いらっしゃいませ、ネットの袋小路へようこそ。さぁ、どうぞこちらへ。
いい加減ネタボケを知らない友人を放っておくのは流石にどうか、と思いましてね。
そうですね、今日は私の将来の話でも聞いていただきましょうか。
え?その前にこじゃれた小話を聞かせてくれって?・・・ハハハ、お客さん、抜け目がありませんね。
いいですよ、過去を掘り返したらちょっとした小話がありましたので。
それでは聞いてください。「こんな残念な人生を歩んでる人もいるんだ。」
あれは、確か1年ほど前の話です。友人2人と近所のゲーセンに行ったんですよ。
とは言え友人達とはやるゲームのジャンルが違うので、全員適当に遊んでましたけど。
私は弐寺を何プレイかした後に、格ゲーコーナーで鉄拳5をプレイしていました。
そしたら友人の一人がやってきましてね、私のプレイを見ていました。
友「結構やるな」
私「結構やってるからな」
友「俺やるゲーム無くてなぁ」
私「ふーん」
友「俺ちょっと麻雀やってくるわ」
私「んー」
そう言って友人は50円の麻雀ゲームをプレイしに行きました。しかし2分もしない内に戻ってきました。
私「やけに早くないか?」
友「1牌もツモれずにトんだんだけど」
私「・・・は?何、アガれなかったって事?」
友「いや、十三不塔喰らって一発でトんだ」
私「十三不塔喰らったって親で16000払いだろ?トばねぇじゃん」
友「俺起親でワレメだった」
私「・・・」
友「俺50円無駄にしただけ」
私「・・・」
皆さん、こんなに残念な人生を歩んでる人もいる、と言う事を忘れずに生きていってください。
いかがでしたか?私の小話、楽しんでいただけたなら幸いです。
では次は本題、私の将来についてお話させていただきますね。待って、帰らないで。
現在私は大学1年生です。この4月から2年生になります。
再履修がちょっぴり人より多めなので、3年生に進級するには少し苦労するでしょう。
何とかこんとか頑張って、2年生の全過程を終えました。そして成績表が届きます。
取れた単位は56単位、3年生に進級する為に必要な単位も56単位。
ギリギリです。非常にギリギリながらも何とか進級です。
そして3年生。そろそろ就職も考えなければいけません。ここも全てギリギリで通過します。
4年生、もう殆ど学校には行かなくていい頃ですが、私はまだ単位が足りません。
みんなが就職活動をしている最中、私一人でせこせこと単位を取りに学校に行きます。
卒業間近で何とか規定単位を取り終え、晴れて大学卒業と相成ります。
当然単位を取るのに精一杯だった為、何にも就職活動なんてしていません。
1年をアルバイトだけで過ごすという苦行を自らに押し当てます。当然と言えば当然ですが。
そして1年後の就職シーズン、皆に遅れを取りながらも何とかそこら辺の企業に滑り込みます。
私みたいなバカを取る企業があるのか、と言いたいところですが、あったと仮定しましょう。
まぁ所詮私のような人材を採用するような企業です。ランク的に下の中と言ったところでしょうか。
早速入社式です。他の人が一つ下の年齢で就職したにも関わらず、私一人年上。
浮いています。どう見ても浮いています。入社早々私のポジションが決まってしまいました。馴染めません。
しかし馴染めないという事をバネに、私は仕事にバリバリと打ち込みます。仕事の鬼と化します。
その仕事ぶりが藤枝部長(42歳・既婚)の目に止まり、私は課長に出世します。
課長のまま2年を過ごしていたある日に、藤枝部長がある話を持ちかけてきます。
藤「あー、紅くん、君にいい見合いの話が来てるんだがね」
私「へぇ。って、俺まだ25なんですけど」
藤「まぁそう言わずに。出会いも無いんだろ?」
私「いや、まぁそうなんですけどね」
藤「これ逃すと結婚出来ないかもよ?一生出来ないかもよ?」
私「ホアァァ!アタッ!アタッ!アッタァアァ!」
クビです。藤枝部長をブッ倒してしまいました。ブッ倒した挙句藤枝部長のヅラを取り外ししてしまいました。
申し開きは出来ません。このままじゃ悔しいので、藤枝のヅラを空高く放り投げてやりました。
さて、無職です。年齢も25と新規採用としてはなかなか厳しい年齢です。
そこで親父・泰男の登場です。親父のコネを駆使し、親父の勤務している会社に入社します。
「親父が働いている職場に息子来てんのかよ」と言う噂が社内を駆け巡り、社内の皆が私を見に来ます。
さながらそれは客寄せパンダのようであり、私は非常に不快なオフィスライフを送っていました。
パンダのように見に来る輩はいなくなったものの、まだ社員として認めて貰えていないような気がします。
そこで私は一念発起、新プロジェクトを立ち上げます。それは他に類を見ない未開拓の分野であり
私の創造意欲をフルに活用しても、成り立つかどうかは紙のように薄い確率でした。
それでも私は出来ると信じ、新プロジェクトの参加メンバーを募り続けました。
最初は「お前死ねよ」みたいな事を言われましたが、一人、また一人とメンバーは増えていきました。
半年後にはメンバーは24人にまで増え、プロジェクトは本格的に始動しました。
そのメンバーの中の一人、藍子(28歳・独身)と意気投合し、勢いだけでスピード結婚。
新婚初夜でヒット、一男を授かります。藍子は産休の為にプロジェクトを降ります。
藍子の為にも、まだ見ぬ子供の為にも、私は粉骨砕身の覚悟でプロジェクトを進めていきます。
ダメでした。橋本(24・未婚)の些細なミスでプロジェクトは完全に破綻しました。
ミスとは、取引先の藤枝社長(46・既婚)のヅラをフリスビーのように投げてしまうという本当に些細なミス。
私と橋本は責任を取り、プロジェクト資金の立替、損失の補填などを言い渡されました。
その夜、私は橋本と飲みに行きます。
橋「アレは投げたくなりますって」
私「何、どんなんなってたの?」
橋「毛が不自然だったんス、毛と地肌に隙間ありましたもん」
私「あー、それはしょうがねぇわ、でもな、フリスビーみたく投げるのは失礼だろ」
橋「じゃああん時、俺はどうすりゃよかったんスか」
私「フリスビーじゃなくて、ブーメランみたいに投げてれば多分上手くいってたと思うぞ」
橋「・・・盲点でした」
次の日から、私と橋本は汚名を返上すべく、身を削るように努力しました。
誰もが嫌がるような仕事を率先してやり、時には押し付け合い、ぶつかり合い、努力しました。
ある日、いつものように給湯室で橋本とウルトラマン(初代)ごっこをしていると
私の携帯が唐突に鳴りました。藍子でした。
藍「紅・・・生まれたよ」
私「そうか!よくやったぞ藍子!」
藍「すぐ病院に来て」
私「よし!ウルトラマンごっこ終わったらすぐ行くからな!」
何がマズかったのでしょう、病院に着いた時には藍子はもの凄く怒っていました。
藍子を宥めすかし、何とか仲直りして、今後について話し合いました。
藍「とりあえず名前だよね」
私「その点については、前々から考えていた事があるんだ」
藍「何?言ってみて」
私「二人の名前から一文字づつ取って、子供に授けるってのはどうだ?」
藍「じゃあ私からは藍だね」
私「俺からは紅だな」
藍&私「・・・藍紅?」
私「ダメだ!思春期の始まった中学生に名前でイジられる事請け合いだ!」
藍「それ以前に受理されないよ多分」
私「じゃあもう一郎とかでいいや」
藍「適当だね」
私「適当さ」
私たちの愛の結晶、一郎の誕生の瞬間です。
一郎が生まれてからと言うものの、私は今まで以上に仕事に打ち込みました。
3年後にはプロジェクトの損失補填も全て終え、気付いたらまた課長になっていました。
あのプロジェクト以来、橋本は私の良き右腕、藍子は仕事を辞め、私のサポート役となっています。
順風満帆、何事も順調に進んでいたある日の事です。私は田辺部長(43・未婚)に呼ばれました。
田「えーっとだね、紅くん、君、地方とか興味ない?」
私「左遷?ねぇ左遷?俺いらない?」
田「いや、いらないとかじゃなくてね、社の方針なんだ」
私「だったら部長が行けばいいじゃないですか」
田「だからね、君に直々の指令なんだよ」
私「やだ」
田「随分大きく出たね」
私「だって家庭あるし、部長家庭無いじゃん、部長行きなよ」
田「私に指令来てないし、無理じゃん。」
私「行けよー田辺ー」
田「立場分かってる?」
私「たーなーべ、たーなーべ、たーなーべ」
田「無茶な事言うなや」
私&橋本「たーなーべ、たーなーべ、たーなーべ」
田「増えてるし」
必死の抗議も届かず、私は北海道から熊本に飛ばされてしまいました。
慣れない熊本での勤務、橋本と家族が付いて来てくれたのが幸いです。
一郎も熊本の小学校にうまく馴染めたようでとりあえずは一安心です。
私の熊本での役職は部長。上がったのか下がったのかよく分かりませんがとりあえず頑張っています。
私が頑張っているのはいいのですが、何やら橋本が最近落ち込んでいるようです。
話を聞いてみると「付き合っていた人を向こうに置いてきてしまった。彼女が心配だ」との事でした。
橋「紅さん、俺淋しいっスよ」
私「電話とかメールとかしてみたらいいじゃん」
橋「いっつもしてるんですけど返事が無いんスよ」
私「お前にとってちょっとキツい事言っていいか?」
橋「何スか?」
私「それ多分他に男いる」
橋「あちゃー」
私「こっちでいい人探せ」
橋「藍子さん下さいよ」
私「転落と窒息どっちがいい?」
橋「すいませんした」
その後橋本は熊本のソープ嬢と結婚しました。病気にならないか心配です。
橋本も心機一転、やっと仕事に打ち込めるようで私も一安心です。
そして私と橋本は一度北海道で失敗した、あの忌まわしきプロジェクトにもう一度挑戦しました。
条件的に北海道より熊本の方が適している、という理由での挑戦でした。
メンバーも短期間で必要な人材が集まり、凍結していたプロジェクトはまた動き始めました。
今回は全てが順調に進んでいます。一番の幸運は、取引先にヅラの社長がいないという事でしょう。
プロジェクトも大詰めに差し掛かった所で、プロジェクトの屋台骨を揺るがす問題が発生しました。
一番若手の黒崎(21・未婚)が発注ミスをしてしまったのです。
鉄骨1000本のところを鉄骨100本と発注してしまった為、鉄骨が大幅に足りなくなってしまいました。
誰もがプロジェクトの破綻を考えていた時に、橋本が奇手を思いつきました。
橋「これで・・・いけませんかね?」
橋本が持ってきたのは、三省堂の国語辞典でした。
紅「・・・いける!黒崎!直ちに国語辞典1000冊発注だ!」
鉄骨の代わりに国語辞典を組む。誰もが考えなかった奇手が、プロジェクトを再始動させました。
3年後、プロジェクトにおける全工程が完了しました。
熊本駅前に聳える巨大なビル、これが私たちのプロジェクトの集大成です。
「これでもかと言わんばかりに国語辞典が剥き出しになっているビル」として、世間の注目を集め
社の収益は大幅アップ。東証一部上場を果たします。
この頃には私は専務、橋本は部長として、社には欠かせない人物とまで成り上がっています。
家庭の方では、藍子が次男を出産、一郎はその辺の適当な高校に進学しています。
まさに人生の最盛期、私に関わる全ての事が順調に進んでいたある日の事です。
橋本が急に倒れたという連絡が私の携帯に入りました。
急いで病院に向かったけれど、橋本は既に虫の息でした。私の顔を見た橋本は
「・・・紅さん、死ぬ前にプロジェクト成功出来て良かったです・・・」
こんな事を言い残し、橋本はこの世を去りました。死因は脳溢血でした。
橋本という有能な右腕を無くし、私はすっかりやる気をなくしてしまいました。
仕事は次々と増えるにも関わらず、全くと言っていいほど消化されていません。
抜け殻のような日々を過ごしていましたが、毎日ある場所へ行くのは欠かしませんでした。
橋本の奇手で生まれたビル、そう、あの国語辞典ビルです。
建てられてから5年余りが過ぎているのも関わらず、まだまだその強固さは失っていません。
そんなビルを仕事終わりに眺めに行くのが、気付いたら私の日課になっていました。
橋本との思い出を探しに、このビルへ赴いていたんです。
もう、このビルを建てた橋本はこの世にいないと言うのに。
いつものように、ビルを眺めに来ていたある日の事です。見知った顔が私の前に現れました。
橋本の嫁、貴美子でした。貴美子は懐から封筒を取り出し、私に手渡しました。
貴「あの人が死んだら、紅さんに渡してくれ、って頼まれたんです」
私はその場で封筒を開けて中を読んでみました。
「紅さんへ
死んじゃいました。もう思いっきり、完膚無きまでに死んじゃいました。
紅さんがこれを読んでいるという事は、もう俺の火葬は済んでいるでしょう。
ただ言っておきたい事が一つだけあったので、この手紙を残します。
俺がいないからって仕事が疎かになったりしてませんか?
もし疎かになっているのなら、きちんと仕事はこなしてください。
俺と組んでいたあの頃の紅さんに戻ってください。ここまで言えば分かりますよね?
俺はもういませんが、まだまだ社には有能な人材がいます。
その人材を掘り出すのも、仕事の一環ですよ。
それではこの辺で。向こうでまた一杯やりましょう。」
唐突に涙が溢れてきました。橋本は自分の死を予感していたんだと確信しました。
その徐々に近づく死の予感をも乗り越え、立派にプロジェクトを成功させた橋本。
一通り泣いた後、私は橋本を亡くしてから今までの自分を恥じました。
橋本が死の間際まで自分のサポートをしていたと言うのに、私は何をやっていたんだと。
翌日から私は鬱積した思いを全て跳ね除け、再び仕事に打ち込みました。
家庭も一郎がその辺の適当な企業に就職、次男の八郎も中学校に入学しました。
再び仕事に打ち込み始めた私が社長の目に止まり、私は社長室に呼ばれました。
社「私もいい歳だ、そろそろ引退したいと思ってね」
紅「はぁ」
社「そこでだ、君を熊本社の社長として後を任せたい」
紅「私がですか?」
社「他に誰がいると言うんだね」
紅「順当に行けば私よりも年上の川勝(62・未婚)副社長がいるのですが・・・」
社「紅君、この社に年功序列は無いんだよ」
紅「・・・はぁ」
社「どうだ、やってみる気は無いか?」
紅「・・・分かりました」
色々な紆余曲折を経て、私はとうとう熊本社の社長にまで上り詰めました。
正直社長としての手腕に自信はありませんでしたが、橋本の分まで頑張ってみようと思ったのです。
社長に就任してから1ヶ月、社内にある噂が流れました。
「営業部が立ち上げたプロジェクトが、まるまる他の企業に盗まれている
企業スパイが社内に潜伏している可能性が非常に高い」という噂でした。
その半月後、社内で営業部の宇田が怪しい動きをしていたと言う事で、私は宇田を呼び出しました。
紅「ぶっちゃけて聞くよ」
宇「はい」
紅「お前企業スパイ?」
宇「はい」
紅「クビ」
宇「はい」
あっさりでした。宇田をクビにした途端、企業スパイの噂がぱったり途絶えました。
それから半年、営業部の「ジャストワナクライ計画」が見事成功しました。
その計画の成功を機に、私は社長の座を他に譲りました。
理由は簡単です。前々から体に異変を感じていたのです。
呼吸が何やら苦しい、咳や痰が激しい、極まれば一日中動けない事もしばしば。
病院でその症状を医者に言うと、医者は暗い表情で「肺がん」の宣告をしました。余命は半年。
私が肺がんに冒されていると言う事は、藍子にだけ伝えました。
そして余命の半年は、とにかくのんびり暮らそうと決意し、私は社を退きました。
一日一日、確実に迫り来る死に恐怖し、よく眠れない日々が続きました。
その度に藍子が私を落ち着かせてくれました。
「人はいずれ死という瞬間が訪れる。その瞬間が早いか遅いかだけの違いなんだよ」
ある日藍子が私に掛けたこの言葉が、私に死の覚悟をさせてくれました。
半年もしない内に、私は入院する事になりました。この頃にはもう死は眼前まで近づいてきていました。
もう死は怖くない。来るなら来やがれ。
この言葉が通じたのか、私は入院の翌日に息を引き取りました。
苦しみも無く、あっさりと逝けました。今までの人生に後悔はありません。
藍子、今までありがとう。息子達をよろしくな。
橋本、今行くぞ。いい酒用意しとかねぇと承知しねぇからな。
こうして私の人生は、静かに幕を閉じました。
長くなりましたが、これで終わりです。
お前如きがそんな人生歩めると思ってんじゃねぇって?そうですね、あくまで理想ですから。
こんな風に生きれたら後悔は無いだろうなぁ、って言う理想の人生ですからね。
あ、もうお帰りですか?毎度ありがとうございます。いえいえ、今日はお代はいりませんよ。
私の長話に付き合って下さいありがとうございました。よろしければまたどうぞ。
色んな話を用意して、またのご来店をお待ちしております。