ことはそれほどシンプルなことではないが、11月8日の2016年アメリカ大統領選挙が近づいており、私の見方の一つの所感を短く述べてみたいと思う。もとより私は米国政治の専門家でもないし、現地をみて歩いたものでもなく、あくまで所感である。
オバマ米大統領が2013年9月10日のテレビ演説で「米国は世界の警察官ではないとの考えに同意する」と述べてから、シェールでエネルギー大国の座を取り中東へのコミットメントを緩め、リーマンショックに象徴されるフィナンシャル・リセッション(もしくはグレート・リッセション)の後の米国経済の運営のなか、NATO諸国への軍事費を含めた役割分担を求めアジア・リバランス政策ではアジア・太平洋地域の安全保障の色彩の濃いTPP交渉を進めた。アメリカの債務上限問題もあった。
オバマ大統領のニューポリシーへの転換であっても、同盟国の負担が増えても、アメリカは今もって世界の超大国であり、その調停・介入を紛争の解決に必要とすることに変わりはない。
2016年10月18日朝日新聞の佐藤武嗣ワシントン特派員のブッシュ政権WHNSC高官を務めたマイケル・グリーン氏インタビューでは、民主・共和両党のどちらが政権についても日米安全保障は現状と読める。
だが、どちらが政権につこうが「アメリカ・ファースト」の言葉のように米国内の構造的な国民の政治への不満等に取り組まなければならない。この2016年の大統領選挙のプライマリーと本選挙において現出した「エスタブリッシュメントへの抵抗(反乱)」や移民問題などのトランプ氏の躍進過程、経済格差や教育環境の不平等に注目したサンダース上院議員の進出過程を大統領選挙の勝利者が無視し得るものではないだろう。
アメリカの分裂かは別としても、イスラムへの排他的政策の表出、メキシコ国境の壁などすべてがトランプ氏の性格というのではなく彼自身の票固めのためであることは事実である。
例えば、共和党主流派は、2016年は同じく不人気な68歳の民主党のクリントン前国務長官の勝利を願い、クリントン氏は1期4年でその後は共和党政権誕生を企図しているとも考えられよう。クルーズ上院議員もルビオ上院議員もまだ若い。
政権の座につくと現職大統領は強い。が、先の構造的問題がある。
イギリスは6月23日のEU離脱を問う国民投票で移民問題を通してみると「エリートへの抵抗」が、英国国民の離脱の判断となりそれが国家指導者の悩みとなった。
アメリカの政権党が議会選挙においても選挙を乗り切れるならよいが、構造的問題への対処は容易ではなかろうし、国家指導者の悩みは消えない。
6月23日の英国国民投票の結果を当時の政権に近い人物は「英国の分裂」を強く感じたと言った。11月8日の米国大統領選挙の結果を米国国民はどう感じ、新政権はどう感じるのだろうか。<了>