プライベートで鉄道撮影に出かける際は、列車利用にしろ航空機利用にしろ現地に着いたらレンタカーを運転するので、車内や機内はもちろん駅や空港でアルコールを摂ることはない。しかし、仕事での出張の際には自ら車を運転することはないので、帰りの車内では心おきなくアルコールを摂取することができる。否、帰路に飲むことを期待しながら出張しているとさえ言えるかもしれない。

空路の場合は空港で飲むことがほとんどで、これはあまりワクワクしない。東京の飲み屋で飲むのと大して変わらないからだ。一方、列車で帰る場合は地元の名産と地酒を買って列車に揺られながら飲み食いするのはなんともいえず楽しい。楽しいことは長く続いてほしいので、酒やつまみがなくなると、車販を呼び止め買い足すのである。

↓案の定というかなんというかHDD内に車販の写真は1枚もなかった。代わりに食堂車の写真を掲げてお茶を濁したい。まずはサロ481のトップナンバー。(鹿児島本線熊本にて1980.9)

↓窓ガラスにヒビの入ったサシ581。ガムテープによる応急処置が痛々しい。(東北本線上野にて1976.9)

↓営業準備に余念がない日本食堂の従業員(東北本線上野にて1976.9)

あれはいつだったか、20年ほど前に初夏の東北地方に出張した。最後に山形県のサクランボ農家にお邪魔し、そこのご主人と話が弾んでしまい、予定の時間を大幅に超過してしまった。帰りの新幹線の時間が迫ってきて、間に合うかどうかギリギリのところだったので、慌てて駅に駆けつけ、列車に飛び乗る羽目になった。そんなわけで乗車前に名産を吟味して買う時間的余裕などなく、辛うじて地酒だけ買うことができた。どうせ車内販売があるだろうからそこでツマミを買えばいいと思っていたが、車販は福島から先でないとないという。さぁ困った。福島まで酒を我慢する甲斐性はない。手元にあるのはさきほどのご主人からいただいたサクランボのみ。僕はサクランボをツマミに酒を飲み始めた。合うか合わないかで言えば、明らかに合わないのだが、しかし、不思議な感覚に陥ったこともたしかである。周りの乗客からは奇異の目線で見られていたが…

さて、待ちに待った福島に着き、ようやく普通の酒肴を手に入れることができた僕は、その後も車販が通るたびに飲み物やら食べ物を買い求めた。

そういう楽しい車内販売も年を追うごとに縮小されていくのは残念でならない。特に仕事で利用する東海道新幹線から(グリーン車を除き)車内販売がなくなるのは痛恨の極みである。

車内販売がなくなるとヘベレケに酔っ払って大声で話すなど周囲に迷惑をかける輩(僕はそうではない、と自ら信じている)が減るだろうからと歓迎する向きもあろうが、旅の楽しみがまたひとつ減ってしまうようで、淋しい。

↓大宮の鉄道博物館を訪れた際に食堂車の歴史が展示されていた。