さる某日に某イベント…といっても隠す必要もないですが、そのイベントにDJとして参加しました。

右の画像は、そのイベント告知に使われたフライヤーで、かなり前に当ブログで記事にした“道南ハードコア・ギャバー座談会”に参加して下さったアロルノさんがデザインを担当しています。
このイベントは、私も主催にかなり近い位置で初期の構想段階から参加していたということもあり、成功の是非はともかく印象に残る一夜を過ごすことが出来た実感があります。
さて、今回はブログの種にとばかりにイベント当日に使った曲のプレイリストを挙げようかとも思ったのですが、それも何だか不粋な気もしてきたので、自分にとってジャズだと思っているディスクを適当に挙げていく…という方向でお茶を濁させていただきます(プレイ時にどの曲を使ったのか、殆ど覚えていないから、と言うのもありますが…)。
私の中でジャズといえば秋に似合う音楽という位置付けにあり、そういう意味でも今回のイベントは、時期的にもちょうど良かったと感じています。
一口にジャズと言っても、私の場合は所謂DJプレイを前提にして作曲された“Acid Jazz”のことを指すため、Hip HopやHouseといったクラブ・ミュージックが下地にあります。イベントで使用したディスクも当然そういうものが中心でした。
前述のように、これから挙げるディスクは(意図しない重複はあるでしょうけれど)、イベント時に使用したものと異なりますが、私自身のプレイがどのような雰囲気だったのかの外郭は掴めると思います。

♪m-1 Caravelle
この界隈では大御所と云えるユニットによる2ndシングルですね。
Acid Jazzと言えばUKが本場と思っていましたが、このユニットはドイツだったりするところが個人的に意外でした。
m-1の疾走感あるリズムと流麗で次々とめまぐるしく変わる展開がたまらないですが、私は33回転までテンポを落としてプレイすることが多かったです。それだけでも、違った味わいが出て面白いものがありますね。回転数を落としても、意外と違和感なく使えます。
かのFrançois Kevorkianも、mix CDの金字塔と賞賛される“Essential Mix”にて、同様の使い方でプレイしてるそうで。

(1998年/ Filter)
♪m-1 Enchant Me (original version)
このユニットも、私のジャズ・セットでは定番です。ブログでも1stアルバムにて紹介しましたね。
アコースティック・ギターの落ち着いた雰囲気と、女性ヴォーカルのしっとりめな温度感に秋を感じます。このユニットは、総合的に見ても高水準でケチのつけようがないだけでなく、このm-1のような、どことなくひんやりとした質感を出すのが本当に巧い。その辺りがまた、UKのAcid Jazzだなと感じる点ですね、個人的に。
特に、このシングルをリリースしたレーベルFilterには、そのような傾向が強く出ています。

♪m-2 Point Blanc
今回のイベント用にとジャズものを買い漁っていた時期に、某レコード店の店主に薦められて試聴し、即座に気に入って買ったものです。なので、多分プレイで使ったと思いますが、どの曲なのかは全く覚えていません。
10インチにてリリースされた彼らの最初で最後のアルバムで、詳細は不明ですが、聞くところに、どうやら企画ものというコンセプトで組まれたユニットだとのこと。
特にタイトルトラックであるm-2の、場末の酒場のような雰囲気が気に入っています。完全な生演奏ですし、今回の記事では一番ジャズの本流に近い音だと思います。
you tubeに全く音源が上がっていないので、ジャケットから音は察して下さいませ。
実際のイベントでは、上記のような傾向のものからHouse寄りのものへ徐々に移行していくような形でプレイしました。順番的に次にプレイするDJさんがDeep Houseを得意とする方なので、それを考慮したプレイを心掛けたわけですが、その辺りは個人的に上手くいったかな、と自画自賛してみたりして。

♪m-3 Lost And Found (spiritual vocal)
多少ジャズから外れたハウス様式のものも挙げておきましょうかね。
90年代に、UK Acid Jazzの総本山的役割を担っていたレーベルDoradoの看板ユニットとして有名な彼らのシングルでは一番好きな曲です。
このシングルでは、Danny TenagliaやJoe Claussellといった大御所のリミキサーが参加しているのですが、中でもX Press 2で有名な Ashley Beedleによるm-3は個人的にお気に入りの1曲です。
原曲の雰囲気を全く壊さない無難な作りですが、寧ろ奇を衒ったものだったなら、多分何度も繰り返し聴くようなことはなかったかと。ひんやりとした質感も艶のあるヴォーカルもそのままの、まさにリミックスの手本とも云える素晴らしい仕事です。

♪m-2 Woman (Rae & Christian vocal remix)
これもまた、どちらかと言えばHip Hop文脈のものですが、立ち込める霧のような雰囲気にジャズを感じたので。
元曲はそうでもないのですが、リミックスであるm-2は特にくぐもった濃厚風味の情景が描写されているのが好印象。ジャズの括りに入れても違和感はないかと。
Talkin' Loudの音源は殆ど持っていないし、これも何時買ったのか見当も付かないですが、ジャンルの括りなど関係なく普遍的な響きを持っているのを、買った当時も感じ取れていたのでしょう。覚えていませんけれど。
こういう、もったりとしたテンポのHip Hop的な曲だけで、いつかはセットを組んでプレイしてみたいものです。

(1995年/ pork)
♪m-2 A Blazing Mass of Energy
これもかなり前に買ったものです。アコースティック、プログラミング共に半々といった感じで、特に生弾きギターのメロディラインの軽快さが印象に残ります。
飛び抜けて良いという曲ではありませんが、別段作りが悪いわけでもないし、気付いたら何度も聴いている…というような内容ですね。リズムがブレイクビートなので、hip hopとも相性が良さそう。
因みにこれをリリースしたレーベルPorkは、かつてFila Brazilliaもリリースしていたこともあります。
youtubeにも音源がないので、これもまた内容は想像する他ないのが玉に瑕です。

♪m-2 Marshmellow
かなり前に当ブログで紹介した故Andy Sojka率いるバンドによるアルバムですね。これについては何も言うことがないくらい、個人的に傑作だと思っているのですが、困ったことにいまだ知名度がないのがまた淋しい限りです。
Discogsのデータではジャンルをtranceとしていますが、何度聴いても全くAcid Jazzの括りとしか言いようがない曲調なので、お間違いなきようお願いします。
どの曲も高水準なのですが、強いて言えば、しっとりした曲展開のm-2が最近のお気に入りですかね。
CDのみのリリースであるため、今回のイベントでは使えなかったのが悔しいところ。
一応ブースにはCDJ機材も備え付けてあったので、CD音源もプレイ出来なくはなかったのですが、いかんせんCDJに慣れていないためもあって、やむなく諦めた次第。でも、いずれは…と思っていますが、貧乏ゆえ機材が揃えられるのは、何時の日となるのやら。

♪m-3 Na Na's Waltz
フランス・テクノ・シーンの代表的なDJ、Laurent Garnier率いるF Communicationsもまた、ジャズ色を散りばめた作品のリリースが多いレーベルです。今回のイベントでは、確かこのm-3を使ったと思います。
収録曲では、これだけが妙に際立ってジャズの色合いが濃いのに面食らいますが、場末のバーで独りウイスキーを啜るような情景がまた良い案配で、結構聴くことが多いですね。私の傾向から他の収録曲のほうに目が行く筈ですが、何故かこれのほうが印象に残っていたりします。
DJユースを想定したような作りではないので、プレイする際に気を使わねばならない曲でしょうね。

♪m-6 Jesper Dahlbäck - Stora Eken
♪m-9 DJ I.N.C. – Summer Jaaz
♪m-10 Forme - Instant Space
個人的に衝撃だった1枚。スウェーデンのテクノ/ハウス・レーベルSvekが、どういう訳かジャズ色を全開にして編纂したコンピレーション・アルバムです。
ハード・ミニマル・テクノ全盛を謳歌していた印象のあるJoel MullやCari Lekebuschといった面子が揃ってフューチャー・ジャズに挑戦しているのが、また何とも興味深いものがありますね。UK Acid Jazzと比較して、より冷たい質感ある音なのは北欧という国柄からなのでしょうか。
どことなく都会的な風情のある艶のあるm-2や、波打ち際で佇むような情景を喚起するm-9を良く聴いていました。

The K Scope Project (1994年/ Tribal America)
♪m-3 Organism
David MoralesやFrankie Knucklesらと共に、Def mix Productionの一員だったEric KupperがTribal Americaからリリースしたシングルですが、このm-3のジャズを消化したと思われる曲調に私は惚れました。
艶があるシンセサイザのフレーズ、時折交錯するサキソフォンの音色、眩い暖色を思わせるオルガン…これもバーのカウンターでウイスキーをゆっくりと味わっているかのような情景を想起せずにはいられません。豪華さは薄いですが、全くケチの付けようがない、傑作と言ってもいいでしょう。
彼が手掛けた曲では、これまで何度となく聴いた思い出深い作です。

♪m-2 Are You Satisfied? (tao of jazz mix)
♪m-3 Surrender yourself (original un edited ballroom mix )
Tribal作品が続きます。
現在も現役で活動を続けるDaou夫妻によるシングルで、元曲はそうでもないのですが、David Moralesがremixし直したm-2からは、ほんのりジャズの趣が感じられます。
微妙な陰影を感じさせるフレーズの重なりと艶っぽい冷たさのあるVanessa Daouによる歌が、くぐもった空気を醸し出していますね。
余談ですが、上記のEric Kupperのシングルと、この曲はElliot Eastwick & Miles Hollwayによるmix CD“After Hours”で知って魅了され、探し回っていました。

(1996年/ Filter)
♪m-1 Eric
♪m-2 Cat In The Rain
♪m-3 Hut
もう一度T.A.O.Sを。
彼らの1stシングルにして最重要作と言って差し支えないものでしょう。褒めちぎりまくりですね。それほどこのシングルは大好きで、さんざん聴き倒しても、今だ飽きていません。
収録されたどの曲も甲乙付けることが難しいくらい。
イベントでは、m-1とm-3を使った記憶がありますが、最近は追い立てるようなリズムが印象に残るm-4も、良く聴いています。
いかがだったでしょうか。
ジャズの音源はそんなに持っていないので、やっとこさこれだけ挙げるのがせいぜいでした。
紹介した殆どのものは、プログラミングによる要素が入っているので、真性ジャズ・ファンからは苦々しい顔をされるような気もしますが、作りはどうあれ良い音楽は良いということで。
私は上記の諸作群のような音楽で秋を過ごさせていただきましたが、皆さんにとっての音楽的“秋”はどうだったでしょうか。もしよろしければお聞かせ願いたいところです。
ではまた。