この感動、誰かに言いたくてたまらない。涙がとまらないです。

面白い本はたくさんある。けれど面白い上に、本当に出会えてよかった、と思える小説に巡り合うことは少ない。


ナイトスクープ構成作家の百田尚樹さんだから手にとったものの、

宣伝の帯をみて、「太平洋戦争ものか・・・」苦手だなと思っていた。


僕の祖父はインパール作戦に参加したそうだが、生前に戦争の話は絶対にしなかった。

過酷な経験をした人は、容易に口を開かない。したくないことや、みたくないことを沢山経験したのかもしれない、と思っていた。だから、あえて触れたりはしなかった。


ただそれ以上に僕は高校以降、祖父が嫌いになっていて、戦争のことを知れば戦争に影響された祖父を思い出すし、あまり触れたくないというのが正直なところだった。


2年前から、彼の墓にもお参りしていない。

悪い人ではなかったが、女性によくモテていて皆が後々まで迷惑していたからだ。僕が潔癖すぎたり、幼稚な恋愛観しか持ち合わせていないのも、彼の放蕩を嫌悪したり恨む気持ちが大きいからだ。


でも、この本を読んで、祖父のことを知りたいという衝動も起こってきた。戦争を知りたいのではない。

彼にも青春があったのだろう、と深く感じたからだ。


物語は、司法浪人を繰り返すうちに生きる気力を失ってきた25歳の青年が、祖父の過去を調べることから始まる。今の祖父とは血縁がなく、実の祖父は特攻隊員として戦死しているのだが、その実の祖父がどんな人だったのか、ルポライターをしている姉の依頼で調べ始める。


生き残っている祖父の戦友たちに出会ううちに、ゼロ戦パイロット宮部が「臆病者」とののしられながら、「生きて帰りたい」と常に繰り返したことがわかってくる。。それでも、あの尊敬すべき今の祖父を選んだ祖母の前夫が、そんなただの卑怯者だったのか・・・?


釈然としない姉弟は、さらに調べを進める。宮部が、撃墜王に値する類まれな操縦技術をもっていたこと、生きて帰りたいと願いながらも死にゆく戦友を目の当たりにし、帰っていいのかと自責の念で苦しんでいただろうこと・・・


宮部の青春の苦闘や葛藤に、いつしか孫たちは現在を生きる自分たちの悩みや苦しみを重ね合わせていきます。そう、今は平和でモノも溢れてるし、あの頃と重ねるなんて失礼なんだけど、同じような若者がいて、切実に生きる意味を考えているのはそんなにかわらない。


むしろ死を考えたからこそ、ちゃんと生きようとした。恵まれた環境で半分ニート化していて、彼女にふられたり司法試験におちたことでフテくされていた主人公は、いつしか宮部がどう生きようとしたか、知りたいと思い始める。


あんなに生きたい、妻に会いたい、そう思ってたのに宮部はどうして特攻したのか。もしかして、しなかったのか?

そして、ラストにびっくりの結末が待っています。・・・もう、泣けた。これ書いてても泣けてきます。


ミステリーであり、成長小説であり、ヒーローものであり、すぐれた恋愛小説でもある。

すべてが詰まってます。


主人公の考え方もかわります。現実に立ち向かう勇気を持とうと、思うのです。

現実に妥協しかけていた姉も、真実に気づきます。

そして、読んだ僕も。


これから、何回も読むだろう、大切な作品です。打ちのめされた。