高齢心房細動患者の死亡の陰にフレイル
https://medical-tribune.co.jp/news/2024/0712563681/index.html
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日本では、高齢化を背景に心房細動とフレイルの有病率が上昇しているが、フレイルの進展が高齢心房細動患者の臨床転帰に及ぼす影響は十分に検討されていない。
この論文では、大規模リアルワールドデータを用いて経口抗凝固薬を新規に開始した高齢心房細動患者におけるフレイルの経年的推移(軌跡)を包括的に評価し、臨床転帰(死亡、塞栓症、大出血)との関連について解析。
その結果、高齢心房細動患者の90%超がフレイルを合併しており、死亡例の75%は1年以内に中等度または重度のフレイルを呈していた。
・直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の登場などにより、心房細動患者における塞栓症リスクが低減している一方で、高齢者で有病率が上昇しているフレイルの合併や進展が心房細動の臨床転帰に及ぼす影響は明らかでない。
・静岡県国民健康保険診療データベース(SKDB)から2012年4月~18年9月に経口抗凝固薬(ワルファリンまたはDOAC)による治療を開始した65歳以上の非弁膜症性心房細動患者6,247例(平均年齢79.7±8.1歳、女性45.0%)を特定。3年間追跡して、フレイルの経年的推移と臨床イベント(死亡、塞栓症、大出血)発生との関連を検討した。
・フレイルの評価には電子カルテ情報から自動的に重症度を算出するelectronic frailty index(eFI)を用いた。
塞栓症は虚血性脳卒中と一過性脳虚血発作を含むイベントとし、大出血は頭蓋内出血、消化管出血または出血性ショックを伴うイベントと定義した。死亡例については死亡前1年間のフレイルの重症度、塞栓症、大出血を評価した。
・ベースライン時のフレイルの重症度は、なし(eFI 0.12以下)が7.7%、軽度(同0.12超0.24以下)が30.1%、中等度(同0.24超0.36以下)が35.4%、重度(同 0.36超)が25.9%で、90%超がフレイルを有していた。
・3年後に重症度が変化していなかった症例は約30%で、フレイルは動的に推移することが示された(原文中 図1)。ベースライン時にフレイルがなかった症例の約半数が軽度以上へと進行した。逆に、重度からフレイルなしまたは軽度に改善したのは約7%だった。
・フレイルの重症度別に死亡率を見ると、フレイルなしが15.0%、軽度が18.1%、中等度が25.1%、重度が37.0%と、重症度が高いほど有意に高かった(傾向性のP<0.001)。
コメント;
・結局、コントロール(心房細動がない症例)はないのですね。
・原文中の図2での「発生1年前のフレイル重症度分布」ということですが、3年間の短期間のフォローなのに、どうして「発生1年前」なのでしょうか。
・図1は、一見死亡例が重度フレイルに収束しているようにも見えますが、実はそうでもないようです。線の太さが重要なのでしょう。横軸は時間経過ですが、縦軸の意味するところがよくわかりません。4色の長さの総和は一定ということなのでしょうが、はたしてそうなのでしょうか。
・静岡県国民健康保険診療データベース(SKDB)の活用。すごいですね。以前、北欧などの論文で、こういったタイプのデータベースが活用されていましたが、日本もやっとこういう時代になったと思うと感無量です。
・いわゆる保険病名(たとえば抗血小板剤使用者への「一過性脳虚血発作」)を多用(乱用、誤用)する自分としては、データベースの病名自体を信用していいのかと躊躇してしまいます。さらに懺悔(白状)すれば、発作性心房細動の場合も、DOACを使用する際には「非弁膜症性心房細動」の病名をつけています。反省。