2016/01/17朝日新聞大阪5面【ワールドけいざい】畑中徹特派員を読んで(所感) | ExcomAdvisorのブログ

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本稿は私・平田幸治の個人の意見・見解等を綴ったものです。

 朝日新聞大阪5面【ワールドけいざい】ソルトレークシティー=畑中徹特派員【めざせ第2のシリコンバレー】を読んで少しく考えさせられるものがあり所感を述べてみたい。この記事は、実際に起こりつつあることの実際的かつ明晰なリポートである、と私は思う。みなさまには朝日の原文記事を読んでいただきたい。

 まずこの記事のリードを引用する。「米国で、起業家が集う地域は『シリコンバレー』の一極集中ではない。あちこちの都市が『われこそは起業のまち』と名乗りをあげ、最先端の技術やITサービスを次々と生み出す第2のシリコンバレーになろうとしている」。

 さらに同紙記事は「起業が盛んな米国の都市」として9カ所挙げている。
 ①ソルトレークシティー
 ②ニューオーリンズ
 ③ラスベガス
 ④ボストンとその近郊
 ⑤ニューヨーク
 ⑥アトランタ
 ⑦オースティン
 ⑧ヤングスタウン
 ⑨シアトル

 さて、畑中徹特派員の記事を読んでの私の想像を含んだ所感になるが、シリコンバレー型のIT関連の企業でアメリカが世界によみがえった。そこにはあのリーマン・ショックに象徴されるグレート・リセッションの後に成長企業を根底から育てるという市場主義(資本主義)ともいうべきアメリカの伝統的なベンチャー起業への投融資のシステムがあるように思える。

 私の乏しい見聞だが、アメリカでは子どもたちが小さい頃から株式投資のことを学んだりして、市場主義(資本主義)に慣れ親しむようなことが身について、そうしたことがベンチャー企業を育てるような資金調達システムの存在の風土ともなるかと考える。ベンチャー・キャピタリスト、ベンチャーキャピタルやファンドはそのような伝統風土のなかで形成されてきたのではなかろうか。それが前掲の朝日新聞の9都市にもあるように思われる。

 むろん「投資はリスクを伴う。まちの活性化にすぐには結び付かない」(ザック・ウエア氏=ネバダ州ラスベガス:朝日新聞前掲記事=畑中徹特派員)。だが、「全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA)は、・・(起業家を誘致しようとする地域は多く)『全米へのすそ野の広がりが、米国経済全体を元気づけている』と指摘する」(朝日新聞前掲同)。

 こうみてくると、日本の産業構造の調整過程でも必要な起業育成の環境整備の「ヒト」「モノ」「カネ」の「カネ」の資金調達のシステムを変革しなければそぐわないとも考えるのである。このことの日米の違いは大きくベンチャー育成の日本の基盤はまだ脆弱であると言わざるを得ない。株式が上昇していくという明らかな兆候を確認したうえで投資する、それが金融の性格としても、兆しを期待してのベンチャー投資にはまだ遠い。

 ソフトバンクの孫正義氏が苦労を重ね資金調達に動いたことは広く知られているところである。

 繰り返すとアメリカの資本主義と自由な企業風土と日本のその違いは大きく簡単にアメリカの「まね」はできまい。それでは、日本で新しい起業を生み企業群の形成を促進するには、政府や主要公的機関で「制度的仕組み」で投資育成会社より幅広い資金調達システムの構造変革に類似する施策をとらなければなるまい。

 日本の産業構造の調整過程でベンチャー企業による新しい産業の展開とさらに展開地域の集積が、朝日新聞前掲記事にある全米の諸都市のように、「日本経済全体を元気づけて」より多くの新産業の創出と雇用の創出に寄与するものではなかろうか。これが「新成長戦略」とも考える。<了>

≪追記≫本稿では、起業家の性格の日米の違いは触れておりません。