるはずだからおいでよ」とか、“こっちの世界に来なよ”と語りかけている、「クロスノエシスの側から、その音楽に触れる可能性のある全ての人へ」という方向での歌だと思う。

4回繰り返される「時は満ちた」というフレーズ。

クロスノエシスが始動する際の映像でも使われていて、そのときは「このグループがついに始動する」という意味で使われてると思ったけど、それだけではなく「我々が皆さんを夢のような世界に連れて行く時間が来ましたよ」という意味でもあって、どう考えても1曲目にしかなりえない曲だなと思った。

 

どこまで歌詞のイメージを指定して依頼してるのか分からないんだけど、この歌詞はおそらく“救済”というテーマを伝えて描かれてるんだろうなと思った。例えば以下の歌詞

「手招くのは切り離された金世界」

 …現実から隔絶された美しい世界を見せる、

「遍く掬い上げるための艶麗」

 …聴く者全てを救済する(目の細かいザルで掬いあげるような感じ)、ということ

 

こんなグループのコンセプト紹介みたいな最も分かりやすい歌詞なのに、最初は歌がない予定だったらしい(それじゃまずいということで歌は後でつけることになったとのこと)。そんな経緯も含めて歪な曲だけどそこがいい

見どころはやっぱりFLAMEさんの「時は満ちた」からの轟音をバックにしたAMEBAさんのセリフ部分。

振り付けはAMEBAさんのソロダンスでのインド人みたいなポージングが好き。

 

2 残夜

AMEBAさん作詞曲。ちなみにAMEBAさんはこの曲、と決まってたわけではなくて2曲提示されてAMEBAさんとSODAさんで選んだらしい(SODAさんが即「じゃあこっち(暗い方)はみつこね」と決めたらしい)

 

おぼろげで離れていきそうな「君」を救い出そうとする、という内容なんだけど、ここでいう「君」とは他人のことに限らず、「かつてのもっと純粋に世界を信じていた自分」とかいった抽象的なものなのかもしれないと思った。

一見すると「君」は昔親しかった人のように思えるんだけど、それだと自分の世界だけの中で「救い出す」も何もないので、もっと記憶とか信念とかそういう抽象的なもののような気がするんだよな。

 

MVがあるのはほんと嬉しい…突貫工事で作ったらしいけど、MVがあるとないとでは(俺の日々の生活の潤いが)大違いなので本当によかった。

MVは3分40秒以降の全員集合するところと、3分50秒のAMEBAさんが見どころ。「不安と期待を描いた」とナタリーで紹介されてたので、まあ衣装じゃない方の不安げな4人が「不安を抱いている自分」の象徴で、段々と明けていく空の下で歌う衣装の4人が「期待、希望が見えている自分」なんだろうなと思う。最後に光の側と暗い側にいる2人の自分が1つになるのは、不安を抱いてしまう自分から目をそらさず、これも自分であると知った上で前に進む、ということなのかな。MVに寄せて考えると、救いたい「君」は不安な自分自身なんだろうか。

あとMVの最後で一瞬だけ、最初に発表された動画のシーンが映ってる気がする。この不安にかられている4人は「時が満ち」てクロスノエシスになる前の4人、ということなのかも

 

3 in the Dark

この曲の登場人物は「ふたり」。

どことなく不穏な雰囲気の中で、「秘密たくして」「秘密かくして」「この夢くずれる前に」「鍵かけておいて」と歌っていて、素直に考えると夢の中で会えた2人が、夢の終わりを感じている、というように思える。ここでいう「夢」ってのは寝ているときに見ている夢、というだけではなくて、「夢のような時間」という意味でもあるのかも。ある意味では「黄昏の君/黎明の貴方」に近いような雰囲気があるように思った(聞いた話だとこの2曲に近いものとされてるのは「in the Dark」ではなくて「薄明」らしいけど)。

ギターのアルペジオがいい。

振り付けは長い間奏でメンバーがバラバラの動きをしながら一つに収斂していくところと、不安を表現するようにせわいなく歩き回るサビが好き。

 

4 ペトリコール

雨の中で一人佇んで誰かのことを思っている曲。

最後のLAKEさんの歌がいい。

 

5 skit

ライブでの入場SEにもなってる静かな曲

 

6 残夜

音源で聴いたときの印象が結構大きく違った曲かも。ベースが相当歌ってる感じ(好きです)。

歌詞の内容については上で書いた通り。悟りを開いてものすごく気が大きくなっている…w主語が「僕ら」なんだけど、死後の世界で転生前に集められてみんな興奮して気が大きくなってるのかな

間奏にヘドバンが取り入れられているのがバンギャ的には嬉しい。「狂ウ」とか「廻ル」などの表記も実にヴィジュアル系っぽい。

「奇跡に寄り添う(転生)」と「鬼籍に寄り添う(昇天=死)」って使い分けられてるのも中二っぽいけどいいね…こちとら中二なので…

 

7 seed

数少ない(今のところ唯一?)メンバーの笑顔が見られる曲。

あんまり周りのオタクが「一番いい」というので、いや~そうかねと逆を張ってたんだけど、音源で聴くとずっとギターが鳴っているのがシューゲイザーっぽくもあってよかった。音源の方が四つ打ちっぽさが前面に出てる気がする。

 

8 インカ―ネイション

一番好きな曲。速めの四つ打ちでキメもあって最高。

浮遊感のあるギターがlynch.の悠介さんっぽくもあるのも素晴らしい…

 

9 previously

一聴して「ブクガっぽい」と思った曲。使ってる音が近いのかな。

つい「行方」を連想しそうになるけど、分かりやすいメッセージはなくてまどろみの中で自己完結している感じ。

どんな振り付けがつくんだろ。この曲も明るめではあるけど、「seed」とは違って笑顔は見せないような気がする。

 

 

しかしせっかくの名盤なのに、全国流通してないのがもったいない…いずれするのかもしれないけど

とにかくいい内容だし、リリイベは仮にあるとしても1か月以上先になりそうだから、クロスノエシスの物販を見かけたら今買うべきだと思う。俺は1枚しか持ってないので誰にもあげません。

 

明日はギュウ農フェス、テントステージは正直後ろの方だと結構見えづらかった覚えがあるんだけど、せっかくだから知り合い全員に見てほしいな。誰に見せても恥ずかしくないグループなので。