給食を一緒に | EXEKpresents, 先生のコトバ

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先生方がリレーでお届けする、”教育”がテーマのエッセイです。

おひさしぶりです。

今回2回目となるFP(ファイナンシャルプランナー)の早川です。

よろしくお願いします。


さて今回ですが、わたくし大学時代に教職課程を取っていたこともあり、中学高校の教員免許を持っているんですね。

そのときに感じた生徒とのコミュニケーションの取り方についてお話ししたいと思います。



大学3年生のときの6月。

地元の中学校に国語の教育実習生として3週間実習に行くことになりました。

ゆとり教育の弊害が声高に叫ばれ、「まともに席に着いていることすらできない生徒ばかりだ」などというマスコミ報道もあって、結構緊張していたのを覚えています。

まったく言うことを聞いてくれないことも覚悟して教室に入りました。


しかし、実際は自己紹介から静かに話を聞いてくれました。

なんだか肩透かしをくらったような気分でしたが、何事もなくほっとしました。


給食の時間になって生徒が机を隣の子とくっつけて食べているところに、普段担任の先生が使っている机を持っていき生徒と一緒に給食を食べることになりました。

そうするとなにやら女の子同士でひそひそ話をしています。

聞きたいことはあるんだけど聞いていいのか迷っている様子でした。

その様子を見て担任の先生が「ほら、早川先生に彼女いるんですか? とか質問しろよ。」と笑いながら言うと、自分の隣に座っていた女の子が「彼女いるんですか?」と恥ずかしそう聞いてきました。


「彼女かぁ。今はいないよ。」そう答えると

「今はってことは昔はいたんですか。」すかさず女の子が質問する。

「そうだね。昔はいたんだけど今は一人になっちゃった。」と答えると、

違う班の席にいた男子が「どんな子だったんですか?」と質問をする。


どうやら彼女に関することは目の前の女の子二人の関心事ではなく、クラス全体の関心事だったようで「誰か質問しろよ」という空気になっていたようです。


実はこの給食での会話が、今になって考えると、教育実習生活のカギになっている部分だったように思います。

たしかに自己紹介を静かに聞いてくれて嬉しかったのですが、あまりにも静かで見えない壁のようなものを感じていました。

それが給食の時間を共にしたことで少しだけ壁が外れた気がしました。


それから、教育実習も半ばに差し掛かってくるとクラスでいじめられている子がいることに気付きます。

教育について学ぶといじめの問題はまっさきにテーマとして挙げられますところですね。

いじめられている子について学校はどのような対策を打っているのかを見てみると、学校常勤のスクールカウンセラーを置くことによってメンタルケアを行っているようです。


自分が中学生のときを思い返せばスクールカウンセラーが学校に来るようになったのも自分の中学時代だったように思います。

ただ当時カウンセラーの方がいる部屋に出入りしているのは本当にごくわずかだったように記憶しています。

なぜなら「カウンセラーのところに行く=いじめれっ子」と思われるからです。

いじめられている子のためを思ってやっていることなのにカウンセラーのところに行っているという理由でいじめられる。

そんな矛盾を抱えていたのです。


話は変わりますが、昨年の春スポーツ新聞を読んでいたところ、

クリーブランド・インディアンスが快進撃を続けているという記事を見つけました。


インディアンスといえば映画『メジャーリーグ』にも登場する伝統ある球団です。

しかし近年成績は思わしくなく優勝争いとは程遠い状況でした。

それが1位を争うほどに躍進しているというのです。


記事の内容を読んでみると興味深い事実が分かってきます。

戦力補強に成功したという事実と併せてメンタルトレーナーが付いたことで成績が向上しているというのです。

もちろん以前からメンタルトレーナーはインディアンスにもいました。

でも実際選手がメンタルトレーナーの部屋を訪れているのを見られると

「あいつ相当病んでるみたいだな。」

と周りから見られるため誰も行けなかったそうです。


それがトレーナーが代わり、状態が良くても悪くても客観的に自分の状態を見直す習慣ができたことで成績が向上したというのです。



かつてのメンタルトレーナーの存在は、まさしく中学校のスクールカウンセラーと同じでうまく機能していなかったのです。

もっというとインディアンスのメンタルトレーナーのように遠慮なく出入りできる状況を学校のスクールカウンセラーにも応用できればスクールカウンセラーの存在価値も上がってくると思うのです。


では、いったいどのようにスクールカウンセラーがインディアンスのメンタルトレーナーのようになれるのでしょうか。


一つのきっかけとして給食を一緒に食べに教室に行くことだと思います。

私が教育実習の初日で生徒たちと距離を縮めたられたきっかけとなったのも給食を共にしているときでした。

食事を共にしているときというのは心を開きやすいという心理効果があると聞きます。

まずはカウンセラーのほうから生徒のテリトリーである教室に飛び込んでいくところから始めようということです。


ちょっと考えてみれば当たり前のことです。

悩み事があったときに相談する人といえば信頼できる人でしょう。

自分の悩み事を見ず知らずの人に話そうと思いません。

「この人にだったら相談してもいいかな」と思ってもらうためには、まずはカウンセラーから歩み寄っていくことが必要だということです。


ただ間違ってほしくないのはカウンセラーの方を批判しているわけではありません。

せっかく専門家がいるのに利用できない空気が出来上がっているのはもったいないと言っているのです。

思春期の中学生は人間関係、勉強、部活、恋愛、いろんな悩みを抱えています。

身近に相談相手がいる子はいいのですが、一人で抱え込んでいる子も多いと思うんです。


私が中学生のときを思い返すと、好きな人のことを親や先生に相談しようとは思いませんでした。

友達にしても相談相手を間違えるとクラス中に知れ渡ってしまいそうで出来ませんでした。

相談相手って信頼できる身近な人を思い浮かべるわけですが、相手との距離が近すぎると逆に相談しづらいこともあるわけです。


親身になって相談に乗ってくれる人であり、なおかつ適度な距離感を保てる人。

それが教育実習生をしていたときに感じた実習生の存在意義でした。
先生や親より歳が近くて、友達より人生経験があるから相談しやすいというのもあったと思います。


同じ役割をスクールカウンセラーの方にも担っていただきたければ、一人で悩んでいる子の人生を変えるきっかけになるのではないでしょうか。