ゾンビ映画の系譜(3) | アッシュのブログ

ゾンビ映画の系譜(3)

とりあえず、「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」と「地球最後の男」に触れたので、一般的な話としては、あとは「ゾンビ」などについて文明批判がどうしたとか言えば体裁が整うところにたどり着きました。

しかし。
「ゾンビ」から「ランド・オブ・ザ・デッド」へとロメロの頭の中を追ってもあまり面白くないので、どっちかというと、ここからはゾンビ映画以外の映画との関連について考えてみたいと思っています。

その前にもう少し整理してみます。
こんなことをいちいち考えるのも面倒くさいかもしれませんが、「ゾンビ」以前はこのタイプの映画はひとつのジャンルになっていなかったので、ジャンルとして固まる前の状況を考えるには、恐怖映画としての特徴を押さえておいた方がわかりやすいのです。

ゾンビ映画の恐怖映画としての要素を思いつくまま挙げてみますと
(1)怪物に襲われることの恐怖
(2)襲われると怪物に変化してしまうおぞましさ
(3)立て籠もって対抗する緊迫感
(4)予測できない社会崩壊に対する不安
(5)混乱が引き起こす人間性の喪失に対する不安

こんなところでしょうか。
「地球最後の男」と「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の両方にこの5つの要素すべてが含まれています。

(1)は怪物や幽霊が出てくる恐怖映画では共通の要素です。
(2)は吸血鬼映画の流れでよく見られるモチーフです。
(3)もまた、襲われる側が立て籠もるというのは恐怖映画以外にも一般にみられるシチュエーションですね。

(1)~(3)は、旧来の恐怖映画や一般映画にみられる特徴であって、これだけではジャンル形成するほどの特徴にはなりません。ゾンビ映画がジャンル化したのは、(4)(5)の特徴をあわせて備えたからです(私はそう思います)。

(4)予測できない社会崩壊に対する不安
これは前にも触れたように、冷戦時代にあって核攻撃で一発で人類が滅んでしまう恐れとか、化学兵器や生物兵器に対する恐怖感とか、さらには「沈黙の春」のような科学文明の行く末に対する不信感などが根底にあるでしょう。また、アポロ計画など、人類の地球外への進出が進行していくなかで、逆に外からやってくる可能性もあるのではないかという想像もあったでしょう。地球外からの侵略による危機というのはSF映画やアニメでおなじみのネタです。

(5)混乱が引き起こす人間性の喪失に対する不安
生き残りを賭けた状況での仲間割れとか裏切りとかいったドラマが、物語が一直線に進むことを妨げるのもゾンビ映画の特徴です。恐怖が外部だけでなく内部にもあるというのがポイントですね。これもゾンビ映画特有のモチーフではなく、一般映画にみられるものですが、恐怖映画において多用されるのはゾンビ映画ではないかと思います。

(4)(5)は、70年代以降においては、SF映画やアニメの主要なモチーフでもあります。パニック映画でもよく使われますね。ゾンビではなく時代感覚から出てきたモチーフです。これは、「ゾンビ」や「マッドマックス」で顕著になりましたが、すんなりと観客の共感を得ることができ、大はずししにくいのでさまざまな映画で多用されるようになったんじゃないでしょうか。また、(4)が規模の大きな演出との相性がよいのも見逃せません。

80年代以降に量産されるロメロの亜流作品では、(4)(5)が定型的になりがちです。低予算で簡単に映画がつくれるテンプレートとしてゾンビ映画が機能するようになり、ひとつのジャンルとして固まったわけですね。

次は少し古い映画について考えてみようかなと思っています。未定ですが。