初見の方へ：声優のすみぺこと上坂すみれさん、音楽、映画多めの趣味ブログです。

ネタバレを含みます（ここから先がネタバレです、と書いてあります）。

最後に観たソフィア・コッポラ監督作が「マリー・アントワネット」で（随分前だな・・・）衣装や美術や音楽はいいけれどそれだけで中身には乏しいというのが率直な感想。なので「プリシラ」も題材が題材なだけに危惧していたが、幸い杞憂に終わった。

エルヴィス・プレスリーの西ドイツでの軍務中に知り合った2人。親の転勤で異国暮らしのプリシラ。誰も信用できないと打ち明ける、スターだからこその孤独を抱えるエルヴィス。孤独な2人は惹かれ合うが、いざ始まったエルヴィスとの生活は残念ながらプリシラの孤独を埋めるものではなかった。

愛し合っていても上手くいくとは限らないというセレブに限られたことではない普遍的なテーマがあるし、プリシラは「ロックの王様」であるわがままな夫に耐えて生きることに満足しなかったという女性の自立のメッセージも含まれている。

それにしても産気づいたプリシラの行動（詳細は観て確かめてほしい）を描いた場面は命がかかっている状況でも「夫の妻」として振る舞わなければならないという理不尽さ、女性に対する抑圧が凝縮されていて短いながらも強烈に印象に残る。

原作のプリシラ自伝は十代の頃に読んでけっこう刺激的な箇所もあったと記憶しているが、スキャンダラスな方向に走ることもなければエルヴィスを偶像化もせずにあくまでプリシラの物語をフェミニズムの視点も交えてしっかりと描いた作品。

エルヴィスと出会った時は14歳だったプリシラが次第に大人びていき、一方でエルヴィスは着実にくたびれていくのも見事。

チラシの写真。その後ネタバレです。

「Baby I Love You」（ロネッツのオリジナルではなくラモーンズのカバー！）で始まり「I Will Always Love You」（ホイットニーではなくドリー・パートンの原曲！）で終えるという歌詞とシーンがマッチした選曲が見事！バージョンの選択もこれで正解、特に後者はホイットニーのカバーだったらまったく合わなかったと思う。

ラモーンズのディー・ディー・ラモーン（ベース）は米軍人の父親の転勤で西ドイツで生まれ育ったわけだけど（だからこそドイツ軍ネタの「Blitzkrieg Bop」が生まれた）そこまで意識した選曲だとしたらすごい。

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エルヴィスではなくあくまでプリシラの物語「プリシラ」（ネタバレあり）