【事情説明】

iらんどで公開していた『掌編置き場』、これはもともと、ネタ帳でした。
今、応募しようとしている作品は、ここの掌編をベースにして世界を作りました。
なので、応募規定にしたがって「サイトから下げる」必要がでてきました。
その該当するページだけ非公開にできれば良かったのですが、iらんどではページ単位での公開・非公開の選択は出来ないようなので、作品そのものを非公開にしました。
それでも、40話を超す掌編のうちの8割に罪はない(!?)わけで……。
読者様支持率の高かったものをいくつか、こちらにUPします。

どれもこれも、1000文字に満たない上、ひどく拙い物語たちです。が、修正はしません。
修正したくて指はうずうずしますが、当時のわたしが書いた、そのままにしておきます。
恥さらしとも言いますね……。
しかも、タイトルすらつけてもらえなかった可愛そうな作品たちでもあります。
が、よろしくお願いします。


【和風ホラー】

 澄んだ空気を切り裂いて、トーン、トーン、と鞠をつく音が通りをはしる。
 闇一色に塗り込められた都路にゆらりと女童(めのわらわ)が浮かび上がった。
 漆黒の髪は豊かに艶やかで、闇の中浮かび上がる童の纏う緋色の衣から出た白い手が鞠をつく。
「……姉三六角蛸錦……」

 口ずさむは手鞠歌。
「……四綾仏高松万五条……」
 そこまで歌ったところで、鞠が大きく跳ねた。
 コロコロと転がった鞠が、ぴたりと止まったその先には、若い男が立っていた。
 恐らく宿直でもしていたのだろうその姿。
 しかしふらふらと定まらぬ腰に焦点のあわぬ虚ろな目。
「今日の贄は五条からというきまりよ……あなたは、五条の住人ね?」
 童の囁くような問いかけに、男はこっくりと頷いた。
 鞠を拾い上げた童は、男のそばにふわりと寄り添い。
 筋張った首筋に爪を立てた。

 流れる血をぺろりと舐め、味を確かめるように、赤い舌がちろちろと動いた。
 次に童が口を開いたそこには、鋭い牙がのぞく。
 じゅるり、じゅるりと、と生暖かい液体を啜る音が響いた。

 「明日は、雪駄ちゃらちゃら魚棚……」
 くすくす、と笑った童は掻き消え、後には干からびた男の身体だけが残っていた。

【終】