これは私が職場の先輩から聞いた話です。


今から15年ほど前、私の先輩、Sさんは遅い夏休みをとって一人で東北地方をドライブしていました。


適度にワインディングした某県の山道をドライブしていたSさん、ふと気づくともう夕方で日が沈みかけていたのに気付き、食事をするために町へ 戻ることにしました。


緩やかな下り勾配の道路、初めての道で薄暮の時間帯ということもありSさんは(珍しく)制限速度を守り、30キロで走行していました。


当時のSさんの愛車(マニュアル車)は買ってから10年以上が経過している乗り慣れた車でした。


当然、自分の腕と車の性能は熟知しており、路面条件、気象条件を考えると、決して無茶な運転をしていたわけではありませんでした。


しばらく走っていると右カーブにさしかかりました。

道路の左側は法面になっており、道路と法面の間には側溝がありました。



↑イメージ図



Sさんはエンジンブレーキをかけつつ緩やかに右にハンドルを切りました。

その時です・・・・



「!!!」




タイヤがスリップしました。


夕方で薄暗いとはいえ、真っ暗というほど遅い時間ではありません。

路面も濡れていませんし、ましてや凍結などしていません。

路肩に落ち葉が積もっているわけでもありません。


Sさんのそれまでの経験から、「絶対にスリップするはずがない」と言い切れる状況でした。


にもかかわらず、Sさんの車はカーブを曲がり切れず、真っ直ぐに左側の法面に突っ込んでいきました。


そんなに急な勾配ではありませんし、スピードも30km/hくらいです。

ハンドルを切るなり、ブレーキを踏むなり、何らかの対応は取れたはずなのですが・・・


Sさん曰く、「スリップしたと思った次の瞬間には法面に突っ込んでいた」そうです。




まるで何者かに後ろから押されたかのように・・・






つづく






※ 法面(のりめん)・・・切土や盛土により作られる人工的な斜面のこと。道路建設や宅地造成などに伴う、地山掘削、盛土などにより形成される。