裏MOD名盤134 フィラデルフィアに落ちてきた男 | 深夜超特急

深夜超特急

本日はご乗車ありがとうございます。

われわれは訊ねる、

 

まだ何が冒険されうるのだろうか、

 

生そのものよりも、

 

すなわち冒険そのものよりも、

 

一体何がより冒険的なのだろうか、

 

つまり何が、

 

存在者の存在よりもより冒険的なのだろうかと。

 

ーーーマルティン・ハイデッガー

 

 

先日7回忌を迎えたデヴィッド・ボウイ

 

今回は彼が遺した全作品の中で、

 

「Let's Dance」と並び、

 

最もソウル寄りとなった8枚目、

 

「Young Americans」(1975年)をご紹介します。

 

 

Track listing

 

Side one

 

1. Young Americans

 

2. 愛の勝利

 

3. Fascination

 

4. Right

 

Side two

 

1. 幸運の神

 

2. Across the Universe

 

3. 恋のささやき

 

4. Fame

 

Additional musicians

 

ジョン・レノン(ギター、ボーカル)

 

カルロス・アロマー(ギター)

 

アール・スリック(ギター)

 

ウィリー・ウィークス(ベース)

 

エミール・カッサン(ベース)

 

アンディー・ニューマーク(ドラムス)

 

デニス・デイビス(ドラムス)

 

マイク・ガースン(ピアノ)

 

デヴィッド・サンボーン(サックス)

 

ラリー・ワシントン(コンガ)

 

パブロ・ロザリオ(パーカッション)

 

ラルフ・マクドナルド(パーカッション)

 

アヴァ・チェリー(コーラス)

 

ロビン・クラーク(コーラス)

 

アンソニー・ヒントン(コーラス)

 

ダイアナ・サムラー(コーラス)

 

ジーン・ファインバーグ(コーラス)

 

ジーン・ミリントン(コーラス)

 

ルーサー・ヴァンドロス(コーラス)

 

 

本作を語る上で欠かせないのが、

 

フィラデルフィアソウル、

 

所謂フィリーソウルの聖地、

 

シグマサウンドの存在。

 

しかし何故この場所なのか、

 

本作のコンセプトである、

 

白人はいかに黒人音楽のソウルフルさに近づけるか、

 

というのであれば、

 

アラバマのマッスル・ショールズでは、

 

と思われますがそこは元モッズ。

 

最新のステップを踏むため、

 

デトロイトのモータウンに代わり、

 

ヒット生産工場となりつつあった、

 

フィラデルフィアへ驀進。

 

とはいえ一筋縄ではいかないボウイ。

 

シグマのハウスバンド、

 

MFSBに頼らずバンドメンバーは自前。

 

プロデューサーもフィリーの立役者、

 

ギャンブル&ハフやトム・ベルでもなく、

 

ボウイと幾度の死線を潜り抜けてきた戦友、

 

トニー・ヴィスコンティ

 

よって華麗で洗練されたフィリーを装いつつ、

 

シャープでエッジの効いた佇まい。

 

特筆すべき点はやはり表題曲で、

 

先行シングルの「Young Americans」

 

 

ビートルズの「A Day in the Life」の歌詞の一節が引用され、

 

また歌詞に出てくるソウル・トレインへ、

 

後年ボウイ自身が本当に出演します。

 

(緊張してカチコチでしたが)

 

ラース・フォン・トリアー監督の「ドックヴィル」では、

 

エンディングテーマに起用。

 

後述の「Fame」は、

 

「ハウス・ジャック・ビルド」で効果的に使用され、

 

映画ファンにも話題となりました。

 

A面3曲目の「Fascination」は、

 

ボウイとルーサー・ヴァンドロスとの共作で、

 

ヴァンドロスの「Funky Music」をリアレンジ。

 

 

A面ラストの「Right」は、

 

ネットフリックスのドラマ、

 

「マインドハンター」に使用され、

 

シングルカットされた「Fame」のB面にも収録。

 

 

こうして新しいグルーヴを体得したボウイは、

 

エリザベス・テイラーを介し、

 

ロサンゼルスにてボウイが師と仰ぐ、

 

ジョン・レノンと邂逅。

 

懇意になったボウイは1週間後、

 

レノンに電話をし、

 

ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオで、

 

B面2曲目の「Across the Universe」と、

 

B面ラストの「Fame」を録音。

 

前者はボウイにとって、

 

カバーアルバム「Pin Ups」でも取り上げなかった、

 

公式では初めてのビートルズカバー。

 

 

バラードという基本的なスタンスは変わらずも、

 

かなりソウルフルな仕上がりで、

 

レノンも納得の出来栄え。

 

後者はギターのカルロス・アロマー

 

ボウイとレノンの3人が、

 

前回のソウルツアーでカバーした、

 

フレアーズの「Foot Stompin'」を元に共作。

 

後にシングルカットされ、

 

ボウイにとって初めて全米1位を獲得し、

 

ゴールドディスク認定。

 

 

その反響は凄まじく、

 

ジェームス・ブラウンはこの曲を元に「Hot」

 

ジョージ・クリントンは「Give Up The Funk」

 

そして宮沢りえは「Game」としてリリースし、

 

(作詞は糸井重里)

 

さらに彼女は紅白歌合戦で同曲を披露。

 

 

この瞬間こそ日本人にとって、

 

ボウイという白人による紛い物のソウル、

 

所謂プラスチックソウルが、

 

極東の島国のお茶の間にまで浸透し、

 

本物のソウルへと昇華した証ではないしょうか。

 

→TO BE CONTINUED

 

◼️次回予告

 

フィリーソウル特集第2弾です。

 

お楽しみに。