《舌癒着症》 という用語を使用する耳鼻咽喉科クリニックでは、毎週土曜日の午後、複数の患者を集めた上で、《舌癒着症》 説明会」 と呼ばれるものが開かれています。  (2011年当時)
 
この 「説明会」 は、助産師や矯正歯科医から紹介されるなどして、耳鼻咽喉科クリニックに問い合わせをした方々が診察を受ける前に一律に参加させられるものです。
 


✅  「2011年10月22日」、または、それ以前それ以降、最近、いつでも構いません。この 「説明会」 に参加したというご経験をお持ちの方はいらっしゃるでしょうか? そこでどのような説明を受けられましたか?

✅  「説明会」で手術映像を流す際、今から示す 《説明トーク》 を聞かれた方が実在するのかとても気になります。少なくとも 「2011年10月22日」にはこのような説明は一切ありませんでした。
 



 <「本人尋問」 における耳鼻咽喉科医の発言内容>

 
✅  「2015年8月27日」 午後、原告である私、及び、被告である耳鼻咽喉科クリニック院長への 「本人尋問」 が、東京地裁611号法廷で行われました。
 
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    ◆ 《それから、次の質問なのですが、説明会で実際の手術映像を流しておられますよね。それで、これまた報告書によりますと、そのときはやっぱりなかなかリアルなので、その場を和らげるためにいろいろなことを話をしながら見せるということなんですが、問題の  (口腔)  前庭拡大術の上側を切っているときの、大体全て毎日御説明なので、覚えておられるということなんですが、そのときはどういうふうに、ある意味シナリオというか、せりふとしてはおっしゃっているんですか。それをちょっと言ってみていただけますか。》 

      ( 【被告本人調書】 pp.32-33)
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✅ この質問は、「本人尋問」 の最終盤、矢尾和子裁判長から耳鼻咽喉科医へ向けられたものになります。
 
✅  「上唇小帯」 の手術内容について、どのような説明を 「説明会」 で行っているのか、いつも診察室で行っているのと同じように今この場で再現してもらえないか、という趣旨の質問です。
 

耳鼻咽喉科医は声をうわずらせながら、早口でこのように答えました。

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    ● 舌の後の映像に変わったときに、 「実は上唇側も切ります。このときも上唇がある筋  (スジ)  だけではなくて、奥に縦に走る筋肉があります。これ下制筋といいまして、これを切ることで鼻の穴が広がり、鼻の横が広がり、鼻の呼吸が良くなるからです。例えばあの方の歯並びを見てください。歯並びなんかも非常に悪い。これは上唇の癒着が原因して歯並びが悪くなるということも言われております。ただ、今回筋  (スジ)  だけ切るんではなくて奥を切る意味は、鼻の通りを良くするために切るということで、こんなに傷が深くなるんですよ。でも、そんなにすぐ手術は終わるから、大丈夫ですよ。」 と、こういうふうに言っています。》 
 
      ( 【被告本人調書】 p.33)
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 【被告本人調書】

 

 
 
 

 <耳鼻咽喉科医の主張/まとめ>


✅ 裁判長が上記の質問の中で 「報告書」 について言及していますが、この 「報告書」 とは、2014年6月17日付で耳鼻咽喉科医が裁判所に提出した書面の内のひとつです。
 
ここに、このような記載があります。
 
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    ● 《そして、38~40枚目のスライドのところで、実際に当院で私が手術を行っている際の状況説明を、動画で放映しています。》 

    ● 《39枚目は0歳児に対する手術の映像です。40枚目は成人に対する手術の映像で、このときに放映している動画については、乙A第2号証として提出をしてあるものです。》 

     ● 《この動画を放映しながらの説明トークについては、ほぼ、乙A第2号証の別紙として提出してあるものに書いてあるとおりです。一般の方にとってはグロテスクな動画ですので、緊張をほぐす意味で軽いジョークを飛ばしながら説明を行うのですが、毎週のように繰り返し同じ説明を行っており、したがって、説明トークについてもほぼ変わりはありません。》 

    ● 《この動画において、2分1秒以降では、上唇側、すなわち口腔前庭に切開を入れ、鼻中隔下制筋を切断しているところを、言葉や模式図などではなく、まさに実際の映像としてご覧いただいているのです。》 

    ● 《ここまで説明をするのは言うまでも無いことですが、実際に治療を受けるか否かを患者さんご自身の自由意思で判断してもらうべく、そのために必要な材料は徹底的に提供するべきであると考えているからです。》 
 
      ( 【乙A第7号証】 「報告書」 pp.2-3)
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 【乙A第7号証】




✅ さらに、2014年6月17日付提出の 【乙A第2号証】 の別紙では、「上唇小帯」 の手術内容について、毎回このような 《説明トーク》 を 「説明会」 で行っているとして、耳鼻咽喉科医によるシナリオ調の記述を見ることが出来ますので、こちらも併せてご覧ください。

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    ● 《今度は上唇側です。見てくださいこの歯並び。上唇が癒着していると歯並びが悪くなるんです。では大人になって切ったら歯並びが良くなるのか?  そうはいかないです。では何のために切るのか?  はい、これね、映像ご覧になっておわかりの通り、スジより奥の筋肉を切ってますね。この筋肉を切ることで鼻の穴が広がって鼻の通りがよくなる。同時に鼻の下が伸びて口の横が伸びて口角が上がって、二次的には笑顔の顔つきになっていくことが多いです。この筋肉は鼻中隔下制筋と言いますね。スジより奥の筋肉を切っているのがわかりますよね。ここも縫わないんです。このままで帰ります。そうしたらこの傷は穴が開いたままですか?  そんなことはないですね。この傷もやがてふさがって全く分からないくらい綺麗に治りますからね。》 

      ( 【乙A第2号証】 別紙)
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 【乙A第2号証】 

 
✅ 2014年6月17日付提出の 「報告書」 【乙A第7号証】、2014年11月26日付提出の 「被告陳述書」 【乙A第8号証】【被告本人調書】 には、このような記載もあります。
 
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    ● 《なお、スライドのタイトルは 『舌癒着症講演会』 とされていますが、追って報告しますとおり、オトガイ舌筋に対する手術と、鼻中隔下制筋に対する手術の両方について説明を行っております。》 
        ( 【乙A第7号証】 「報告書」 p.1)

    ● 《このうち、18枚目のスライドでは、癒着症手術では、オトガイ舌筋だけではなく、鼻中隔下制筋も切断を行うものであり、そのことにより、鼻の孔や小鼻が広がることで鼻閉が改善しうることなどについても説明を行っています。》 
        ( 【乙A第7号証】 「報告書」 p.2)

    ● 《鼻孔や鼻翼が広がることは、本手術に伴う合併症ではなく、むしろそれにより鼻呼吸が改善しうるというメリットにつながることとして捉えられるものです。》 
        ( 【乙A第7号証】 「報告書」 p.6)

    ● 《舌・喉頭矯正術と、口腔前庭拡大術は、通常はワンセットで行われており、両者を併せて舌癒着症手術と呼びならわすことが多いです。》 
        ( 【乙A第8号証】 「陳述書」 p.1)

    ● 《私としては、総合的な呼吸改善のためには、両方の手術を同時に行うことが重要であると考えています。》 
         ( 【乙A第8号証】 「陳述書」 p.2)

    ● 《舌癒着症というのは、舌癒着が起きることと上唇の口腔前庭拡大術、2つをあわせて。》 
         ( 【被告本人調書】 p.9)

    ● 《ベビーも成人も鼻中隔下制筋を切ります。》 
         ( 【被告本人調書】 p.32)
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 【乙A第7号証】
 
 
 【乙A第8号証】 

 
 
 【被告本人調書】 
 
 
  

✅ つまり、この耳鼻咽喉科医の主張によると、いつ如何なるときも、一人の例外もなく、「説明会」 に参加した全ての受診者へ向けて、以下の3点を明確に説明しているということになります。
 
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   《舌癒着症》 手術なるものが、「舌」 を切る手術と 「上唇小帯」 を切る手術を 《ワンセット》 で行うものであること。
 
   「上唇小帯」 を切る手術が、実際は、《鼻中隔下制筋》 という顔面の筋肉  (表情筋)  を切ることを目的とした手術であること。
 
③  この 《鼻中隔下制筋》 を切ることで、《鼻の穴が広がり、鼻の横が広がり、》 《鼻の下が伸び》 る。つまり、「上唇小帯」 を切る手術が、《鼻の穴  (鼻孔)  と小鼻  (鼻翼)  が広がり、鼻の下が伸びる》 という、外見的な影響を引き起こす手術であること。
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 ✅ この3点について、全ての受診者に赤ちゃんの手術動画と成人の手術動画を見せながら説明を行っているのだから、説明責任を適切に果たしている、要するに、手術を受けた者は全て、この ①・②・③ の手術内容を承知の上で手術に同意したのだから、「手術承諾書」 にそれらの記載がなくとも、耳鼻咽喉科医に非のあるところは一切ない、という主張です。
 
 

私が実際に経験した出来事は、今も尚、この耳鼻咽喉科医が事実だとして主張する出来事とはあらゆる面で真っ向から対立し続けています。しかし、いずれにしても、「真実」 は唯ひとつであり、それは確とした揺らぎようのないものです。「真実」 がひとつであるということは、当然のことながら、私に起こった事実と耳鼻咽喉科医の主張する事実が併存し得ないことを意味します。

 しかし、「東京地裁/高裁」 は、ともに、耳鼻咽喉科医の主張を全面的に受け容れる内容の判決を下しました。
 

   (一審での一部勝訴  (20万円)  は、本筋である耳鼻咽喉科医の説明義務違反を認めず、代替の治療方法を提示しなかったという脇道部分のみの認定だったため控訴しました。)