文藝春秋の新刊のプロモーションTWを見る前に、私は「キューバ・ミサイル危機」の映画『THIRTEEN DAYS』を観ていた。核も科学者により開発された。時代がそうだがその時代の核科学者に良心が問えたか。だが、日本には広島と長崎の記憶がある。
文藝春秋プロモーション部のTWはジェニファー・ダウドナ、サミュエル・スタンバーグ著櫻井祐子訳解説:須田桃子『CRISPR(クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見』であり、「ノーベル賞といえば受賞の可能性が高い画期的技術を開発した科学者の手記が10月4日発売です」という告知である。
文藝春秋プロモーション部@bunshun_senden
#ノーベル賞 といえば受賞の可能性が高い画期的技術を開発した科学者の手記が10月4日発売です。 『CRISPR(クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見』ジェニファー・ダウドナ サミュエル・スターンバーグ 櫻井祐子訳 須田桃子・解説 https://t.co/zlEZroqkpi
2017年09月02日 09:58
そういえば、最近いつもノーベル賞の発表に関する渡辺志帆・朝日新聞ロンドン特派員の記事を見るのはこの付近だ。
私がジェニファー・ダウドナ米カリフォルニア大学バークレー校教授の名前を知ったのはゲノム編集のノーベル賞候補ということと共に数年前に小林哲・朝日新聞DC特派員がTWにリプライしてくれたからであった。小林特派員は同教授はその生命倫理についても学会をリードしていると付してくれた。
私がいつも引用する元村有希子・毎日新聞科学環境部長の著書『気になる科学』(毎日新聞社:2012年、KADOKAWA:2016年)から総合的に考えるとダウドナ教授らがノーベル賞候補に言われることは私には納得がいくのは不思議ではなかった。
私の参考資料としては田村建二・朝日新聞編集委員、瀬川茂子・朝日新聞記者のインタビュー動画シリーズ『「連続インタビュー」ゲノム医療のいま、明日』(朝日新聞*慶應義塾大学)は視聴することで知見を広げてくれた。
Nobuyuki Kokai Blog (2015-07-12) のウェッブサイトに見つけたときは、ゲノム編集にオルダス・ハクスリーの科学小説の蓋然性を持つことの意味を考えていた私にはダウドナ教授の講演の動画に科学者のあるべき姿勢さえ感じた。
ジェファニー・ダウドナ教授は「ゲノム操作を受けた人間はまだ存在しませんが、もはやSFだけの話ではないのです。ゲノム操作をした動物や植物はいるのです。このことは重い責任、すなわち科学の躍進による意図した結果だけでなく、意図しない悪影響について熟慮することを我々に迫っています」と述べている。(Nobuyuki 前掲)
私たちの問題の所在はダウドナ教授自身が語った次のフレーズにあるだろう。゛We can now edit our DNA. But let' do it wisely."
ここでも私は少年期に読んだオルダス・ハクスリー著松村達雄訳『すばらしい新世界』(早川書房、1968年)のインパクトが大きかったことの記憶はとどめておきたいと思う。この本を知ったデニス・ゲーバー(ガボール;ノーベル物理学賞受賞者)著香山健一訳『未来を発明する』(竹内書店、1966年)は私にとって今でも特別の意味を持っている。
最後に記したい。私の本ブログシリーズで、信頼してやまない科学ジャーナリストの元村有希子さんに「私(平田)はゲノム編集について論評が書けない」と繰り返したが、彼女は自身の前掲書『気になる科学』で「・・私は科学者には、どう使われるかまで注意を払ってほしいと思う・・当事者意識は持ち続けてほしいと思う」と述べている。
これからの、科学技術開発のスピードが増して行く中でジャーナリストがその事実をどれだけ見届け記事にしてその判断に要る思想を持っているかが大切だと考える。(ひらた こうじ)<了>
注)特許訴訟について
http://www.editage.jp/insights/two-research-teams-in-a-legal-battle-over-crispr-patent-ownership