DVD分析37「メスキアの文字」
第2話にはメスキア市の描写がある。その中で掲示板に貼られている文章で、この世界で使われているらしい文字を見ることができる。
原作がモデルにしているのは、メソポタミアの神話や旧約聖書の記述なので、楔(くさび)文字と呼ばれる文字が馴染む。楔文字は、粘土板に割り箸のようなものを押しつけて書いたらしいが、画像を見ると曲線部分もある。
それ以前に粘土板ではなく紙が日常的に使われているみたいだ。中にはパズズに渡された指令書のように、用が済んだら燃えるような、特殊な処理がなされた、あるいは魔法を掛けられたものもある。紙がこのように使われているのであれば、筆記用具は先ほどの割り箸ではなく、何かしらペンのようなモノになり、曲線描写にも不都合はない。
楔文字は表音文字であり、アルファベットと同じような使い方をする。それがスーマールのモデルになったシュメールでは、重ね書きなどによって特殊な文字が追加されている。またアラム語などでは、記号化も進められている。
ここで画像を見ると、本文2行目の左端と、4行目にかなり長い部分に渡って同じ記号の羅列がある。「作画が大変だから適当に書いてコピペしたんだろ」という無粋なことを言わなければ、これは特殊な固有名詞を表現しているのではないかと推測される。「伝説の英雄ギルガメス陛下」みたいな感じだね。
エジプトのヒエログリフとかでは、このような固有名詞は新たに文字が作られたりするので、この世界の文字体系は表音文字だとわかる。そして意匠を見ると楔状だったり、V字だったりの部分が多いので、楔文字から進化してシュメール語と同時代で「紙」が存在する前提でのものだと考えられる。
なかなか雰囲気を捉えた素晴らしい仕事なのではないかな。
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