先日お友達に誘われてロンドンのサパークラスに行った。普段はお食事を提供するサパークラブらしいが、今回は日本からこうじ(糀)マスターが来英ということで、お料理のデモンストレーションと説明もあるクラスも一緒になっていた。今紺有花さんという石川県の発酵食大学でも講師をしていて、5冊の出版物があるそう。私は彼女の真横に座っていたので、お食事の時に出てきた一品一品のレシピも口頭で教えてもらったのをメモした。
普段からパウチに入っているマルコメの生塩糀を使って、お肉を漬け込んでから調理したり、単純に塩の代わりに使っていたが、もっと美味しく活用できるコツをいろいろ教えてもらって、とてもタメになった。これまで英語で”こうじ”について書く機会もあったが、いつもkojiとアルファベット表記をしていたので、漢字の書き方に注意を払っていなかった。
糀:
明治時代に日本で作られた和製漢字、国字。蒸し米に麹菌を混ぜて発酵させて作った糀にのみ使われる表記。従って、米糀のみ。発酵した様子が米の上にまるで白い花が咲いたかのように見えるので、このような漢字になったそう。何だか、可愛い漢字だ。伝統的には、米味噌・日本酒・みりん・酢・甘酒の原料、言葉を換えれば原材料を発酵させるプロセスエイドとして。
麹:
中国でもともと使われていた古い漢字。こちらは米だけではなく麦・大豆などの穀物で作られている全ての麹に使われている表記。麦麹は麦みそ・焼酎の、豆麹は豆味噌の発酵エイドとして。
ロンドンでフレッシュな生こうじを探そうと思ったことはないので、あきらめ半分で既に出来ているパウチばかりを使っていたが、今回講師の方にロンドンでも乾燥こうじが買えますよと教えてもらった。そうすれば、パウチよりも大量に出来るのでもっと活用できそう。チビチビけちって使わなくても済む。しかもパウチは店頭では常温で置いてある商品なので、もちろん食品添加物が入っている。発酵食品は二酸化炭素が出るのでパッケージに入れた後に膨らんでしまうこともある。それを防ぐ(言い換えれば、発酵をとめてしまう)のが酒精(しゅせい)。よく味噌に入っているが、日本国内の法律では表示義務があるのかないのか、ということは不明だ。味噌のパッケージには表示されていないことが多いような。以前関わっていた自然食の味噌は2種類あって、殺菌されていないバージョンのものは、外気の温度や湿度によってパッケージ後に膨張してしまうこともあり、いろいろと輸送時期など執行策度をしていた。普段買っていたマルコメの生塩こうじには”酒精”とちゃんと書いてあった。発酵食品ならではの酵母というものがどこまで生きているのか、ということは疑問である。なので、ベストを言えば酒屋さんなどで買えるフレッシュ生こうじ板だが、そんなものは手に入らないので、その次は乾燥こうじで自分で塩こうじを用意した方がよさそうだ。
塩こうじの作り方(講師の方から):
乾燥こうじ200g+塩70g+硬水260g (ミネラルが多いほうが良い)
講師の方がロンドンのジャパンセンターで買ったという安芸広島ますやみそ乾燥米こうじを見せてくれた。裏のパッケージには塩こうじの作り方はこう書いてある。
1.乾燥米こうじ一袋300g、食塩90g、水450mlを保存容器の中で混ぜる。
2.発酵してガスが出るのでふたはゆるめに閉め、常温で保存。
3.2-3日に一度混ぜ合わせ、1週間から10日で完成。
4.出来上がった後は密閉容器に入れて冷蔵庫で保存し、なるべく早く食べる。
”なるべく早く食べる”とあるので、講師の方の分量で作ってみることにする。
少し調べると、マルコメから”プラス糀”シリーズという商品が出ている。本来普通に糀・麹を使って製造されるべき発酵食品の味噌の甘酒などの商品が、”糀入ってますよ”という売り文句と共に販売されている。これはおかしい事実。日本食の材料は発酵食品ばかりなので(味噌、納豆、鰹節、漬物、醤油、甘酒など)、もともとこうじは普通に使われていたはずなのに。これは、ほとんどの調味料が不自然な形で醸造されているということ。化学成分を使ってスピードアップさせたりと。これでは酵母が生きた発酵食品、と思いながら食べていた人たちをだましていたことになる。もちろん、素晴らしい本物の商品もたくさんあるので、スーパーで安売りになっているようなものは出来れば全て避けたほうがいい。
その他に、教えてくれたレシピで印象に残ったもの数点:
鶏のから揚げ
胸肉を重さ20%の水、4%の塩こうじ、2%の塩に一晩漬ける。この時好みでセロリ、にんにく、しょうがも一緒に漬けると味に更に深みが出る。水を入れることによって水分が抜けていかないので挙げた時に、中がジューシーになるし、表面も焦げない。塩を加えると塩こうじの味がしまる。普通に片栗粉などで揚げる。
甘酒ピーナッツソース(唐揚げと一緒に)
甘酒、ピーナッツバター、醤油を好みで適当に混ぜる。
大根と昆布のごはん
米一合に対し、大さじ一杯の塩こうじで普通にご飯を炊く。細断にした大根を塩で少し揉んだ後に水分を絞る(やりすぎないように)。蒸らしている時間の時に大根と細断にした昆布(多分細切り昆布のパッケージ買いで)をご飯に混ぜる。ご飯の熱だけで大根はしんなりする。漬物と一緒に食べると、とても美味しかった。
甘酒アイスクリーム
甘酒90%、ダブルクリーム10%(Veganの場合はココナッツミルク)を混ぜて冷凍庫に入れる。好みでクラッシュしたフルーツも混ぜる。甘酒の糖分でカチンココチンに凍らないので、アイスクリームマシーンを使う必要はなし。
最後に、塩こうじや甘酒を使って料理をすると本来の味が引き出されて美味しくなる。しかし、もともと生臭い食材などに合わせると生臭さが強調されてよくないので、全ての食材にぴったりというわけではない。このご時世、自分の体の免疫力をアップするためにも糀をもっと活用しようと思った。