【CEROレーティング】ゲームのレーティングに関する報告 | 遠藤雅伸公式blog「ゲームの神様」

【CEROレーティング】ゲームのレーティングに関する報告

 8/29(金)に遠藤が理事を務める日本デジタルゲーム学会の公開講座が開かれ、「テレビゲームのレーティングと社会的受容に関する調査報告書」というレポートが、CERO(コンピュータエンターテインメントレーティング機構) より発表されたことを受け、その研究会メンバーより報告があった。一般的な話はファミ通さんがきちんと記事にしてくれているので、こちら を参照して欲しい。


 遠藤の報告は、遠藤もよく知らなくて、今回の講座で納得した部分の話。


 まず「CERO」だけど、「特定非営利活動法人」という独立した存在で、ゲームのレーティングのために存在する審査組織だ。「映倫」とか「ソフ倫」とかと同じようなモノだね。


 ゲームソフトを作ったら、ここに審査をお願いして内容に関するレーティングを決めてもらう。その種類は現在5種類。CEROのサイトに詳しいのだが、そこから引用させてもらうと、


CEROのレーティングマーク

 こんな分類になっている。左がレーティングマークで、それぞれの色がそのレーティングを表す帯色らしい。ゲームのパッケージを見ると、左下にこのマークが表示されている。これに対する一般的な疑問と意見は次のようである。


◆「A」とか「Z」とかって何だかわからない


 このシステムになる前は、年齢別レーティングというのを行っていた。この時のマークはこんな感じ。
以前の年齢別レーティングマーク
 年齢とリンクした表示で、現行のものがアルファベットの下に見にくい字で年齢表記してあるのに比べて分かりやすい。では、なぜこれではいけなかったのか?それは「18才以上」という表記が成人指定と同一視されてしまうかららしい。それゆえ「D-17才以上」というわけのわからないランクが生まれてしまったわけだ。


 17才以上と18才以上の差は、成人指定として扱うのは否かという差になる。


◆「A」の商品を買ったのに、小学生が読めない漢字ばっかりだ


 このレーティングは年齢という尺度で測られているが、倫理や表現の問題だけで、内容に関しては反映されない。中学生にも読めないような漢字がバリバリ出てくる、大学生レベルにちょうどいい難易度のゲームであっても、倫理や表現に何の問題がなければ「A(全年齢)」にレーティングされる。

 B以下が「~才以上」と定義されているので、「A=12才未満向け」と曲解されるのは当然だよね。


◆レーティングに対して販売規制がないのはおかしい


 販売規制に関する論議は、「グランドセフトオートIII」の発売をキッカケに起こった。05年6月に神奈川県が最初に販売規制を掛けたのだが、逆に話題になって他の県に行って買う行為を助長したようにも見える。販売規制は自治体が個別に行うのでは意味がないのでは?というのが一般認識。

 実際にはCEROレーティングには、発売を許可しない「禁止事項」があり、これに抵触すると「Z」さえも与えられない。このようなレーティングは他で例を見ない厳しさであり、実際にはゲームの倫理・表現は、「Z」と言えども他のメディアの表現に比べて許容範囲が狭いらしい。


 要するに、販売規制されるべき作品には、最初からレーティングが与えられない。実は審査は5段階ではなく6段階になっているわけだ。PCソフトなどで「ソフ倫」が成人指定で許可している内容も、CEROレーティングだと「Z」すら許可されない場合が多々あるらしい。

 CEROレーティングを認知している人でも、この禁止事項による排除ランクがあることは知らなかったりするのだ。


 このように、作り手にとっても受け手にとってもCEROレーティングというのは、結構表現に制限が掛かる。むしろ「Z」に関しては成人認定として販売を分離するなどの処置をとり、表現に関しては規制を緩和あるいは撤廃してもいいのでは?という意見もある。


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 報告書の中に有識者へのインタービューがあるが、「ビデオゲームの暴力的表現が青少年に影響を与えるのか?」については「与える」「与えない」「わからない」の3つに集約される。それぞれの意見を持った人の話が面白かったので、両極端な2先生の意見を要約して紹介したい。


◆『与える』派

 矢島正見氏。犯罪社会学、中央大学教授。青少年問題研究会理事長。


 メディア情報が、青少年の人間形成に全く影響を与えないとは言い切れない。例えば、父親は子供に影響を与えるというのは、一般的に当然与えられると認識されている。しかしこれは、自然科学的に立証されているわけではなく、定量的な検証も行う術がない。

 同様に、メディア情報も影響を与えると一般には認識されており、ゲームからの影響も青少年は受ける。これは因果関係が立証されているわけではないが、相関関係にある。

 青少年にとって、年齢に沿って必要な情報もあり、ゲームもその例外ではなく適正な内容がある。それゆえ、何かが起こることを未然に防ぐことが要求される現在では、レーティングのような基準が有効だが、一般に周知されていないのでは意味がない。さらにその評価基準も、内容などを質的に判断すべきだ。


◆『与えない』派

 斎藤環氏。精神科医。爽風会佐々木病院診療部長。青少年健康センター参与。


 青少年犯罪率は、60年代初頭をピークに70年代末からピークの1/3程度で現在まで推移している。日本の若者は世界的に見ても凶悪性が低く、むしろ問題は非社会性の方にある。青少年の犯罪率が低く安定している時代は、ビデオゲームの時代と一致し、日本に280万人存在すると言われるオタク層で、凶悪犯罪を起こす人は稀である。

 日本の若者は親に養護されているため、金銭目的の犯罪とも縁がないし、「不良」と呼ばれる存在ももはや絶滅危惧種だ。戦後の50年代などは、少年犯罪など日常茶飯事だったので、メディアも相手にしなかったが、今は珍しいためメディアが話題にしやすい。しかし「ゲーム脳」や「ゲームで凶暴化」というのは、フィクションとしか思えない。だいたい人殺しを計画している人物は、ゲームでトレーニングするよりも、動物殺した方が手っとり早いと思う。

 レーティングに関しては親たちへの周知が必要で、販売規制とかが行われるなら、18才以上の表現は大幅に緩和すべきだ。インターネットなど他のメディアが自由である以上、規制する意味もない。「ゲーム脳」や「脳内汚染」などを信じている保護者も、ゲームに対する実体験がないゆえに「けしからん」なので、教育コンテンツや認知症のリハビリに使われる実態も知らない。

 モラルは自由を背景に獲得できるもの、高いモラル維持のために自由度を高くあって欲しい。


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 研究会は提言として、9つの項目を挙げている。それぞれに遠藤の感想を書いていこう。


◆CEROレーティングの周知活動を行う

 「CERO(セロ)」という名前が分かりにくいのでは?「映倫」「ソフ倫」とかにならって「ゲー倫」でもいいんじゃないかな、とか乱暴に思う。これも周知が徹底すれば気にならなくなるのだろうが、「ゲーム」という言葉が入った方が一般に分かりやすいのでは?


◆CEROマークを分かりやすく

 A~Z以外に、コンテンツディスクリプターというマークも使われている。
コンテンツディスクリプター

このマークも全然普段見ていない。裏面にヒッソリと全年齢ではない理由を表示するものだが、国内販売に限って言えば「このゲームには、過激な暴力表現があります」とかの文章の方が、一般の方には丁寧なのではないかと思う。どうせ一般でないゲーマーは見ないし(笑)

 同じ意味で、前マークの数字そのモノの方が認識しやすそうなのと、折角カラーが設定されているのだから、タイトル背のマークにはその色を使えば分類がわかりやすいのに、と思う。


◆審査基準や判定理由の情報公開

 ゲームを実際に作る立場としては、レーティングを分ける決め手になるのが何なのか?その基準は明らかにならないのか?という疑問があった。それに関しては、あえて公開する性質のものではなく、時代や場合によって変化することで形骸化に対応するらしい。

 趣旨はわかるのだが、アルバイトが対応しているとの話を聞くと、何か釈然としないものはある。最低でも判定理由を公開してもらえると、ユーザーへのメッセージに繋がると思う。是非公開してほしい。


◆審査の厳しさの緩和を検討する

 18才以上を成人向けとして、他とは扱いを変えるのには賛成。「C」判定(15才以上)のモンハンが、中学生にはやっていることを考えると、実態に合わせてほしいと思う。


◆D区分の廃止

 17才以上の「D」と18才以上の「Z」の差など、何のためにあるのか?と誰でも思っているだろうが、大人の都合でできたような区分の廃止には賛成。


◆幼児用区分の新設

 ゲームが一般的なモノとなり、孫に買ってやる時の目安になるなど、この区分の新設は賛成。遠藤は特に初めてゲームで遊ぶ人を意識したゲーム作りをしているので、文字表現や難易度を含む「子供でも安心」マークはありがたい。


◆審査方法の改善

 現行の審査は問題部分のビデオを提出し、それを見て判断しているらしい。映像表現のみで判断されるわけだね。これを実際にプレイする方式に改善できないか、という提案なのだが、テスト費用が高くなりそうで微妙。ビデオでの審査には不信感もあったので、ユーザーの不利益にならないなら。


◆新しいメディアのレーティングに取り組む

 携帯電話ゲームへの取り組みが直近での課題らしいが、即時性が要求されるキャンペーン用のコンテンツとかに、CEROのレーティングを取らないと配信させないとか押しつけられても困る。多分・・・非審査のコンテンツばかりになる予感。なぜならプラットフォームをコントロールし切れていないメディアだからね。


◆自主規制活動を促す

 成人向けに対する自主規制に関しては賛成。多分成人モノは手掛けないだろう遠藤としては、エロ紛いと一緒に並べられた売り場に子供がいる姿はいかがかと思うので。

 一面として、成人向けを嗜好する一部のユーザー向けに表現の規制が緩和されるのはいいのかも知れない。個人的にはゲームなんかより実物主義になれよ!と声を大にして言いたいのだが。

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