
松本は女鳥羽川沿いにある縄手通りは古い町並みの雰囲気が残る商店街である.町並みの雰囲気を活かした民芸品屋もあればごく一般的な模型屋もあるような,観光と日常生活が混在する通りである.
縄手通りの一画に「みたから」がある.京都の料亭で立板をやっていたという(噂の)大将がきりもりしている.通りの雰囲気とは対照的なポップな看板が,町家風の建物に掲げられており,それがこの店の独特な位置づけを想わせる.

硝子障子の扉をあけて中に入ると正面に開放的なL字型のカウンター,左手にかまどや古い生活用具などが目に入る.
お酒は大将が見立てた松本周辺を中心とする地酒,
肴はオーナーが自ら選んだ鹿肉の料理がメイン.
3月の下旬,
おまかせの最初にでてきたのは,鹿の足の薫製.塩辛さの奥に野生の味がするが獣臭さは感じられない.日本酒がすすむ.布袋をつるしてしたたりおちる液体を集めるようにして濾した生酒が旨い.全く同じの造り方で米だけが異なる二種,それと,濁り酒を楽しむ.


かまどにくべられた薪のにおいも野趣をもりたてる.
鹿肉のコロッケやカツレツなどが出たかと思うと,木崎湖で獲れたという子持ちわかざぎがでてきたりもする.料理とお酒の相性に感動して,何をどういう順序で食べたかほとんど覚えていない.

締めは,土鍋で炊いたマグロご飯,あまり主張しない味付けがマグロのおいしさとお米のおいしさを引き立てる.ほそく切った若々しい昆布のみそ汁は出汁が効いていて対称的である.おかわりをしてたっぷりと食べて,夢心地.
ちなみに,この店,大将が打つうどんも旨い.ただし,数に限りがあるので食べられないこともある.
また,夏には店の前の席で,七輪の焼き肉(鹿)を楽しむこともできる.


