前稿のアカゲザルの写真は、2009年サイエンス誌上で発表された米国ウィスコンシン大学の長寿に関する研究成果の中間発表に示されもので、世界中にセンセーションを巻き起こした。

 20年間、お爺さんオーウエンは通常食で飼育され、若々しく活動的なカントは通常食の30%のカロリー制限食で飼育されたのだ。

 長寿に関する研究は古くからなされてきたが、カロリー制限と老化の関係を学術的に最初に報告したのは、米国コーネル大学のクライブ・マッケイ博士で1935年のことである。摂取カロリーを35%減らしたマウスは寿命が2倍近く伸びることを発見した。
 
 マッケイ博士の大発見にもかかわらず、その後この種の研究はみられなかったが、1989年ウィスコンシン大学でカロリー制限と老化の関連に関する研究が開始された。

 この研究では、遺伝子的にヒトに近いアカゲザル(平均寿命26歳前後)78匹を38匹ずつの2グループに分け、Aグループには通常必要とされるカロリーの餌(通常食)を、Bグループには通常食の30%減の制限食を与えて飼育してきている。
 
 2009年の研究発表は、研究開始から20年たった中間結果である。
これによると、人間でいえば75歳前後の2009年時点の生存率は、Aグループ50%、Bグループ80%である。生存率ばかりではない。外見は、Aグループは見るからにお爺ちゃん、Bグループ若々しく活動的である。さらに、Aグループでは、がん、心血管疾患、脂質異常症といった加齢関連疾患の発症率も低い。

 前稿写真のオーウエンはA(通常食)グループの、カントはB(制限食)グループの生き残りの一匹である。

 アカゲザルの最長寿命は40歳ほどとされているので、この研究の最終結果はさらに10~20年後のことになる。

 最終結果を待つまでもなく、アカゲザルの場合、カロリー制限が老化抑制に効果があることが認められ、ヒトにも十分適用できるであろうことが強く推測できる。

 ここまでの記述には、主として古家大祐著「老けない人は腹七分め」(マガジンハウス)を参考にした。
老けない人は腹七分め 若返り遺伝子が活性化する食べ方/古家 大祐
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 次回は、ヒトと制限食の関連に進みたい。
 
 余談1話・・・・この記事記載中、近所の河川敷で自動車の転落事故発生。運転者は幸いケガだけで済んだようだ。200m駆け足で取材。

転落事故120914