町をでてすぐの大木の下で、そいつに遭遇した。
たった今買ったばかりのソードをさっと掲げる。おれの手にしっくりと馴染む。
(これは長く使えそうだ)
目の前の敵を、じっくりとみる。
カタカタと鳴る白骨に、ぼろぼろの布――いや、よく見れば冒険者が好んで着る衣服が、まとわりついている。
バサバサと布を靡かせながら、その骸骨のモンスターが突進してくる。 奴は、冒険者の血肉を喰らうのが目的だ。生きている人間の血を啜り肉を食べると、再び人間として復活できると信じている。
それは、正しい。しかし、そう甘いものではない。復活した後も、飢えと渇きはひっきりなしに続くのだ。
しかも甘い香りを放ち、旨そうな人間の誘惑は抗いがたいものがある。
結果、理性を失い、欲望に任せて人間を次々と襲い、殺人鬼と成り果て、冒険者や軍隊に狩られるのがオチだ。
「悪いな、灰になれ」
細身のソードを一閃させ、耳障りな音をたてる骸骨を一刀両断する。
「ここはおれの餌場だ。お前に喰わせるわけにゃ、いかねぇんだ」
人間たちに、己の正体がバレないよう暮らすには、かなりな苦労を必要とする。
町から町へ移動し、密かに人を喰らい人型を保ち、理性も保つ。
――そう、おれがこんな化け物に成り下がってまでおれが生きていたいのは、最愛の……
「ぐあっ?」
背から腹へ衝撃が駆け抜けた。
見れば、銀の刃が腹から突き出ている。その刃には見覚えがある。さっき、留守を守る彼女に渡したばかりの……。
「ど……して……」
「ごめんね、あたしも亡者なの。あなたがあんまり美味しそうだから……」
彼女の牙がおれの首筋に突き立ち、背中に突き刺さる鋭い爪を感じたのを最後に、おれはまた、骨と意識だけの存在へと成り下がった。
【終】
ケータイサイトの『掌編置き場』に掲載していたものの、加筆修正版です。